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第三十話:憎む者、憎まれる者

4月30日 ノースポイント 入間統合自衛軍基地 14:10
「・・・雨・・・何故だろう・・・」
刹那は、エプロン(駐機場)でボーッと空を眺めていた。少しずつ、ソラが泣く様な雨が降ってきた。
「・・・詩人は・・・割には合わないと・・・思って、いたんだが・・・」
その言葉は、雨水が当たるごとに弱々しくなっている。

ふらっ・・・バタッ

まるで死んだように地面に倒れる。勿論遊んでいる訳ではなく、本当に気絶したのだ。整備員が駆け寄り、大声で医務官が呼ばれる。

入間統合自衛軍基地 医務室 15:20
「過労ですな」
「か、過労?」
死んだように眠っている刹那の隣でSAF指揮官のNASDFの士官はそのあっけない答えについつい聞き返してしまった。過労でパイロットが倒れては戦争が成り立たない。だから休暇は彼にも外地で活動中の隊員にも与えられているのだが・・・
「ええ、過労です。正確には肉体の酷使もありますが・・・一番の要因は・・・精神的に追い詰められているという事でしょうな」
「精神的なダメージ・・・ですか?」
噂を聞きつけたISAF空軍のパイロットや傭兵も集まってきた。医務室の前には人だかりが出来ている。
「恐らく、いじめの様な追い込まれかたでしょう。一応カウンセラーの免許も持っているので、分かります」
「イジメ!?ぐ、軍隊の中でですか!?」
「それ以外は何も思い当たりませんな。この方は現役の時は働きすぎで倒れましたが、今回は誰かが故意的に彼を追い詰めた・・か。若しくは彼自身がそうさせたか・・・です。この方は他人に重荷は背負わせない様に自分だけで何もかもやってしまう」
「・・・こいつを知っているんですか?ただの傭兵なのでは・・?」
その言葉を聞いた医務官は溜め息をつくと一旦刹那の方に目を移してからまた士官に目線を戻した。
「知ってるも何も・・・[黒い死神]と言えばあなただって分かるでしょ・・・・刹那元NASDF一等空佐・・・この基地の・・いや防衛省の直轄の士官で、シューテイングスターと言えば誰にだって分かります」
「・・・へ?」
「此処に居る自衛官で彼を尊敬しない人なんていやしませんし、彼はUNFスペシャルフォース[BLACK OPS]の第三戦闘中隊の中隊長でもあるんです」
「・・・・・・」
BLACK OPSとは、国際連合の軍事機関[UNF]通称[新統合軍]の世界最強のハイテク、ローテクを最大限に駆使した戦闘集団、それはもう化け物揃いで全員がゴルゴ13やシモ・ヘイヘで構成されていると言っても過言ではない。それを聞いた士官は開いた口が塞がらなかった。オーシア軍を壊滅させるのに5日も必要無いと言われるくらいの戦闘力、さらに最強のUNAF戦闘機部隊不死鳥[スカーフェイス]鬼神[ガルム]、怪鳥[ガーゴイル]始祖[ユニコーン]それに、各国の特殊部隊がそれぞれの国の国益の為に行動する時にもかなりのOPSの人間が関わっているという。
その内の第三戦闘中隊は全員がレンジャー資格を持っており、特殊部隊の中でも精鋭と呼ばれる部類から選抜され死者を普通に出すような入隊試験の後、その合格者で構成される人類最強の兵士達で構成される最強・最高・最狂・最凶の中隊。仲間が何人斃れても目すら向けず、どんな犠牲をも厭わず、どんな危険な場所にも瞬時に飛び込む。そしてそいつ等が通った後は地面や壁にはペンペン草すら生えないほどの銃撃痕と爆発口を残すと言う最もエキサイテイングで過激な特殊部隊だ。皆揃って任務を終わらせる為に二次被害なぞ考えず暴れ、殺し、邪魔するものはビルであっても直ぐに爆破する短気っぷりは「死の旋風」と呼ばれる。そんな無法者や破壊神が降臨する所の中隊長とは信じられなかった。見た目によらず彼も破壊神なのだろう。
「五月蝿いぞ。まったくゆっくり気絶もさせてくれんのか」
「ああ、起きましたか。どうですか?体の調子は」
「拒絶反応がまだ起きるのはどうにかしないとな。相当、危険だと思う」
表情を変えずにケロリといっているが、体が痛みに絶えて振るえている。
「暫く様子を見ましょう。胃潰瘍か十二指腸潰瘍だったら大変ですし」
「・・・・それに、最近は白髪が増えて困るよまったく・・・・わざわざ染めなきゃなんないし」
「やはりストレスですか・・・無茶のし過ぎですよ。"中佐"」
「その名で呼ぶな、馬鹿者。傍耳を立てている奴もいるようだしな」
相当無茶をしているのか、雨で濡れた髪には1/3は白くなっていた。彼はどんな兵士がどんな事を言っているのかをも知っていた。そしてその殆どは戦争の引金を引いたものに対する憎悪と憤りだった。それを知ってしまうと言うのはある意味残酷だった。
「では、頑張って」
「ああ、またいずれ――・・・ッ」
刹那は寝せられていた診察台からおりて上着を着て、靴を履くと、そうそうに医務室から出て行った。医務官はそれを咎める事は無かった。だが・・・
(拒絶反応が大きくなっている・・・・。あと・・・10年この状態を維持できれば・・・・良い方か・・・)
少しよろけながら何とかドアを開ける。自分の命は無限に生きられるがどんな能力も劣化はする。さらにそれに体調不良が重なって、最悪の状態へと進みつつあった。
「ハッ・・・・ハアッ・・・クッ・・・・・」
自分の部屋に戻る頃には既に目はぼやけ、足は竦み、ベットに倒れ込むとまた眠りに入る。刹那はいつも寝る前にはこう願う。

二度と目が覚めませんように

と・・・
勿論生きているのだから必ず目は覚める。それはどんな生物でも同様である。しかし、今の刹那には生きると言う行為は苦痛に過ぎず、さりとて世界が自分の能力を必要としている限り"戦死以外"では絶対に死んではならないと、自分よりも上位のコマンドから絶対命令が出されている。このままずうぅっと眠っていれば苦痛も受ける事は無い。だから刹那はそれを望んでいる。そして、自分が死ねる唯一の条件は、全身の細胞の半数以上が再生不可能なほどのダメージを受けるか全身が飛び散るか、そして、不死の能力が劣化し、その影響で死亡。というぐらいしかない。彼はそれでも願う。

――目が、覚めませんように――

しかし、それは不意なる訪問者によって妨げられる事になる。
・・・カチャッ・・・
「!!!」
ドアが開く音で目を覚ました刹那は瞬時にレッグホルスターからSIGP220を引き出して近づく奴に向けた。
「・・・・・ノックぐらいしろ」
銃口の先には珍しくここに入ってきたメビウス1がいた。
「・・・・くたばったかと思ったんですけどね・・・残念です」
「お前よりかは先には死なんよ。特に私を憎んでいる間はな・・・何用だ?」
「いいえ?様子見しに来ただけです」
「嘘が丸見えだ」
「!」
刹那は銃をホルスターに戻しながら言った。彼女の目がこっちを見ておらず、何かを隠しているようだったからだ。
「"心配だから"が抜けているだろう・・・違うか?」
「ッッ!・・・何を根拠にッッ!?」
「ほう、図星か」
いとも簡単に誘導尋問に引っ掛かった彼女は少し驚いたようだった。
「憎悪と愛情は紙一重なのさ。いずれこうなるとは思っていたが」
「・・・愛するがゆえに憎く、憎いがゆえに愛せる・・・そんなのが私にあると・・・・!」
「では、試してみるか?」
不意に刹那の腕が彼女の腕を掴み、ベッドに叩き付けるとそのまま馬乗りになった。1~2秒たってから彼女の腕が抵抗を始めた。
「・・・やはり・・・何故即座に抵抗しない?嫌だったら私の手が伸びてきた時点で後ろに下がるなり、銃を取るなり、なんかのリアクションがあるものだ」
「!・・・・」
彼女は刹那の目から顔を叛けた。
「それどころか、私が触れた瞬間一瞬緊張感がほぐれた様にも見えたしな。何故だ?」
「そ、それは・・・・んっ!」
唇に刹那の唇が重なる。それは子供や肉親とやるような挨拶的なものだったが、メビウス1の心臓を破裂させるほどのショックをもたらした。しかも、良い意味で
「・・・な、なにを・・・・」
「何って、オーシア辺りでは当然の挨拶だろう?それとも私がお前が好きだと思っているのか?馬鹿者」
「・・・・」
「私は誰も好きではないし、嫌いでもない。誰彼も恨みも、愛しもしない。お前はそんな私に何を望んで此処に来た?偶然なんて台詞は私は信じない。偶然なんてこの世には無いんだ。奇跡は起きない事を言う。この状況をひっくり返すお前のジョーカーは何だ?銃か?刃物か?言葉か?それとも体か?ここら辺には誰も来たりはしない。近くの部屋の連中は皆揃ってCAPと言う名の遊覧飛行の最中だ」
目をそらす彼女の目を睨みながら刹那は一気に言った。
「答えろ、馬鹿者」
「・・・・・こうしたかったんです」
「・・・!」
彼女は平静を装いつつ、自分の肩を拘束する刹那の腕を掴みバランスを崩し、ベットに刹那を押し倒しつつ今度は彼女が刹那の上半身に全身を預けた。刹那は彼女がどう動くかを見極める為に、わざと隙だらけの姿勢をとっていた。
「・・さっきの状態じゃ。聞きたい事を聞こうにも聞けませんからね」
「・・・質問か」
「あなたの答え次第で、私は今後の道を決められる。真面目に答えてください」
彼女はそういいながらホルスターの拳銃に手を掛けた。回答次第ではズドンとやるわけだ。それは刹那も同じだ。
「・・・なんで、ノースポイントの陰の防衛大臣とまで言われた貴方がこの戦争の引金をエルジアの最高指揮官に引かせたのですか?」
「・・・・それ、か。まあ良いさ。もうそろそろバラさなきゃと思っていたんでな」
刹那は銃のホルスターから拳銃を取り出すのを止めた。
「・・・懐かしいな。何時だろうか・・・・そう、ユリシリーズが堕ちると分かった頃だった。・・・・その時に、STNが作られて、アークバードや我々のレーザー兵器が脚光を浴びるようになった時に、うち等のボスはこういった。"STNではカバー出来ない地域に我が国のレーザー兵器を配備しよう"何て言い出してな・・・・そりゃ、素人目から見れば核の冬が来るんだったら対策は練るべきだと言うだろうな。・・・・だが、我々軍人から言えばとんでもない。"世界中の軍事バランスが狂って必ずそれをめぐる戦争が起きる。そんな事になれば核の冬よりおっかない事になって皆おっ死ぬ"と知っていた。だから、でかい戦争を起こしてでも止める必要があった・・・・それが戦争を始めるように"私達"を引張った原因だ」
「・・・・」
ゆっくりと簡潔に言う刹那は彼女に対して苦笑していた。
「本当ですね?」
「ああ、嘘や偽り無しに言った」
刹那の目は彼女の目を射抜くように微動だにしなかった。
「・・・・良かった。やっぱり思ってた通りだ」
「え?・・・ムッ!・・・ッ!・・・・はぁッ・・・何をするんだ馬鹿者!」
彼女は刹那の四肢の支点を押さえながら、無理やり彼の唇を奪った。そして無理やり自分の舌を彼の口の中へと捻じ込んだ。彼は首を振って抵抗して直ぐに振り払った。二人の口をつなぐ糸が垂れて消える
「ようやく、自分の気持ちに正直になれました。つっかえたものがやっと出て行ったような気がします」
「何が言いたい」
「・・・好きです。貴方の事が・・・殺したいほどに・・・憎いほどに」
彼女は刹那が動けないようにしながらも彼の首筋を舐め始める。
「・・・・そこまで私をモノにしたいか?」
「ええ。あなたの全てを奪い取りたいんです。昔の自分じゃ、考えられないほどに」
「・・・好きにするがいい・・・そこまでと言うならば、何もしない。勝手に奪え、勿論命と機体だけはやらんがな」
「・・・それって・・・ずるいですよ」
雨降って地固まる

fin
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コメント

読みました
どうも、初めましてアルバトラー7です。
いつも読ませていただいております。
全文読んだとき時、ちっとやばくなりました。(いろんな意味で)
何というか黒いのか甘いのか・・・・うまく使い分けているのに感心。
今後ともよろしくお願いします。

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