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プロローグ:大晦日のスクランブル

1994年・12月31日ノースポイント北部・オクジリ基地 21:38
「はあ・・・」
大きな溜め息を付いたのは、この物語の主人公コバヤシ・セツナである。突然すぐ近くで良く通る大声が待機室に木魂した。
「よう新人!今年はめでてえなぁ!きっと新年もいい年だろうよ!毎年この俺が大晦日に五分待機だってのに、初めてのスクランブル配備がこんな美しい隊長サマと一緒に、しかも大晦日だとはな!」
この基地の最古参パイロットヴァルハラ2ミドリカワ アキラ二尉が大声で笑いながら売店で買った一人当たり一笊の年越し蕎麦を汁につけながら言ってきた。むろん自分の手には何も無い。
「・・・最悪の年になりそうですね・・・新人君・・・」
わざわざ「君」づけで溜め息交じりにセツナに話し掛けたのは、セツナと10歳離れた、この基地で階級はヴァルハラ2より一つ上で実質上は基地指令の次に偉い女性――ヴァルハラ1ハヤシ リョウコ一尉が厭きれたような声を出した。
「ええ・・・何であんなクジ当てたんだか・・・」
セツナは隊長に同意する意見を出す。
この基地でのスクランブル配備の順番はペアでクジで当たった順番で決まる。今回の五分待機はヴァルハラ1と4は一番、次に二十五分待機が2・3、その次は通常常務が他の隊という感じだ。

同日ノースポイント北部ミシマレーダーサイト 23:00
「!!」
「どうした!?」
レーダサイトのレーダー員が何か捉えた様だ。
「アンノウン確認!当レーダーサイトからの方位0-9-0!目標進路2-7-0!高度20000フィート!速度450ノーチカルマイル!機数3!現在位置、防空識別圏から80マイル!領空侵犯の可能性有り!!」
すぐに総合DC(防空指揮所)につながるホットラインの受話器をとると一報を入れる。
ノースポイント総合DC(ノースポイントは国土が小さいので各地に複数のDCを置かずに一つに統合している) 23:05
一報を受けたDCはすぐに「さらに接近するようなら報告しろ」と言ってオクジリ基地にB/Cを発令させる。

同日オクジリ基地 23:10
「あ、B/Cランプが点灯してます。」
セツナが一番最初に異変に気がつく。
「バトルステーション発令(*戦闘待機。ここではスクランブルの可能性があるしめしアラート警戒待機員はスクランブル機のチェックをし、アラート待機搭乗員は乗機に乗れという事を示す)・・・何事かしら・・・」
隊長が不穏な声を上げる。これを受けて整備員たちが機体の調子を見はじめる。
「搭乗します」

総合DC 23:14
「ミシマレーダーサイトより報告。”此方から発した警告受理せず、アンノウンさらに接近”との事」
部下から報告を受けた担当者はすぐに命じた
「オクジマにスクランブル発令!対応させろ!」
「Aye Sir!」

オクジマ基地 23:15
ジリリリリリリ!!!
「スクランブル発令!エンジン回して!」
「スクランブル!エンジンを回してください!」
五分待機の1とセツナが整備員に叫ぶ。スクランブルのベルが鳴ってから15秒で機体に乗り込む。すぐに装備の再点検がなされ、1分半後にスクランブルハンガーから二機のF-4E改シータ型が出てきた。シータ型は複座のF-4Eを単座にし軽量化、尚且つエンジンの改良による航続距離の増加、二次元ノズルの追加、空力設計を再設計した、近代、寿命延長バージョンである。
民間機がいなくなった滑走路にタキシングしラストチャンスと呼ばれる最終確認を終えた後、管制塔から指示が下った。
<<ヴァルハラ1・4 クリアード・フォー・テイクオフ 離陸後は方位0-9-0高度20000で迎撃体制をとってください。>>
<<ディスイズ ヴァルハラ1 ラジャー・・・聞こえた!?セツナ三尉!>>
「はい」
返答と同時にギアブレーキを解除しスロットルを上げて機体を動かす。最初はゆっくりとだが段々早く加速していく。
<<「・・V1・・・VR・・・V2!テイクオフ!」>>
フワッと二機同時に機体が浮き離陸する。
(訓練とは違う感じ・・・これが実戦の空気なのか・・・)
そう思いつつもギアをしまい、操縦桿を僅かに右手前に引く。方位計の数字000から090に向かってが動き出し機体が上昇を始める。と同時にミシマレーダーサイトから無線が入った。
<<こちらヨモツヒラサカ、ヴァルハラ1・4へこれより誘導を開始する。>>
<<ヴァルハラ1了解>>
「ヴァルハラ4了解」
返答の後レーダーサイトから目標のデータが転送されてきた。
<<目標、進行方位2-7-0、速度450ノーチカルマイル、高度20000にて接近中、現在位置、防空識別圏まで3マイル、此方の警告を無視しています、接敵まで15分>>
「速い・・・」
<<思ったより速いですね>>
同じ感想をしゃべる。とはいえ、防空識別圏ギリギリで引き返すかもしれない。
(この方位ならユークトバニア軍か・・・リコンだろう)
そう思って半ば断定していた。

ノースポイント北東沖 23:20
<<こちらファング1、オーカニエーバヘ、間もなくノースポイントの防空識別圏に入ります>>
<<こちらオーカニエーバ、了解した、2分ほど前に向こうのスクランブル機を確認した、注意して作戦を続行せよ>>
<<ファング1了解>>
<<ファング2了解>>
<<ファング3了解>>
一通り報告を終えるとすぐに無線を切る。こちらのコールサインをあちらにさとられないようにする為だ
「はあ・・・・」
三機のF-14Dの隊長機の前席に座るファング1ことカザロフ・ロッソ大尉は溜め息をついた。
<<どうしたんですか?隊長殿?>>
その後席のさっきまでAWACSに報告をしていたイリーナ・ブロンコ中尉が前席の溜め息に気が付き声を掛けてみた。
「だって間もなく新年だってのに何でこんなところで新年を迎えなきゃいけないんだぁ!!」
<<命令だから仕方ないでしょうが!それにそれは向こうも同じでしょ!!>>
文句を言ってもこいつには通用しないのかあと諦めた時だった。
<<ガ――ッピこちらオーカニエーバ、スクランブル機が増速!接敵時間修正23:25!機数は2機>>
<<了解>>
AWACSが送ってきたのは接敵が早くなったことと目標の数であった。
<<ファング1より2・3へ、作戦を開始します>>
<<ファング2ウィルコ>>
<<ファング3ウィルコ>>
返答を確認すると増槽を落とし戦闘態勢に入った。
「ファング1エンゲージ!」

ノースポイント北東沖 23:25
三機の可変翼機は視認すると上左右にブレイクした
「!! 散らばった!」
<<どうやらやる気みたいねヴァルハラ1エンゲージ!>>
「ヴァルハラ4エンゲージ」
<<こちらヨモツヒラサカ、交戦は許可してないぞ!>>
<<安心して、撃ったりはしないから ブレイク!!>>
宣言と同時に二機は急速に離れ、セツナは右にブレイクした機を狙ったが、後ろに敵の二番機が喰いついて来る。
<<ッガ――オー・・エー・・りファング隊へスクラン・・・ブレ・・た>>
向こうのAWACSの声が混線してくる。丁度前の敵機にレーダーロックを掛けた瞬間に後ろからレーダーロックを受けた
「頂き!と言いたいとこだけど後ろの蝿も五月蝿いな」
少し考え、スロットルをマックスにして左にハイGマックスターン。G計が一気に7.5Gを数えた
「っぐう・・・フッ!クッ!フッ!クッ!」
いつもの呼吸法を使いブラックアウトを防ぎながら操縦桿を引き続けた。速度が500ノットになったらアフターバーナーカットし後ろを見る。そこには二機のF-14と思われるシルエットがあった。
(よし、ちゃんと付いてきてるみたいだな)
スパイラルパワーダイブで一気に降下を始める。迎え角0度、最も航空機に安定した速度でアフターバーナーONのスパイラルダイブは最適最速の降下である。高度計が狂ったように回転し数字が動き、高度15000を切ったあたりで操縦桿を引く
(高度零飛行で勝負!!)
この時の速度は750ノーチカルマイル、完全にマッハを超えていた。海面ギリギリで持ち直す。
敵機も追いかけては来たが二機のうち一機は諦めて上昇に転じようとしたがもう一機は追ってきた。だが、そこに罠が在った。

ノースポイント北東沖 23:35
ガガアン!!
<<ウワアァァァァ!!>>
ファング1はもう一機のスクランブル機との戦いに集中していたファング3の悲鳴を聞いて何事かと思った。
「ファング3!どうした!!」
まさか・・・と思いその方向に目をやる。だが火は見えない。
<<み、右エンジンに海水が入りました!右エンジン停止!戦闘続行不能!帰還します!!>>
ホッとしたのと愕然した両方が入り混じった感情が出てきた。だがすぐに今まさにロックオンしようとした自分の相手であるスクランブル機の一番機がシザースで、ケツを取ろうとしてくる。だがカザロフ・ロッソ大尉は三番機が相手にやられた事実を認め、これ以上やり合うのは危険と判断し撤退を宣言した
「クソ!退くぞ!」
<<こちらファング2、コピー>>

ノースポイント北東沖 23:54
<<アンノウン防空識別圏から離脱、こちらヨモツヒラサカ、ヴァルハラ1・4二機とも無事か?>>
<<ええ何とか>>
「こちらもです、アンノウンはどうやらユーク軍のようですね」
<<こちらヨモツヒラサカ了解>>
報告を終えると一気に力が抜けた。と同時にアンノウンを戦闘不能にした誇らしい気持ちが出てきた。隊長との個別無線に切り替えてこう言った
「ふう、撃破数1、ですよ隊長」
<<えっ?、もしかして撃ったの!?>>
隊長の質問にセツナは即答した
「違いますよ!アンノウン機をマニューバーキルしただけです」
<<ええっ!?ど、どうやって!?>>
説明するとさらに疲れそうだったので冗談でこう言った。
「知りたければ、一晩ほど私の部屋で一緒に寝てください」
普通なら却下されるに決まってる。が、予想外の反応が返ってきた。
<<し、しょうがないわね・・・分かったわ、お願いだから教えて!>>
セツナが驚いたのは言うまでも無い。
<<ち、ちゃんと教えてよねっ!>>
「わ、分かりました・・・で、でも何故?」
<<な、何故って、部下に、しかも新人である貴方に負けたくないからに決まってるでしょ!!>>
その剣幕に押されたのかこう考えていた
(今から「今のは冗談」なんて言えないよお・・・)

ノースポイント北部・オクジリ基地 0:15
「おかえりー!そして新年おめでとう!って、ん?」
帰ってきた愛機から降りた二人の様子がおかしいののに気が付いたのはアキラ二尉だった。なんかお互いの視線をそらしている。本来ならデブリーフィングで話し合わないければならないのに一言たりとも喋らない。それどころかリョウコ一尉は顔を赤らめて、セツナ三尉は恐々とした感じである。恐る恐る聞いてみた
「隊長~何かあったんですか~」
そうアキラ二尉が聞くと二人は話を始めた
「本当に新年って辛いね・・セツナ君」
「ええ、本当にそう思いますね・・・リョウコ一尉」
そのまま二人とも隊宿舎に向かっていった。アキラ二尉はなんだかポツーンと取り残された感じになった。
「こりゃ二人の間に何かあったな・・・まあいいや、奴等の分の餅と蕎麦を食ってやるか!」
と意気ようように売店へと向かった

fin
十人十色ならぬ三人三色
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コメント

大晦日のスクランブルですか、任務とはいえ辛いものがありますなぁ・・・
って、家の子が出てるじゃありませんか!?ありがとうございますm(_ _)m
スクランブルに至るまでの描写が細かくて、大変勉強になりました。

領空侵犯をしてきたユークの真意、そしてヴァルハラ1,4の関係はいかに・・・
これからの展開が楽しみです。頑張ってください。
イッチ番のり~!
寝惚け眼をこすってPCをいじっていたら、なんと更新されているではないですか!
さっそく拝見しました。

新年であろうが、スクランブル配備とは。仕方がないんでしょうが、年越し蕎麦を食べるアキラ二尉とセツナの対比が何とも・・・頑張れ、セツナ。
空戦の描写ですけど、速度など具体的な数字が出ている分、想像するのが簡単でした。こういう描写もありですねぇ。しかし、一発の銃弾も使わずに撃墜判定をプレゼントし、隊長まで落とそうとするとは。・・・やべ、笑いが止まんないですw

新年早々領空侵犯を犯したユーク。その目的やいかに。そしていきなりアタックを仕掛けた二人の展開はどうなるのかw次回も楽しみにしています。

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