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第五話:死の運び手

ノースポイント 9月15日 入間基地地下防空指揮所 16:00
「「「「自衛軍を退官するぅ!?」」」」」
その驚愕の言葉の原因は刹那が突然今日を持って辞任すると言い出した事からだった。
「すでに本省には辞職願いを出した。文句あるか?」
何の顔色も変えずに刹那はそれに答える。
「ンな無茶苦茶な・・・有事なんですよ!?」
「そうですよ!!今更・・・」

オペレータの一人が詰め寄ってくるが、何の顔色も表情も変えずに反論した。
「今更だから、有事だからこそ自由になるんだ。私には単身で戦場に行く方が慣れているし、何よりもISAF軍の最高司令官が頭を下げに来たんだ。此処で断る訳にはいかんだろう」
事情を簡単に説明する。それでも他のものは食い下がる。それらに刹那は一喝した
「さっさと持ち場に戻れ!国民を守る仕事を放棄する気か!!」
その一喝によってすごすごと戻る他は無かった。
「良し、それでこそ自衛官だ。すでに私は後任は決めてある。これまで通りの仕事をする事、これが私の最後の命令だ。河崎 亮子三佐と佐藤 涼ニ佐そして桂木 龍也三佐は19:00に私の部屋へ」
そこまで言うとくるりと踵を返して地上に通じるエレベーターに乗った。向かう先は第8ハンガー。愛機が保管されている場所。
「・・・・・やっとだ・・・やっと・・・戦場に立てる。お前が・・・・・・死を呼ぶ戦闘妖精とさげすまされていたお前が・・・・他人の役に立つ時が来たんだ」
整備員が刹那に気付いた。直ぐに整備員が駆け寄ると刹那は一つだけのオーダーを出した。
「こいつを20:00までに動かせるように・・・・頼むぞ」

エルジア サンサルバシオン 21:00
「・・・・・」
エーリッヒは夜空を見ながら何かの思いを募らせていた。
「隊長~?隊長~!」
イエロー4がそんな隊長・・・・イエロー13に声を掛けた。
「ああ、何だ?」
この場合・・・・ボーッとしていたといった方が正解だろう。
「何を思い浮かべているんですか?その様子じゃ、部隊編成とかを考えているのではないみたいですねえ」
図星を突かれたが大して気にしなかった。
「まあな。ちょっと幼馴染の事を思い浮かべてた・・・・」
そこまで言うとドサッと草原に転がった。
「幼馴染って・・・前に会った彼ですか?」
4はその隣に腰掛けながら聞いてみた。
「ああ・・・あいつは一番敵には回したくない・・・なんせ、私が最高のコンディションでもやられかねんし、何より敵の考えている事を百発百中させるからな。それにあの瞳の中には奈落が広がっている様で恐ろしいんだ」
エーリッヒは刹那(ラインハルト)の事をよく知っている。喩え相手が降伏の意思を見せても、参りましたと言わない限りいたぶる残虐な性格、相手の心理を利用し計算され尽くした行動、弱い者には手を差し伸べるが強い者にはこの上なく容赦無く攻撃すると言う信条、孤児になった後もどんな手段を使っても生き続ける執念、無駄な事は避け、障害があれば正面から徹底的に叩き潰す恐ろしさ、兵士として指揮官として最高の人物だが、人間としては最低の部類に入る。恐らく彼に世界を握らせたらシーザーやアドルフ・ヒトラーも驚きの事を何の表情を変えずにやってのけるだろう。
「あいつは・・・・人間としての心は悪魔に売っているんだろう。そんなのを敵に回しておいて、ただで済むとは思えん。今にエルジアは大打撃を喰らうさ」
エーリッヒは体を小さく身震いさせながら言った。
「・・・・・あ、隊長。前線からの報告を持ってきたんですが・・・」
4はエーリッヒに書類を渡した。エーリッヒはそれを読みながら、生きた心地がしなかった。
「レーションに・・・・コレラ菌・・だと!?明らかに人為的だ・・・・一体誰が・・・死者が25人!?」
そんな内容を読んでいたら刹那の嘲笑する顔が浮かんだ。ISAFにそんなのを出来る度胸を持った人間は居ないし、現地のコレラ菌は全滅していた筈だからからである。
「まさか・・・・あの男・・・ここまでやるか・・・・」

ノースポイント 入間基地地下防空指揮所 20:00
「さて、全員揃ったようだな」
防衛省からも防衛大臣や事務次官らが集まっている。大臣の隣に刹那は立っている。
「今、この有事とも言える状況で我が自衛軍の顔とも言え、自衛軍の練度を名実共に世界一にまでしてくれた刹那一佐が退官するのは非常に惜しい。だが、ISAF軍司令長官の直々の願い事を何の理由も無しに断る訳にもいかんし、向こうに恩を売っておく事も重要だ。」
刹那はその防衛大臣の言葉を内心嘲っていた。
(俗物が・・・・結局自身の保身を確保したいだけだろうに・・・)
刹那とこの防衛大臣とはかなり仲が悪い。現場の悲痛な声を聞いた振りをする上層部と下層部の隊員との中間管理職役で現場上がりの刹那にとって現場と上層部の立場を立たせる必要があったが、結局現場優先になり上層部とは仲が悪かった。
「そこでここに居る刹那一佐の強い推薦で一佐の仕事を三分割する事になった」
そんな事を知らない大臣は構わず続けた。
「河崎 亮子三佐、貴官には当基地基地司令を任命する」
「ハッ・・・光栄であります」
「桂木 龍也三佐、貴官には第零中隊、中隊長を命じる」
「は・・・有り難う御座います」
「佐藤 涼ニ佐、貴官にはJSOG総指揮官を命じる。以上!!」
「ハッ!!」
この三人は刹那が最も信頼を置く三人。亮子三佐は刹那を最も良く知る人間。桂木三佐は第零中隊で刹那の次に能力が高かった人間。佐藤ニ佐は海外での最も多くのPKO活動を経験しており他にも、JSOG[WAIR]の偵察分隊R・1の隊長で、実戦経験豊富な指揮官である。三人とも刹那の良き理解者で良くサポートしながらも、自らの職を疎かにせずにやっているという事で選び出した精鋭中の精鋭だ。
「では諸君の健闘を祈る!以上解散!!」
大臣の言葉で全員が刹那に敬礼したのち、退出した。
「・・・・良し、行くぞ」
全員が出た後に一人目立たない場所である非常階段から地上に向け一気に駆け上がった。実質上有事なので隊員に刹那を出迎える余裕はもうなくなっていた
「・・・・許可は既に貰ってるから大丈夫だろうが・・・・邪魔をしてきたら・・・・」
そこまで考えて、考えるのをやめた。
「・・・・私は・・・相棒と一緒で、戦う為に生まれたんだ・・・・邪魔をするなら片付けるまでだ」
地上にたどり着いて息が上がった体を第8ハンガーに向ける。
「あ、刹那一佐。準備の方は終わりました。今すぐ飛びたてます!」
整備員が明かりを持って誘導してくれた。
「一佐はもう止めろ。私はただの傭兵になったんだ」
整備員の口がポカンと開いている。その内その意味が分かったらしく、何も言わずに誘導し始めた。コックピット内には既にパイロットスーツと耐Gスーツそして航空機用ヘルメットが準備されていた。
「では・・・刹那さん。御達者で・・・」
整備員が無線を顔に付ける。肘をコックピットの両脇に乗せて両手を挙げ、装備を確認する。それと同時にエンジンが始動する。合図と共にエンジン出力を上げながら計器をチェックする。
「発動機出力系・・・速度計・・・水平計・・・G計・・・油圧系・・・射出座席・・・燃料チェック・・・武器管制・・・GPS・・・ALL Grean・・・ローレライ起動・・・良し・・・エースブレイカー01起動・・・良し・・・キャノピー閉め」
独り言の様に全てをチェックする。キャノピーが閉まるのと同時に整備員に敬礼を送る。整備員は直ぐに敬礼を返してきた。
「最古参の新兵・・・か」
内心自嘲しながらもタキシングを始める。自身もそんじょそこらの傭兵や軍人よりも実戦を経験している。自衛軍の任務で敵に包囲されながらも補給が届かない状況で最後の最後まで踏ん張ったり、同じ任務に就いていた傭兵・軍人を全員犠牲にしても同じ自衛官のみで帰還したりと色々と10年間の間にあり過ぎたのだ。でも自分は傭兵として初めて新兵となる。それを自嘲したのだ。酸素マスクを顔に引っ付けて離陸準備に入る。
≪Brack-Death-Size Cleared for TAKE OFF≫
≪This is Brack-Death-Size.Cleared for TAKE OFF Roger≫
管制塔から離陸許可を貰い、機体をA/Bで加速させる。
≪・・・V1・・VR・・V2!!≫
純白に染められた機体の余りにも急な加速に舌を噛みそうになるがどうにかそれは避けた。急速左上昇旋回させてもまったく速度は落ちない。
(何つー加速だ・・・と言うより・・このままだと宇宙まで行けそうな気もする。)
そんな苦笑をしながらも機を南東、新たな任地であるISAF海軍第一艦隊に向けた。

fin
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コメント

No title
拝見して思ったのですが…
レーションにはコレラ菌を入れるより、シュールストレミング(世界最強の臭い缶詰)を入れたほうが愛嬌があるような気がするのは私だけでしょうか(^^;

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