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第四十二話:SANDSTORM 砂漠に吹く熱風 03

中央抵抗線上空 12:03
≪レイピア3、ケツに二機!急降下で振り切れ!≫
≪!クソッ!ステルスかよ!誰か援護してくれ!≫
≪任せろ。もう少し・・・捉えた!FOX2!≫
グエンのシュペルラファールからMICA IRがレイピア3のF-15ACTIVEを追っていたF-22の排気口から発する一定の波長の赤外線を捉えて、追尾を開始する。F-22二機とも左右に急速ブレイク、フレアを放つものの、フレアをターゲットと探知しない対妨害対策能力を持つMICA IRからは逃れられない。
≪此方ブラック2!ダメだ!脱出する!≫
≪メーデー!メーデー!メーデー!ブラック1、イジェクティン!!≫
敵機のパイロットがベイルアウトするのを確認するとグエンは静かに宣言した。
≪スプラッシュ2、レイピア3生きているか?≫
≪助かった。礼を言うよ≫
≪ダルモエード3、此方レイピア1。シルカが狙っている。注意しろ≫
≪大丈夫で御座いますです。喰らえ!≫
ヴォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!ドドドドドドドッ!!!!!
ダルモエード3率いるA-10の4機編隊が敵に息をつかせる間も無く、30mmアヴェンジャーガトリングの劣化ウラン弾を戦車部隊を横から突く様に一列で攻撃していく。劣化ウラン弾を受けた戦車はエネルギーを受けて数発で燃え上がり、戦闘不能に陥る。
≪タンゴ2-5、今日の上空の友軍機は何所のどいつだ?支援攻撃に感謝!ウェルズ!ジャベリンであの戦車を破壊しろ!≫
≪メビウス1たち空軍が制空権確保!前進して対空火器を狙え!空軍を護るんだ!≫
地上部隊も戦車部隊の損害が目立つが、かなり善戦している。彼等の活躍で自走対空砲の過半数が撃破されている。ようやく制空権を完全に奪う事に成功し、中央抵抗線は最後の仕上げに入った。
≪タンゴ、ブラボー全隊!突撃開始!この砂漠からエルジア共を追い出せ!≫
≪タンゴ1、Roger!タンゴ全部隊!ファイナル・ラッシュ(全軍突撃)!!!!GO!GO!!GO!!!GO!!!!≫
≪ブラボー全車、全歩兵部隊!チャーーーーーーーージ(突撃開始)!!!!!!!怯むな!進めぇ!!!≫
≪スカイアイより全機、中央抵抗線崩壊も時間の問題だ。レイピア1~4・5~9のCAPとダルモエード3のCASを除き全機SAF前線基地で補給・再発進し、他の戦線の支援に向かえ≫
スカイアイはジョイントスターズ機の報告を確認し、中央抵抗線周辺の戦闘機全機に指令を飛ばす。
≪レイピア・リーダー了解、5以降は補給して5~9は此方と交代し、残りは右翼航空支援へ。2~4は我に続け≫
≪メビウス1、了解。では私は換装後、ヘリ部隊の敵HQ攻略支援に向かいます≫
≪ダルモエード3、了解。攻撃続行しますです。≫
≪ツームストーン、了解。負ける喧嘩ではなくなったな。補給後航空優勢未確保の左翼支援しに行く!≫

左翼エルジア軍防御陣地 12:05
「空軍は何やってんだ!オスカー12が敵機にやられたぞ!」
「落ち着け!戦線は確実に前進している。友軍の中央抵抗線突破も時間の問題だ。直ぐに増援部隊が到着する!」
敵陣地内に侵入できた部隊は増えてきていて、各所で第一前線陣地突破した部隊も多い。後は重砲火器のある第二陣地の攻略だが、此処で制空権が取れておらず航空支援が途絶えていて機甲部隊の出血を余儀なくされている。すでにSAFの一部航空隊の増援もやって来ているが、制空権確保は見通しが立っていない。
≪嘘でも良い!メビウス1が来ていると言って置け!≫
≪敵戦車撃破!ハリソン!次のプレデターを出せ!≫
≪チャーリー10、敵戦車4時の方向だ!≫
≪チャーリー4、あのバンカーを吹っ飛ばしてくれ!頭が出せん≫
≪オスカー11、11時方向にAPC!≫
≪射手が撃たれた!誰か50calに着け!!第一CPへ向かえ!!≫
≪オメガ2、もう直ぐ正面だ。10度上≫
≪了解バラード1・・・・捉えた、任せろ≫
≪敵機来るぞ!伏せろ!!≫
≪RPG!≫
「ジョイントスターズ!制空権確保まで後どれ位だ!?Over!!」
≪此方マジック、予定時刻は判明していない、Over≫
「マジかよ・・・オスカー1より全部隊、空軍は役立たずだ。何としても防衛線を突破しろ!」
Holy Shit!オスカー1、それは本当か!?後15分も戦っていたら撤退しなければ全滅するぞ!!Over!!!≫
「・・・・分かってる!!総員鋭意奮戦しろ!!Out!!!」
左翼攻撃隊指揮官であるオスカー1ですら小銃を持って迫り来るエルジア軍と交戦している。各隊の損害率は3割を超えた。
「クソッ!HQ、此方オスカー1!!航空支援が必要だ!!海軍でも海兵隊でも空軍でも良い!!さっさと戦闘攻撃機をよこせ!!早くしないと全滅するぞ!!Over!!!」
≪余っている戦闘機があればとっくの昔に送っている。現在中央抵抗線から航空隊の一部を割いて補給しそちらに向かわせている。先遣隊ETA5分。Over≫
相変わらずの冷静な司令部の答えにオスカー1はとうとうキレた
「クソックソックソッタレ!!!!お前等は俺たちを見捨てる気か!!!!超音速で寄越せ!!!早くしろっつってんだ!!!3分で寄越せ!!1秒でも遅れたら我々は撤退する!!!Out!!!!!」
ガンッ!!と無線機ごと砂地に叩きつける勢いで無線を殴ると、指揮官自身もM16A2を持って交戦を開始する。
「良いかお前等ぁ!!一歩も譲るな!!!地面に斃れても引き鉄は引き続けろ!!!航空支援は必ず来る!!!」
「「Sir Yes Sir!!!」」

≪オスカー4と通信途絶!≫
≪チャーリー3、まだ生きてるか!≫
≪ああ、何とか・・・・生きてるのが奇跡だ!畜生!負傷兵多数!!後退の許可を!!≫
「オスカー1よりチャーリー3、却下する!皆撃たれているんだ!突破しろとは言わん、戦線を維持しろ!!」
≪Oh My God・・・・Fuck'n Holy Shit・・・・・≫
≪チャーリー14、神に祈る前に目の前のエルジア兵を撃て!祈っている時間すら勿体無い!!≫
≪チャーリー2、60m前進してオスカー12のカバーに行け!GO!≫
≪チャーリー2被弾中!!撃ち返せ!!Fire!!・・・Hit it!!!≫
≪オス・・1、此方・・・・CS・・・・援が・・・着した!≫
「何だって!?聞こえん!!もう一度言え!!!」
友軍の無線を聞いていた無線士が無線に向けて怒鳴る。感度が悪く雑音が多い。
≪オスカー1!3時方向敵機の増援だ!≫
≪チャーリー8!ステインガー用意!!≫
「クソッ!ここまでか!」
誰もが諦めかけたその時、増援の戦闘機が対地ミサイルを放った。それは友軍の頭上を抜けて、敵軍の陣地へと正確無比に飛んでいく。
≪・・・・Arrowhead(アローヘッド:ISAF軍の国際識別徽章)・・・・友軍だ!!空軍の増援だぞ!!
≪やっときやがった!!!お前等!前進だ!!俺たちには天使の御加護がついている!!突撃!!!
Arrowhead・・・三本の矢の様な国際表記、紛れも無く友軍機。先頭は蒼い無限を示すメビウスの輪をつけたF-22が悠然と飛ぶ。誰もがソラを見上げ、その結束された矢を見る。後続に遅れてきた陸軍AH-1Zヘリ航空隊4個中隊がお返しとばかりに20mm徹鋼弾や20mm劣化ウラン弾を敵陣地に叩き込む。オスカー1の先任軍曹はこう呟いた。
「ああ、畜生。メビウス1、あんたは英雄だよ。俺たちの獲物まで持っていきやがって・・・」
その言葉を聞いた副官の傷だらけの伍長が答えた。
「そりゃ違いますよ・・・"奴等"の名は"「ソラの守護天使」"、すぐに去ってしまって我々地上の兵士が祝福を受けられるのは一瞬も無く、それを分からない奴もいますが、いつの時代も良い仕事をしてくれます。空軍って奴等はいつもそうです」
「ああ、そうだな・・・・さあ、残業を片付けよう。全部隊前進再開しろ!GO!GO!GO!」

旧アンカーポイント市 12:07
≪砲撃が止んでるぞ。全部隊、旧アンカーポイント市に向け前進しつつ精密射撃で敵を攻め潰せ!≫
≪前進して敵戦車を叩け。Fire!!≫
≪第三分隊前へ!第二分隊は後退し再編させる!≫
≪タンゴ5、相当被弾しているようだが大丈夫か?≫
≪なあに、装甲がへこんだだけさ≫
≪メデイック!!≫
旧アンカーポイント市では相も変わらずISAF軍の苦戦が続いていた。エルジア軍はそれなりの損害を出してはいるが、それでも戦力差は縮まらない。何故なら此処はもともとエルジア軍の増援を受け入れ、ISAF軍を十字砲火で倒す為の防御陣地だ。言うなれば、支援部隊。そこを偵察で確認したISAF軍は、援軍の足止めとして比較的小規模の部隊を送り込んだのだから、他の戦線が突破して援軍が到着しないと勝てるようなものではない。
≪HQよりタンゴ分遣隊総員聞け、グッドニュースが3つ、バッドニュースが1つある。どちらから聞きたい?≫
≪グッドニュースから!Over!!≫
≪了解、まずは他の戦線からエルジア軍で撤退開始した事、次に敵前線指揮所への戦闘ヘリコプター二個中隊と一個戦術飛行隊の攻撃が始まった事、最後は航空支援がそちらへ振り分けられる事だ≫
HQが中々気の利いたニュースを伝えると旧アンカーポイント市へと進撃するタンゴ支隊・・・タンゴ分遣隊二個機甲師団の士気を急激に挙げた。特に航空支援振り分けは彼等を奮い立たせるのに十分な事だった。
≪了解、バッドニュースは何だ!?Over!!≫
≪諸君等がいるFFZより北15マイルに敵増援、二個機甲中隊だ≫
≪Roger!タンゴ本隊及び航空支援の一部は敵増援へ回してくれ!こっちはもう3~4機いればどうにかなる!!Over≫
≪Roger、グッドラック。Out≫
≪全員聞いたな!もう直ぐ此方の航空支援の体制が完璧に揃う、そしたら一斉攻撃をかけるぞ!Oorah!?
≪≪≪Oorah!!≫≫≫
明らかに無線に応答する部隊が減ってきている、既に損耗率は4割近い。壊滅状態といっても過言ではない
≪此方ブラックデスサイズ、タンゴ分遣隊、聞こえたら応答を≫
≪空軍の増援か!?OK、感度良好!何機いる!?Over≫
≪まだ生き残っていたか、しぶとい連中だな。・・・・・9だ。貴隊の航空支援には何機必要だ?Over≫
≪あ~・・・最低一個分隊だ。Over!≫
≪ブラックデスサイズ、Roger。エレメント・グウェイ、エレメント・ガーゴイルは敵増援を、ユニコーン・フライト1・2は制空権確保、3、4は私に続け。Break Now≫
友軍機甲師団の8時方向から戦闘機が見えるとその編隊を崩し、一隊は敵増援に向かって、一隊は機甲師団直援隊の加勢のために上空へ、一隊は緩降下・急加速しながら敵機甲師団への攻撃を始める。
≪ブラックデスサイズ、フェイスイン。CBU(クラスター爆弾)行くぞ。投下タイミングは我に合わせろ≫
≪≪ユニコーン3、4、Roger≫≫
≪・・・3・・2・・1・・NOW!・・・次、3・・2・・1・・NOW!≫
ゴゴン、ゴゴンと、地面スレスレで多少間の開いた投下間隔で左翼、中央、右翼へと集束爆弾を投下していく。低高度投下されたそれらはすぐにパッと炸裂した。
ババババババッ!!!バババババッ!!!!バババババババッ!!!!!
≪良し、弾着確認!!攻撃開始!≫
投下されたCBU-87BやBLU-108/Bクラスター爆弾の子弾には少量のTNTしかない、戦車を完全に破壊するには少々火力不足だが、キャタピラを吹き飛ばしたり、装甲の薄い戦車上部あたりを吹き飛ばしたりして足止め・無効化するには十分すぎる。APCや歩兵ならば壊滅的被害は免れ得ない
≪行け!行け!行け!!≫
≪ジャベリンAWS用意!撃て!≫
≪タンゴ分遣隊、此方ブラックデスサイズ。もう一度攻撃を仕掛ける。あまり近づくな≫
≪全部隊、敵の手前500mまで前進しろ!空軍の連中がもう一回掃除しに来るぞ!!≫
上空ではエルジア軍機の機数は疎らになり全機が分断され、ISAF・SAF機に追い回されていた。
そして、ミサイル・クラスター爆弾・ロケット弾攻撃が壊滅状態となった機甲師団へと降り注ぐ。勿論対空車両もあるにはあったが、装甲が薄いこいつは被弾し、戦闘能力が下がっていたISAF軍戦車がお返しとばかりに集中攻撃を加えていた為殆ど機能していなかった。
≪敵陣が崩れた!タンゴ17!左翼中央から一個分隊ともに制圧射撃!!タンゴ14!右翼正面から急襲突破!≫
≪行くぞ!≫
兵士達の表情には安堵と余裕が生まれ始めていた。誰もが勝てる戦闘だと確信した
≪敵戦車を85%撃破した。後は自力でいけるか?≫
≪勿論だ!航空支援感謝!やっぱり空軍は頼りになるな!!≫
≪それはどうも。ユニコーン3、4、此方ブラックデスサイズ。敵増援部隊を叩くぞ。私に続け≫
≪≪3、4、Roger≫≫
対地攻撃を一旦終えた黒く汚れたファントムは上空でArrowheadの形をした編隊で友軍の上を一航過してみせるとミリタリー推力で北から進んでくる敵軍に対して攻撃する為に急行する。
≪此方グウェイ1、ブラックデスサイズ聞こえてる?≫
≪感度良好、何かあったか?≫
≪想定外の事が起きた!早く救援を!敵機と対空車両が多すぎる!≫
グウェイ1の悲鳴のような声と嫌なほどのミサイルアラートが鳴り響いてるのがレシーバー越しではっきりと聞こえた。溜め息を吐きながらそれに答える。と同時に武装チェック。重いCBUは全部落とした、600ガロン増槽1本に、ECMポッド、バルカン640発。いつも通りだ。ついでにCBUを積んでいたハードポイントも強制廃棄して軽くしておく。
≪やれやれ、"鬼"の名が廃るような事をよくいえますね・・・・援護する。ユニコーンは此処に留まれ。当機は所定を完結している。これより援護に向かう。現状の詳細を伝えられたし≫
≪うるさいわよ!敵機は15!IRSAMが3!SAHRSAMが4!対空車両12!まとまって撃ってくる!≫
≪Roger、ISAF空軍機に援護要請を回す。対地は彼等に任せる。オーライ?≫
≪了解!さっさと来て!≫
≪はいはい。ETA2分、アフターバーナーで急行中≫
IRSTにコンタクト。派手にやり合っているのがよく見える。さっきからずっと敵の攻撃をかわし続けている。ブランクがあるとは言えど、流石は鬼神。隙があればそいつのケツについたりしている。どうやら敵編隊は首都防空隊の連中のようだ。これまでの敵機とは動きが異なる。手中にある情報を整理しつつ、最初に目標とする敵機を定める。勿論太陽を背にして見つからないように確実に必中ポイントへと追い立てる。鬼神はいわば猟犬だ。そして狩人は黒い死神。
(あともうちょっと・・・・ヒットポイントまで10秒・・・)
HUDに表示されるレティクル・ホットラインを睨みつつ、操縦桿を微調整させる。5秒前でトリガーを絞り、レティクルを敵のF-22に重ね、そこでピッタリと止める。戦闘機から戦闘機への銃撃ほど神経が集中する事は無い。何故なら操縦桿にほんのちょっと圧力がかかると直ぐに敵機は照準から逃げてしまうからだ。それだけじゃなく、相手はいきなり攻撃をかわそうと回避機動を取る時もある。
≪FOX3≫
ドルルルルルルルルルルッ!・・・ヴォン!ガンッ!!バキッ!
≪スプラッシュ1、次≫
≪ブラックリーダー・ロスト!≫
≪落ち着け、敵機が一機増えただけだ!ブレイク!≫
ほう、と感嘆の息を吐く。隊長機が堕とされても冷静な部隊とはこれまた珍しい。と刹那は思った。
(堕とすのが勿体無いくらい、良い部隊連携だ。こっちを飽和ミサイル攻撃で堕とそうとしている)
敵機が散開した時、各機が同じ方向にブレイクしなかったので追うべき標的選択に一瞬迷った。だが、コンピューターは迷わない。即座にエースブレイカーの演算装置が高脅威の目標を選択し、HMD上に最重要撃破目標として表示される。それに頭が考える前に体が動き、操縦桿を手前に引きスロットルをアフターバーナーの位置へと叩き込む。急激なGが体を襲うものの、落ち着きを失わず、勘と狩り取るべき獲物の"におい"を元に、インメルマンターンで高脅威の敵機・・・敵の2番機(指揮官機)を捕捉する
≪誰が逃がすと言った?FOX3≫
ドルルルッ!!ゴキュッ!!メキャッ!!
レティクルに捉えられたのはほんの一瞬だけ、トリガーを引いたのも一瞬だけだ。だが、機械は嘘をつかず、ちゃんと機関砲弾を未来予測位置に来た敵機に直撃させた。主翼の付け根に命中した為、Gと空気抵抗が合わさって一瞬で構造桁が崩壊して主翼が捥げた。
≪スプラッシュ2≫
≪ブラック2ロスト!新手の奴は何だ!?階級が上の奴から狙ってきやがる!!≫
≪敵編隊が乱れた!行くわよ!≫
≪頂き!≫
≪レッド・リーダー!後方に蒼いイーグル!レフトブレイク!≫
≪ブルーリーダー!3時方向から新型の可変翼機が喰い付こうとしてるぞ!!かわせ!!≫
指揮官と2番機を撃墜すればどんな部隊でも混乱する。何故なら隊長・副長機がフライト・リーダーをやっていることはあっても、3番機以降までもが指揮しなければならなくなる事は容易に想像は出来ない。B7R制空戦やコモナ諸島制空戦では1番機、2番機が落とされた部隊は5割以上が全滅していると言うデータを刹那個人で集めていた。後は部隊が混乱の底無し沼に嵌まるまで敵機にツイストを躍らせれば、赤子の手を捻るが如く全機撃ち落せる。
≪ロックオン・・・グウェイ1FOX2!!・・・・スプラッシュ1!≫
≪レッドリーダーロスト!レッド2指揮を引き継・・・!?うわあ!!≫
≪FOX2!FOX2!!・・・・ガーゴイル2、スプラッシュ1。姐さん、貰っていくぞ≫
≪ブルーリーダー!正面下方敵機!!≫
≪何ッ!?見えないぞ!≫
≪頂き!グウェイ2、ガンファイア!・・・スプラッシュ1≫
僚機が敵機を屠るのを傍目に見つつ、刹那は逃げ惑う敵機のコックピット周辺に20mm弾を叩き込む。被弾した敵機は即墜落にはならず、ゆらゆらと機体をダッチロールさせ、地面へと滑り落ちていく。
≪クソ!ブルー2、指揮を引き継げ!・・・おい、応答しろ!ブルー2!≫
≪目標無力化確認。ブラックデスサイズ、スプラッシュ3。後9機≫
≪全機落ち着け!闇雲に飛ぶな!!数では勝っているんだ!新手から落とすぞ!!ブラック4は我に続け!≫
敵機が3時方向上方から二機後方に回り込んだ。刹那は追っていたSu-35を捨て置き、エアブレーキを作動させて敵のミサイルの最小射程に割り込んだ。操縦桿を前に倒し、0G状態にする。と同時にミリタリー推力までスロットルを入れる。
≪!?き、消えた!?何所だ!何所に消えたんだ!?≫
≪後方上方にも居ない!急降下もしていない。奴は何所に消えた!?≫
敵機が自分から勝手にオーバーシュートしたのを確かめると、操縦桿を引いてアフターバーナーにまで推力を持っていく。
≪正面に捉えた。FOX3≫
ドルルルルルルルルルッ!!ガン!ヴォン!ギン!ガキュンッ!
≪!?こ、コントロールが!?ダメだ脱出する!!≫
≪スプラッシュ、次≫
≪ブラック4!・何があっ・・・!?・・・な、何で後方下方に!≫
≪任務ご苦労、さようなら。FOX3≫
ドルルルルルルルルルルルルッ!!ガンガンガンッ!!!バキッ!メキャッ!!ベキョッ!
≪スプラッシュ、次はどいつだ?≫
≪へぇ、ブラックデスサイズもするんだ・・・アンロード加速≫
"アンロード加速"・・・自分の機体のパワー・ウェイト・レシオ(推力・重量比)が1:1若しくは0.9:1など、自機の推力が自機の重量に比して小さい戦闘機乗りが良く使う戦法の一種。
パワー・ウェイト・レシオが小さい戦闘機は空力特性云々以前に、格闘戦では速力が急激に下がりやすい。(現代空中戦でも必要なのは運動エネルギーと高度エネルギーである)その為そういった重量級戦闘機は強力なエンジンを積む。(F-15やF-22、Su-27シリーズなど)だが、それでも重いのに変わりは無く、どうしても多少推力が弱いが軽い軽量級の戦闘機(MIG-29シリーズ、F/A-18シリーズ、F-16シリーズ、F-5等)には格闘戦性能は劣ってしまう。
そこで、強力なエンジン推力を最大限引き出す為に出来た戦法がアンロード加速だ。まず機体を0Gにする事で、機体重量を0にする(空中で重力がかかっていない状態だと、エンジン推力かかる抵抗は機体の空気抵抗のみとなる。数式に直せば、この式に当てはまる。エンジン推力-〔空気抵抗+機体重量〕=機体にかかる前進しようと作用する力)と同時に機体は降下と急加速を始めるので相手には消えたように見える。降下すれば速度も上がり、エンジン推力もそこにプラスされるので損失される高度エネルギーよりも増加する速度エネルギーの方が勝る。敵機が頭上を通り越したのを確認したら、その増加した速度エネルギーを上昇によって"速度エネルギーの損耗を抑えつつ"高度エネルギーに替える。後は此方を見失って混乱して無防備状態の敵機の後方から銃撃を加えれば良い。と言う戦法だ。イスラエルや航空自衛隊などのファントムライダー(F-4乗りの総称。F-15乗りはF-15の高性能と高価格、そしてパイロットの高給取りからイーグルドライバーと畏怖と敬意を込めて呼ばれる)が好んで使用するという話がある

≪クソ!こいつら相当出来る!・・・!?レーダー照射!?新手か!≫
≪退け!これ以上の損耗は許可されていない!!これ以上首都を空ける訳にもいかんのだからな・・・!≫
敵機が北西に向けて反転するのを確かめると。地上の敵部隊も北西に進路を変えた。エルジア軍全軍がこのウィスキー回廊から撤退を始めたのだ。
≪敵軍が撤退していく≫
≪こちらスカイアイ。敵が後退をはじめている!すべての友軍が前進を開始したようだ!
我々の仕事は終わった。全機帰還せよ≫
≪≪≪了解、ミッションコンプリート。RTB≫≫≫
今まで航空支援を行なっていた戦闘機、攻撃機が一斉に基地へと針路を取り始めた。だが、刹那は無線周波数を弄ってISAF全軍が使う周波数とは違う別の無線に耳を済ませる
≪ARC、応答しろ≫
≪・・・・Sirコマンダー、此方ARC-アルファ・・・ブラヴォー・チャーリー共に所定を完結、待機中です。指示を≫
≪了解ARC-アルファ。セーフハウスにて準備待機≫
≪Sir≫

"第三者"との短い会話を終わらせると、元の周波数に戻して宣言した。
≪お遊戯は終わりだ。貴官等に軍神の御加護があらん事を≫
≪?・・・君は、何を――≫
AWACSの問いかけに答えるまでも無く、無線を切るとECMを作動させて亜音速で北北西へと針路を取った。

Fin
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