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第6話:初陣

ユークトバニア 某所 9月27日 19:45
≪此処にニカノールが幽閉されてるのは事実なのか?≫
≪・・・・解らん、だから我々が派遣されているんだろう≫
≪やだやだ・・・。こんな任務やってらんねえよ≫
≪愚痴るな。それでもARCか?≫
ARCのユークトバニア駐留部隊はユークトバニア首都シーニグラードからあまり離れていない山小屋の近くに展開していた。此処にクーデターでニカノールを誘拐したスペツナズ隊員らが隠れているとの情報を他の捕らえたスペツナズ隊員より聞き出していた。それを確認する為に彼らは派遣された。
≪敵の歩哨は1、2、3・・・・12です≫
≪"浸透型"作戦で全部気付かれる前に殺るのは無理だ。"速攻型ブラック・ウィドウ"作戦を取るぞ≫
≪"素早く、見つからぬ様に"・・・簡単ですよ。レベルの差を教えてやります。ロック&ホールド!≫
ガシャガシャガシャッッ!
ロック&ホールド・・・つまり薬室に初弾を送り込んで安全装置を入れる。作戦準備状態を意味するコールだ。装備は主にARX160やMASADA、SCAR、XM8、FN F2000など最新型のライフルのみを装備し弾薬はSFGpと共有する為に6.5×50mmJAP専用に薬室とバレル寸法を変えたものだ。3点スリリングは勿論音が出ないようなものを使い、弾倉入れもゴムバンドで簡単に音を出さず出し入れできるように、そしてナイフは利き腕の反対側の胸の位置、全て実戦において洗礼されたポジションと装具だ。
≪アルファ42、43と44を率いて2時方向のブッシュでアンブッシュ(待ち伏せ)待機、向かってくる敵の歩哨を挟撃する。攻撃手段はナイフ及びロープだ。射撃は許可しない。SFGpの諸君は見ているだけで良い≫
≪≪Roger≫≫
味方兵士達が中腰で素早く移動する。隣で待機しているSFGpの隊員たちは万が一に備え小銃の安全装置に手を掛ける。
「・・・ったく、何で俺たちがこんな辺鄙な所でこんな事しなきゃいけねえんだ」
「愚痴るな、ちゃんと周りを見てろ。確かに臨時給与はでかいが・・・行くんなら最前線だろ・・・こんな安全地域俺は嫌だぜ」
≪3m・・・2m・・・1m・・・Go Now≫
ザスッ!
「!?な、なん・・・があ・・・・ッ・・・がはっ・・・・かっ・・・・」
グイッ!ギギギギギギギギギッ・・・・ザスッ!ザクッ!ザクッ!
雑談していた敵兵の一人の首にナイフを突き立てを刺殺、もう一人の頚動脈にロープを瞬時に通し地蔵背負いで締め上げ、気絶したのチェックするとナイフで止めを刺す。死体は当然隠蔽する
≪キル、確認。隠蔽します≫
≪・・・流石だな。死亡確認もこれまたえげつない。前進だ。我が隊は左翼を担当しよう。位置と歩哨ルート確認ならばしてある≫
≪了解、任せよう。ヘマはするなよ≫
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第5話:奇襲

<解説>
風邪で寝込んでしまい、執筆を中断せざるおえない状況であった管理人です。中々喉の調子がよろしくないのですが・・・(^^;) 

>今回からはユークトバニアの本格侵攻が始まります。原因は、"灰色"の陰での行動でした。(ACE COMBAT 5での最初のムービー・ブレイズの初陣・バートレット被撃墜の三つの戦闘は何れも灰色の仕業です)

>原因のもう一つは既にユークトバニアにおいてクーデターが発生し、ユークトバニアは既に灰色の手の中で踊っているだけに過ぎません。ニカノールは既にに拘束されています

>オーシア側では灰色と手を組んだ副大統領がハーリングを追い込もうとする計画を練っている所です。

>これに対する動き:刹那はガーゴイル1のとある条件を飲んで、実質的に彼女の所属する「国境無き世界」と休戦します。(要注:共闘ではない) 

>尚、先の話で出た表の勢力とはオーシア・ユーク両軍+傭兵の灰色に関する話の理解者

>闇の勢力とは刹那を陰で支援するノースポイント(サウスポイントは統合されノースポイントの一部となっています)上層部の事です。彼ら(ノースポイント)は今まで以上に暗躍します。既に状況を掴んでおり、既に特殊部隊と特別飛行隊をそれぞれユーク・オーシアに極秘裏に派遣しています。今後はさらに派遣されるかも?

>特殊部隊=SFGp 特殊飛行隊=???(今回から登場)

では本編へ!

第4話:宣戦布告

オーシア オーレッド郊外 セーフハウス 9月27日 04:20
「・・・何で一思いに殺さなかったの?」
シャワーを浴びおえて、ガーゴイル1は刹那に問い出さす。刹那は口だけを動かした。それだけでも彼女は理解できる。

そうさな・・・。情報を得るだけなら拘束している。戦友だから殺せぬ、仲間になれと言う様な理由なら、お前を2夜も抱く事はありえんし、そんな心算はまったく無い。思い当たる節は?

「そんな事言われても・・・」
彼女はとても困った表情で刹那の顔を覗き込む。彼はフフッと微笑った

私も人間だと言う事だ。感情は捨て切っていない。自分では気付かなくとも・・・・どうやら、私もまだまだ甘い所もあるようだな


「え?ちょっとどうi――」
ドサッ
刹那は彼女をゆっくりベットに押し倒し、優しく唇に唇を重ねてまた笑った。

こう言う事だ。何時の間にか「他人を好きになる」という感情を持っていたんだよ。こんな戦争中毒者でもな

「×○△☆!?」
彼女は理解不能の声を上げて顔を真っ赤にする。彼女も彼も互いに意識していた時期はあったが、「好き」とか、「愛する」等と言った感情は一度も持った事が無い。何故ならそれとは無縁の「戦場」と言う世界に居続けたのだから
「何でこんな年になって・・・!?」

さあ、な。良く解らん。・・・・まあ、いつかはこの"忌々しい感情"も消えるだろう。・・・手伝ってくれるか?彼等「国境無き世界」も言った通り、「灰色」の目的を防ぐ事では一緒の筈だ。彼らとは手を組めない。だが、私が信用するに値する人間は君ぐらいしか居ない。まずは"狙われている人物の確保から始めなければならない"

刹那にとっては雑念でしかない「愛情」、だが彼女は戦場から離れる機会も多かったので「愛情」と言う感情を持ちたいと思っていた。
「・・・解ったわ。・・・・でも、条件がある」

第3話:開戦

オーシア オーレッド ブライトヒル近辺 9月23日 12:25
「・・・・ハァ・・・・」
刹那は自分の手が後手後手に回っているのに苛立ちを感じていた。既にニカノールは誘拐され、「その時」は確実に迫っている。そうなってしまえば準備途中の此方はさらに後手にまわなければならない。そうなってしまえば、奴等の「勝ち」だ。何としても、ハーリングを守り通してニカノールを奪還しなければらなぬ。さもなくば此方は二方面作戦どころか三方面作戦を展開しなければならなくなる。そこまでに対応できる程の戦力と情報は追い付いてはいない。
(焦るな・・・焦れば奴等の思うつぼだ・・・)
自分に言い聞かせながら、ブライトヒルへと向かう。そこにはハーリング大統領が執務室を構えている。一刻も早く緊急事態を伝えなければならない。
「あれ?おーい!」
「!」
(こんな時に・・・!)
呼ばれた先には先の大戦で世話になったガーゴイル1が居た。彼女はまるで恋人のように抱きついてくる。振り払おうとするが、彼女はまったく離さない。
「つれないなあ・・・折角戦友が偶然会ったって言うのに・・・どうかしたの?」
「・・・!!!・・・!!」
いつものノリで返事を返そうとするが、声を出せない事に今更気が付いた。
「?」
(くそっ!何で私はこんなに取り乱してるんだ・・・・落ち着け!)
ゴンゴンッと頭を二・三度叩き、前を向いて足を進めようとする。
「フフーン・・・何所行きたいかは知ってるよ。私もそこに行くから気にしない、気にしない。執務室まで案内するわ。此方も用があるし、ね?そんなに焦んなくたって大丈夫だって」
「!」
彼女の少し上目目線は確実に刹那の瞳の奥の動揺を掴んでいた。心臓が汗をかいているように冷や汗で全身が芯から冷える。
「あ、そうそう。良い場所見つけたんだ。用が終わったら一緒に行こ?良い情報も入ってるよ」

第2話:異変の始まり

サンド島 9月19日 06:40
「まだ俺たちは走るのかよ・・・かれこれ1時間30分はランニングしてるぞ・・・・」
「そこ、愚痴ってる暇があったら足を動かせ!ペースダウンするなら基地15周追加するぞ!まだ32周目だろうが」
「俺たちは陸軍じゃねんだよ、バカ野郎・・・・」
「パイロットに必要なのはスタミナと耐G能力、そして過酷な環境下での判断能力だ。歩兵以上に走る必要があるんだよ。わかったら黙って走れ」
部下が新兵と並走しののしりながらペースを維持させる。一日はこの基地ランニング40周(教導側は50周)から始まるように刹那は仕組んだ。初日の飛び方を見てスタミナが足りないと見たのだ。
「チョッパー、本当にお前ペースダウンしてるぞ。もっと上げろよ」
「うっせ!ブレイズはこれで俺を何周抜かしたんだよ?」
「エッジと同じで、4周抜かしだな。最後尾は7周抜かしだ」
「・・・・図体とは違ってお喋りは達者でも、走りは弱いのね」
朝日が昇り始めた中で、走らせる事で眠気を取り、体を暖まらせてスタミナを付けさせると言う目論見だ。と言っても、此処までするのは報酬をより多く貰う為にこいつらを鍛え上げる事だった。金がなければ装備品を整備し、部品や武器弾薬を新規調達する事は出来ない。
「明後日が我々の最終日なんだからな。お前らがしっかりして貰わねば、こちらが困る」
「しかしあの二人は早いな。あと4周で終わりか」
「ただ二人とも体力的に余裕はなさそうですね。016の方が引っ張っている感じです」
セイバー隊の隊員たちは先頭を走る二人の新兵を見て雑談しながら45周目に入った。刹那は既にラストの50周目も終わりに入っている。息は軽く上がった程度で黙々と走り込む。ついにゴールにたどり着くと、すぐさまタオルで汗を拭きとる。次は「人間洗濯機」こと耐G訓練の装置に乗り込む。最大8Gまで体験できる装置だが、無駄な脂肪は当然だが、戦闘に不必要な筋肉および血管の一部(バイパス手術で心臓から強力な力で脳に手術前と同じ量の血液を送る様にしてある)をを削ぎ落とした刹那にとっては大したものではない。だが他の人間ならば拷問に等しい。しかしこれを耐えねば数日間で中堅並の実力を付ける事は無理だ。
「おいナガセ!しっかりしろ!」
大声を遠くから聞き、そちらの方をチラッと見ると刹那は飲もうと思ったミネラルウォーターのペットボトルと冷えたタオルを持って駆けだした。軽く舌打ちしながら・・・

新章:灰色と漆黒 第1話:教導

この章から書き方が微妙に変わっていきます。そこら辺はよろしくお願いしますm(_ _)m
サイトを軽くするため追記を活用していくので、ご覧になられる方は「続きを見る」をクリックしてください

・・・・・・・・・・・本編・・・・・・・・・・・・・

オーシアADIZ(防空識別圏) サンド島40ノーチカルマイル北西沖上空 2010年 9月10日 14:25
≪隊長、本当に良いんですか?これっていくらなんでもフライトプランとはかけ離れていますよ≫
≪・・・・≫
周波数124.58MHzの無線はかなり静かだ。1機のF-4を先頭とし後に続く2機づつのF/A-18EとSu-33近代化改修機の混合編隊は高度1万mを遊覧飛行のように巡航速度で飛んでいる。隊長機の無線は黙ったままだが、MFDに返答が返ってきた。

相手を試すだけだ。周辺の警戒を怠るな

≪・・・だってよ。わかったか?セイバー4≫
≪・・了解≫
≪カリカリしなさんな。今回は戦争しに来たわけじゃない。それに・・・たまには戦場から離れるのもいいだろう?≫
そんな無線を聞き流しつつ、隊長機は首を回し、目・直感を駆使し周辺を索敵する。すると後方の下方に反射光を見つける
≪・・・!≫
≪た、隊長!?≫
激しくバンクを振り、スパイラルダイブでそれに向かう。Gを感じつつ、両目に捉えた航空機を見て微笑む

第三章:灰色対漆黒

外伝: 血の代償・2

アナトリア 自由エルジア占領地上空 22:00
≪この野郎!墜ちやがれ!≫
≪レッド4!深追いはよせ!≫
≪五月蠅い南雲!!こいつだけは!≫
≪レッド4後ろだ!ブレイクしろ!≫
≪言わんこっちゃない!≫
南雲のSu-33はレッド4のF-15の後方に張り付いたmig-21を追った。だが、後方警戒しているようには見えない。それ以前に"人が乗っているように感じない機動"しかしていない上に、撃墜した敵機から搭乗員が脱出していない。まるでゴーストを撃っている気分だ。
≪・・・良し、ロックオン!≫
R-73がロックオンしたことを示す高いトーン音が響き、敵機を正面にとらえる。それでも敵は逃げようとはしない。いや、レッド4に極度なまでに張り付いている。あれでは発砲したら巻き添えを喰らう筈だ。逆にいえばレッド4の事を鑑みれば、撃つ事が出来ないほど近接している。しかし、撃たねばレッド4は喰われるのは必至だ。いくらかそのリスクを減らしての攻撃を考えた。
≪レッド4!左にブレイクしろ!レッド1FOX2!≫
レッド4は言われたとおりに左に急旋回を始めた。敵機もそれに喰い付いている。フレアを撒いているが回避のかの字も無い。
≪無理だ!食い付いて離れない!畜生!助けてくれ!たすっ――≫
ガキュ!ガガガガガッ!ドンッ!
≪レッド4!!≫
R-73が着弾するよりも早く、敵機の機銃弾がコックピットとエンジンを襲った。出力最大のままだったエンジンは火を噴き、フレアもばら撒かれていた事もありミサイルはそちらへと吸い込まれる
ボンッ!
近接信管が作動し、レッド4の機体は火の玉となり、地上へと向かって墜ちていく。
≪・・・ンの野郎!≫
南雲は速度を得たままその敵機に急接近、ミサイルの最小有効射程まで近づく。
≪墜ちろ!Fox2!≫
R-73が敵機に吸い込まれていく。だが、敵機は急降下して基地に向けてアフターバーナーで接近する。その先にはVADS(M61A1・20mmバルカン砲の砲身を使用した対空火器、バージョンにもよるが高速飛行する戦闘機に見越し射撃を加えることも可能)対空砲が弾幕を張る為に過剰と思えるほど撃ちまくっていた。しかし、基地にたどり着く前にミサイルは近接信管を作動させた。
≪やった!スプラッシュ・・・・!?≫
敵機は何を思ったのか、被弾してエンジン・被弾箇所から火を吹いているというのに機関砲でVADSと真正面から撃ち合った。普通なら脱出体制を整えるところなのだが・・・
≪突っ込んでくるぞ!退避!退避ーッ!≫
≪12番対空砲に敵機が突っ込むぞ!13番も退避しろ!巻き込まれる!≫
地上の悲痛な悲鳴、どうにかしてやりたいがこれ以上接近すれば自分も巻き添えだ。南雲は反転するしかなかった。だが、地上の対空火器を操る要員は昂奮状態で敵機を落とす事しか考えられないのか、退避しない。
≪何やってる!退避だ!退避するんだ!・・・・駄目だ!伏せろぉ!!≫
ドンッ!!
対空戦闘を指揮する高射中隊長が叫ぶ。南雲は首が金縛りにあったように、まるで動かせずに真っ直ぐそれを見た。敵機は12番VADSに直撃、操作要員の全身が千切れ飛ぶのが一瞬見えたが炎に包まれた。バイザーを下げ、空戦に集中する為に上空に上がった。
≪・・・何てこった・・・レッド1よりレッド中隊全機、損害報告≫
≪レッド4・6・8・9・12が被撃墜、2・3・7が被弾しています。敵機は残り2機ですが、撤退する気配はありません。現在確認できている敵機ではありますが・・・!?何だこれ――≫
報告していたレッド5の機体が突然火の玉と化した。
≪敵の増援だ!・・・ウワァ!≫
レッド13が叫ぶが、此方も同様に被弾する。
≪何だ!?何所から・・・!・・・・嘘だろ・・・・?≫
レーダー画面を見て愕然とする。敵機の高度は75000フィート、到底此方の攻撃は届かない。まるで聳え立つ壁だ。
ビイイイイイイイ!
≪!クソッ!!≫
MWS(ミサイル接近警報装置)のヒステリックな警告を受け、チャフを撒いてかわそうとする。ECM(電子妨害装置、電波をを妨害する電波を発する。これの対抗手段にECCMがあるが、一定の周波数の妨害を行なう為に平時に於けるエレント※電子情報収集※が重要になる)も最大出力にした。だが、それは逆効果であることに気が付いた。最近のBVR対空ミサイルはECMを探知し、そちらに向かう様になっている。即座にECM出力を下げ、ミサイルに平行になるようにレフトターンし、さらにインメルマンターンをする。主な対空ミサイルに搭載されるドップラーレーダーなら進行方向と向かってくるミサイルとの角度が水平方向に垂直ならばそれをターゲットとは捕らえないのだ。さらにインメルマンターンの頂点でチャフを散布し、自機がチャフの雨の中にいるように見せかけた。
ドンッ!
≪クッ!≫
ミサイルは直ぐ傍で起爆したものの、大したダメージは無かった。だが、レッド中隊は南雲を残し文字通り全滅した。
≪レッド中隊は全滅状態だ。ブラック中隊、そちらはどうか?≫
≪此方も攻撃を受けて5機喰われたが、まだ10機いる。大丈夫だ、まだ戦えるよ。敵機は・・・・引き揚げるみたいだな。距離を取っている≫
≪・・・・了解、基地に先導する≫
残存機を纏め、基地へ帰還しようと高度を下げ始める。長かった夜の邀撃戦闘が終わった。と、誰もが安心していた。その時ブラック2のSu-27SMの警報が鳴った。レーダーに反応があったことを示す警報だ。
ピーッピッピ!
≪・・・マジかよ・・・全機!後方警戒レーダーに感!高度38000!6時方向!距離15nm!まったく気付かなかった!ロックオンされている!ブレイクだ!ブレイクしろ!≫
操縦桿を一気に捻り、左に旋回しだすと同時に全機に警告を発する。
≪何だと!?こっちのRWR(パッシヴ式のレーダー波警報装置、レーダー波を拾うと反応する)には何も・・・MWSに感!?ミサイルだ!畜生まったくRWRに反応無かったぞ!何時の間にロックオンされたんだ!≫
一瞬の遅れを取った編隊は、迫ってくるミサイルを確認してから回避運動を取った。その瞬間、既に頭上にミサイルが見えていた。編隊の200m手前で自爆し、曳光弾か照明弾の様な何かをタコの足の様に広がる。それは先頭の南雲とブラック1と回避行動を早く取ったブラック2には見えなかった。
≪何だこれは!?≫
≪主翼に絡みついた!?・・・火だ!機体に火が点きやがった!消火装置が作動しないぞ!≫
≪右エンジンに何かを吸い込んだ!訳がわからん!どうなっている!?右エンジンが異常燃焼を起こしてやがる!≫
≪何だこれは!機体に纏わり付いて来るぞ!!≫
僚機は困惑し、機体に絡みついた"光る何か"を振り落とそうとするが、深刻な事態になったことが理解できていない。"それ"は燃える黄燐で、常温ではショックで自然発火するものだ。炸裂するまで冷凍保存されていて燃え尽きるまで2~30分程かかる薄い楕円状の塊だ。しかも中心には磁石があり、金属製の物体に触れると800ノーチカルマイルの風圧にも耐えられるほどの磁力を持つもの入っている。黄燐は金属片(紫燐は黄燐に鉛を入れて加熱する)が混ざられており、磁力はそれを通じ、金属性物体に張り付くと言う代物だ。
≪駄目だ!まるで消えない!畜生!電気系統が全滅したぞ!≫
一度燃え出した黄燐は風圧では消せない。急激に冷却するか、水に入れなければ駄目なのだ。しかも戦闘機ほどの高速性を持つものが高速で飛ぶと空気抵抗によって加熱される。(戦闘機の速度がマッハ2~2.5の間で留まっている原因はこの空気抵抗による機体の発熱。いわゆる"熱の壁"と呼ばれるものだ。戦闘機を製作・製造するに当たっての3つの壁とは音の壁(機体設計時における空力設計)・熱の壁(耐熱性と高い強度そして軽量の材質)・金の壁(国力に合ったコスト)と呼ばれている)
≪主翼が・・・助けて!助けて!!助けて!!!たす―――≫
≪嫌だ!嫌だ!嫌だぁ!こんな・・・こんな終わりなんて嫌だ!誰k――≫
≪なんて事だ・・・≫
≪フフフ・・・戦闘機乗りのくせして空中でバラバラになるのがそんなに嫌か?≫
≪!?≫
味方が空中で爆発する中、敵からの通信が流れ込んでくる。どうやらオープンチャンネルのようだ。
≪てんめえ・・・・≫
≪かかって来いよ、この空は我々の物だ。貴様等にやっていては汚れる≫
  ブ
≪打ち殺す!そこを動くんじゃねえ!!≫
≪ま、待て!挑発に乗るんじゃな・・・≫
ブラック2が大声を張り上げて敵機に猪突する。
≪お馬鹿さんだなあ・・・エースブレイカー、"二発目を突っ込ませろ"≫
視界の端に何かが映った。月明かりに照らされた蒼い何かがブラック2に殺到する
≪!?ブラック2!ブレイクしろ!≫
≪あ゛ぁ!?何――≫
ゴキュッ!!
≪ブラック2!≫
それはブラック2のSu-27のコックピットを一気に貫通した。ブラック2を貫いたそれは、空中から突然湧いて来た様にも見えた。
≪魔弾・・・!?≫
ブラック1の零した言葉、その直後彼の機体もその蒼い妖しく光る何かに肉薄していた事に気がついた。それは自身と平行するように滑空していた。
≪三発目、攻撃≫
ボッ
≪!?≫
それは敵の声に応じるかのごとくモーターを作動させ、此方に突っ込んで来た。
≪――馬鹿な≫
ブラック1の状況を理解しようとしていた思考はそこで途切れた。ミサイルの弾頭がブラック1の肉体ごと引きちぎったのだ。
≪何だ・・・これは・・・≫
一人残った南雲はいきなり行動不能になった僚機を見て愕然とした。
≪驚いたろ。まさか"ミサイルが空中で待ち伏せ"しているとは思うまい≫
2段推進装置を持つ零式奮進弾、射程を犠牲にするが一段目推進装置を使い切った後にそのまま敵から距離をあまり取らずに滑空させ、母機の指示で2段目を作動させそこでシーカーを覚醒させて攻撃する。高度なAIが搭乗員の指示を受けるまで待っていたのだ。
≪四発目、攻撃≫
≪!!≫
咄嗟に回避行動を取るが、何も起こらなかった。
≪何の真似だ・・・・?・・・!≫
基地上空にあの凧の足が拡散していた。そこは、弾薬庫の真上だった。
≪まさか・・・≫
≪何だ・・・これは・・・≫
≪火だ!弾薬庫に火が点いたぞ!≫
≪消化班急げ!早くしろ!!≫
地上が慌しく動く。だがそれよりも早く弾薬に引火した。
ドン!!
弾薬が炸裂し、消火しようとしたりしていた地上の人間は殆どが火に消える結果となった。その爆発は滑走路まで届いた
≪これでお前の帰る場所はなくなったな。さあ、どうする?どうするんだ?≫
≪・・・てめえ・・・≫
スロットルをA/Bに叩き込み、一気に迫る。敵機も増槽を落として此方に迫る。
≪墜やがれ!FOX2!FOX2!≫
2発のR-73を放ち、敵に向ける。後残っているのはR-73が1発だけだ。
≪五発目・六発目、防御迎撃≫
はっきりとして来た敵のシルエット、F-4のシルエットの左右から蒼い何かが突っ込みR-73の目の前で起爆した。その破片と球体状の小さな鉄球がR-73のシーカーとカナードを破砕し、爆風で本体が大破した。
≪まだまだァ!FOX2!FOX2!≫
HUDの数字が1.5マイルを示した瞬間に最後の一発を放つ。
≪七発目、防御迎撃≫
今度は敵の下方から蒼い何かが発射したR-73を突き上げるように突っ込み、直撃し爆発させる。
≪んにゃろう!≫
≪フッ!≫
爆発を煙幕代わりに敵機はそのまま突っ込んで来る。此方が機銃を放つ直前にバレルロールを決めて、攻撃をサラリとかわす。相手はかなりのできる。旋回半径を抑えつつ、円周のように回り続ける。その瞬間、F-4は何かを投下していた。しかし、南雲は頭に血が上っていて気付かない
≪逃がすものか!≫
≪・・・・≫
南雲は完全に敵が中途半端な数のAAMしか撃っていない事に気が付いていなかった。じきに南雲のSu-33が敵機を捉える。敵機の動きは少し緩慢になっていた。
≪もう少し・・・もう少しだ・・・!よし、ドンピシャ!・・・ふざけやがってこのクソヤロウ!≫
ガンレティクルに収まり、後ろを取った心の余裕からか、直ぐには撃たずに攻撃する直前で相手は静かに言った。もし、この僅か0.5秒程度の間が無ければ、確実に撃墜できていた
≪八発目、攻撃≫
≪・・・!?≫
突如、右下方からの圧迫感を感じた。殺意を感じ取ったのだった。とっさにA/Bにスロットルを入れる。と同時に左にバレルロールするよう操縦桿を左手前に引いた。
≪駄目だ!間に合わない!≫
止む終えずイジェクションレバーを引いた。
≪!近すぎる!自爆させろ!エースブレイカー!!≫
脱出する直前に敵の声がスピーカーに響いた。直後、脱出時の加速Gで気を失った。
ドオン・・・
パラシュートが開くと同時に、爆発音が聞こえた。真下で自分のSu-33が火を吹いて墜ちて行く。
「くそっ・・・」
南雲は自身の心の余裕から生んだ隙を恨んで歯軋りした。敵機は煙も吹いていないが、撃墜確認もせずに帰還した

1月11日 08:25
「・・・!」
刹那は病室で目が覚めた。否、気がついたと言った方が正しい。ガバッと起き上がる
「ああ、気が付かれましたか。すいません、ドクターを」
「はい」
「・・・!!・・・!?」
ここではじめて自身の異変に気づいた。いくら声を出そうとしても、出てくるのは呼気ばかりだ。
「隊長、無理しないでください。あなたは首に重傷を負っていたんですから。あと2mmで頸動脈でしたよ」
「!?」
咄嗟に首に触れる。そこには医療用の包帯が巻かれていた。そこでようやく昨夜起きたことを思い返す。そう、最後の一機を撃墜する直前にあまりにもその距離が近かったのだ。その内の破片が自身の首の気道を声帯ごと掻っ切ったと言う事らしい。エースブレイカーの記録からその瞬間に刹那は爆風で気絶していたそうだ。風防の半分以上が割れていたとその部下から聞く
「はい、無理しないで下さいね。ちょっと眩しいですよ」
ドクターが駆けつけ、ライトを両目に当てる。次に脈等を測り、異常がない旨を看護師に告げる。刹那はドクターの腕をつかむ。
「ん?何か?おい、君。何か書くものを」
看護師からメモとペンををもらい、サラサラと書ききる。

声は戻りますか?(要注:人工声帯以外の方法で)

帰ってくるのは無常の声だった
「・・・無理です。あなたの声帯はほぼ完璧に破壊されています。回復は不可能です」
溜息を吐きつつ、さらに書いて渡す。

退院は何時になりますか?

「採血などで異常が見られないのであれば、傷の回復具合を見て抜糸して2週間後にでも。他には?」
刹那は首を左右に振った。
「必要ならば人工声帯を用意しますが・・・?」
もう一度刹那は首を振り、メモに書いて渡す。

無用です。私の代弁者ならいますから

「解りました。もう歩かれても大丈夫ですよ」
ドクターが消えた後、刹那はメモを書いて部下に渡した。

作戦はまだ終わっていない。地上軍の支援に部隊を回せ。編成・指揮権は貴官に託す。

「・・・心得ました」
部下も消えた後に、刹那は部下の置いて行ったノートパソコンを持って屋上へと向かった。
(さて・・・声が無くなった御陰で面倒が増えたな)
彼は別に声を失ったことを悲観したりはしない。元より覚悟の上だった事が来ただけの事と重大視していなかった。
(別に声が無くとも、愛機から離れていようと、戦える)
ノートパソコンからインターネットにアクセス、愛機のAIはこのネットの海の中にも存在する。そこを探り出し、数字にして200桁に上るパスワードを入力しアクセスする。
(さてと、好きなだけ暴れてこい)
操縦をAIに渡し、作戦目的を与える。さらにIFF(敵味方識別装置)のコードも入力すればあとは勝手に掃除し始める。それらを入力し終わり、閉じようと思った時に気づいた。
(そう言えばこいつの直接操作時は音声での指示だったな・・・。手でやるにしたってとてもじゃないが時間がかかりすぎる。どうすべきか・・・)
それを解決する方法を考え付くまで、1日かかった。

Fin

外伝: 血の代償・1

ユージア大陸沖 デラルーシ領空 11月24日 19:25
ボーイング777の静かな機内でトンプソンは熟睡をしている。明日は最後の一人、ラリー・Pixy・フォルクに会う為にぐっすり寝ている必要があったからだ。刹那は到着が遅れている事に多少苛ついていた。
「到着40分遅れ、か。出発も30分遅れだったが・・・・」
原因は国境に於ける紛争、正確にはISAF軍とエルジア残党の戦闘により治安出動がなされたからである。しかも戦火は日に日に拡大、空港が迫撃砲攻撃を受けたとのニュースを受けたのが1週間前だった。刹那にとって取るに値しなかった紛争は思わぬ所で彼の妨害をした。彼は迷わずARC二個分隊を送り込み、戦線を押し戻して、戦線が国境で落ち着くまで出発を待っていたので唯でさえ不機嫌だった。
(ISAFが治安出動してるとなると厄介だな・・・ラリーは確か第45傭兵師団の所属だ。これは戦線まで出張る必要があるかもな・・・・?)
窓に目をやった瞬間、白い物体が急接近してくるのが見えた。
「ミサイルッ!?」
ドンッ!!
機体は激震し、シートベルトをつけず寝ていた乗客や歩いていた客室乗務員が吹っ飛ばされ、壁や天上に叩きつけられる。だが、胴体に大穴は開いておらず左エンジンが大破しただけのようだ。しかし、二基しかエンジンのない機体は大きく傾いた
「な、何だ!」
「うわあああ!!」
「助けて!神様!」
「きゃあああああ!!」
客室内はパニックに陥り、トンプソンもパニックに陥った一人だった。しかし、刹那と操縦桿を握っていた副操縦士だけは冷静だった。副操縦士ははどうにかして水平に近い形を取ろうとしていた。しかし彼が機長に目をやると、機長は風防を突き破ってきた破片で脇腹を大怪我していた。刹那はコレまでの経験と直感を信じ、コックピットに向けて立ち上がった。この事態に対応できるパイロットは、民間航空の者では限界があるからだ。幸いにして直ぐにファイナルアプローチを取れる位置だったのをミサイルが当たる直前にモニターでチェックしていた。高度は1万フィートを切っている
「冗談じゃないな、まったく・・・・」
「お、お客様!危険ですからお立ちにならないで!」
「私は戦闘機パイロットだ。コックピットに案内しろ。さっさとしないとサメに食われるか、衝撃で圧死するか、それとも焼け死ぬかの三択以外ないぞ」
「・・・・は、はい!」
軽傷の客室乗務員に、航空操縦士の免許を見せながらハイジャック紛いの口調で言う。いつもの目で相手を見るが、それは人殺しの目なのだ。気圧(けお)されて客室乗務員は指示に従った。コックピットに入ると、直ぐに状況を確認する
「操縦士か?機長を下げて手当てしろ」
「誰だ!ここは立ち入り禁止だぞ!それ以前に状況がわかっているのか!」
「機長をどけろ、スコーク7700は出してるのか?メーデー宣言は?」
「人の話をきk――」
「してるかしてないかハッキリしろ。私は戦闘機乗りだ。こういう状況なら慣れっこだ」
機長を機長席から下げると、そこに座り、発電バッテリー装置を切り、スロットルレバーを第一エンジンをOff、フュエルカットオフ、バルブクローズの一連の作業をこなし、フラップ角を15度から30度に変更、第二エンジン出力を上げ、ギアを下げた。副操縦士は重くなった操縦桿を必死に動かすので精一杯だった。
「ラダーを右に蹴れ、機体は左に傾いているからな。降下率も一定にしろ」
「やってるよ!クソッ!操縦桿が重い!」
刹那はトランスポンダの周波数が7700でない事に気付き、変えながら管制塔に緊急事態宣言を行なう
「オールステーション、オールステーション。メーデー・メーデー・メーデー、此方はデラルーシ航空84便。国籍不明機による攻撃を受けた。これより緊急着陸を行う、誘導頼む」
≪84便、此方デラルーシアプローチ。攻撃を受けた、了解しました。被害報告お願いします。Over≫
「おい、何をやっている!?」
「見ての通りさ。緊急通報をやっている。そっちはADIと操縦桿に全力を注げ。・・・・デラルーシ・アプローチ、此方の被害は甚大です。被弾により第一エンジン大破、機長が破片で重傷。乗客乗員に負傷者多数、フライバイワイヤ系統が1本を除いてダウン。ILSは無事だ」
副操縦士が奇異の目を向けるが、それ所ではない。迷わず損害を報告する。
≪第一エンジン大破、乗客乗務員が負傷多数、操縦系統損傷、了解。消防車・救急車を待機させ滑走路20R、Lを開けておきます。どちらでもどうぞ。2分後に0-2-0へ右旋回してください≫
「84便了解、・・・手伝うよ。堕ちるのは此方としても御免だ」
「・・・頼む」
二人で操縦桿を強く傾け、副操縦士が目いっぱいラダーを蹴る。
「ダメだ!これ以上は・・・ッ!」
副操縦士が操縦桿と格闘するが、それでも右へのバンク角は取れない。バランスが悪すぎる。刹那は追撃の可能性をふと考え外を見る。僅かな光を見た直後、刹那は操縦桿を逆に切った
「!?おい、何やってるんだ!逆に切るんじゃない!」
「撃ってきた戦闘機が止めを刺しに来た。無理にでも旋回しなければ殺られるぞ」
「何だって!?うおおッ!?」
急激な横殴りのGから下方向へのGへと急変する。
「バ、馬鹿!それ以上やったら分解するぞ!!」
「ボーイング製の機体はエアバスやイリューシンよりも頑丈に作られてる。3Gまでなら大丈夫だ。ただ左翼が千切れない事を祈るばかりだが」
刹那は第二エンジンの出力を最大にし、左にナイフエッジ、150度3Gターンで飛んできた敵機と放たれた機関砲弾をかわす。高度を犠牲にしつつ、速度も上手く殺して飛ぶ
「か、かわした!?」
「今のは挨拶代わりだ、もう一回来るぞ」
「え!?」
「オールステーション、オールステーション。此方デラルーシ航空84便。緊急連絡、国籍不明機はSu-33。デラルーシ・アプローチ、ISAF空軍への通告はどうした」
≪通告は完了していますが、ETA19:37です。それまで持たせてください。一次レーダーで国籍不明機と84便の現在位置を確認しました。そちらを追っているようです≫
「84便、Roger。ちょっと無茶をやるぞ。奴を空港から引き離す。アレがミサイルを空港に向けてはなったら大惨事って言うレベルでは済まない」
機首は下を向いたままだが、機体の姿勢は地面とは逆さまの状態だった。そのまま操縦桿を左に傾け、バレルロールする。
「こいつは旅客機だぞ!あんたは戦闘機乗りらしいけどもっと丁寧に――」
「来るぞ!」
海面スレスレで機体を立て直し、フラップ角45度にエンジン出力を最大にセット。右にラダーを蹴ってバランスを整える。それを同時にやっている間に、Su-33は後方に回っていた。速度は270kt、対地高度は1200ftだ。ラダー左を蹴っ飛ばし、右を緩める。直後曳航弾が機体の右を通過した
ヒュンヒュンヒュン!
「うわわ!撃ってきた!撃ってきた!」
≪84便?応答してください!84便!?≫
「此方デラルーシ航空84便、現在敵戦闘機が後方に喰らい付いている。現在位置は・・・デラルーシ空港から0-1-2、距離12海里!高度1200ft、方位3-4-6に向けジグザグ飛行中!奴は撃ってきた」
ガタガタ操縦桿が揺れ、失速を警告してくる。エンジン一基では速度は得られない。持てる揚力を最大に生かし、出来る限り高度を稼ぐ。
(落とす心算ならミサイルを撃っている筈・・・何故撃たん?)
ラダー右を蹴り続ける足に力を入れて、さらに押し込み、左を緩める。また機体のバランスを取った。気が付けば後方の敵機は消え去っていた。
≪此方ISAF空軍、コールサイン:レイピア17、84便無事か?≫
「此方84便、無事です。国籍不明機は何所に?」
≪影も無い、何所にもいないよ≫
「―――84便了解。・・・・着陸態勢に入るぞ。副操縦士、ゆっくり左旋回しろ」
「あ、ああ・・・」

19:50 デラルーシ航空84便はデラルーシ国際空港に着陸した。

「エルジア残党最後の足掻きか 昨日、デラルーシ国際空港の北東20km沖でデラルーシ航空84便(オーシア・ ボーイング777型機〔攻撃を受けた機と同型機〕)が国籍不明機による攻撃を受けた事をデラルーシ警察が発表した。機体は左側のエンジンが大破したものの空港に着陸に成功したという。怪我人は出たが乗員乗客117名全員命に別状は無し。現在の乗員・乗客から任意で事情を聞いているが、二名の乗客が行方不明となっている。戦闘機のミサイル攻撃の後に戦闘機からの機銃による攻撃を受けた。との証言や機体が下向きに急降下しながら旋回して戦闘機の銃撃を避けたり、海面ギリギリで機体を横滑りさせて銃撃をかわしたとの証言もある。オーシア・NTSB(国家運輸安全委員会)は調査員を派遣し損傷具合やフライトデータレコーダーやコックピットボイスレコーダーを確認すると発表した。政府筋からはデラルーシのエルジア残党軍は国境付近まで追い詰められており、状況を打開する為の窮地の攻撃との見解もある」

ノースポイント経済新聞 2005年11月26日一面トップ・国際面記事より抜粋

デラルーシ国境 12月26日
「終わったようだな」
新聞を眺めつつも、64式小銃を傍に立てかけ周囲への警戒を解かない刹那はインタビューの質問と答えのやり取りが聞こえなくなった事を感じる。
「どうだった?ラリーフォルクへのインタビューは」
「お陰様で、これで全員です。有難う御座いました」
「気にするな。手付金65万、完了時には35万、悪くない仕事だった。それより、、これを見ろよ」
刹那はトンプソンに新聞の記事を見せた。トンプソンは顔が少し青ざめている。
「やっぱり逃げなかったほうが・・・」
「お前は良いかも知れんが、私の方はどうなる。引っ張りだこにされるのが落ちだ。好き好んで英雄になるほど私は馬鹿ではない。自分から宣伝するのは政治屋、会社と警察の3つと相場は決まっている」
刹那は苦笑しつつも、銃を取って立ち上がる。トンプソンも成程、と肩をすくんで見せた。
「ああ、そうだ。これを片羽に。大事な事を忘れるところだった」
「はあ・・・解りました」
カサと渡された紙を開けると中には

鬼神の事を知りたければ此処に

オーシア・オーレッド・第12番地の4階建て廃ビル 2007年1月15日 18:45 404号室

「これって――」
「君は行かない方が身の為だ。そいつは企業秘密なんでね。その場所に覗き見たら・・・命は無いぞ」
刹那は静かに警告する。表面は何ら変わらない表情だが、内面に何かを感じた
「・・・解りました」
「物分かりが良くて宜しい。サッサと渡してここから去るぞ」
トンプソンがラリーにそれを渡しに行くのを眼で追いつつ、刹那は新聞を破り、燃やして捨てた
「英雄なぞ・・・"反吐が出る"」
英雄などという称賛も、彼の価値観にとっては自らを縛る鎖にすぎない。戦場に生きる人間は、戦場で死ぬ。それ以上でも、それ以下でもない。それが出来ぬ者はまた生き地獄へと歩み続ける。戦場は例えるならば、そう・・・

体験した事の無い者にはこの上なく甘美で、この上なく死に近い、パンドラの箱。そして限り無い災厄の先の最後の希望とは、生き抜く事なのだ。

誰かが言った

「パンドラの箱の唯一の悪い所は、人に一筋の希望を見せた事である。」

箱を開けた者が"死"と言う災厄から逃れられる方法とは二つある。

1.即座に戦場から離れ記憶を封印する

2.戦場を戦い抜き、自らを束縛する者の目的を果たした上で生還する

だが、戦いに向かう者は逃げ出してはならない。それは古今東西決して変わらぬ事である。破れば罰が待っており、死が待っている事もある。つまり、それを回避した上で災厄から逃れるには戦い抜く事しかない。そして、その希望を攫み取った者の先にはまた戦場に連れ戻そうとする人殺しの自分がいて臆病者の自分がいる。人はまた選択する。

1.もう一度パンドラの箱を開ける

2.人殺しの自分を畏れ、それを封印する

前者を選択した者は、二度と娑婆の空気を美味しく感じる事はない。刹那は迷う事無く前者を選択した。何故なら、彼なりの[世界平和]を達成するには仮令"目の前にどう見ても敵いそうも無い敵が立ち塞がろうと、到底飛び越える事が出来ない様な崖があろうと、決して、何があっても"命を惜しんではならないからだ。そうやって数多の戦場を戦い続けて来た彼は、とうとう娑婆の価値観すら超越して一種の悟りを開いたのだ


「不明二名の捜索は中止 去る2005年11月24日に発生した[デラルーシ航空84便攻撃事件]において、エルジア残党が行方不明になった旧エルジア軍機が使用された事でISAF軍は本格的にエルジア軍残党を掃討する事が9日ISAF軍が公表。この残党掃討作戦名を「カンティーナ」と命名。ユージア大陸全土のISAF陸・海・空・海兵隊の4軍に掃討作戦をISAF総司令部は指示した

なお、当事件の被害者のデラルーシ航空777型機84便と乗員乗客117名の命を救った自称戦闘機パイロット含む2名は行方不明のまま、ISAFとデラルーシ警察が共同で捜索に当たっていて、2名の乗客の捜索に傾注していた。

されど2005年 12月3日に不明の2名の乗客の捜索は中止される」

オーシア・タイムズ 2005年12月10日の国際面の小さな記事より抜粋

「ユージア大陸に激震! エルジア残党が[自由エルジア]を名乗り、15日、ユージア大陸全土の戦闘機工場、軍港などを襲撃。統計によると死者は485名、負傷者は少なくとも1450名以上。エルジア軍決戦兵器メガリスを占拠したエルジア軍残党との繋がりをISAF軍情報本部が調査中。政府筋によれば自由エルジアを統率しているのは旧エルジア空軍将校との事、それに大陸各地の残党が呼応したものと見られる。なお、自由エルジアは先の[デラルーシ航空84便攻撃事件]の犯行声明を出しているとの情報も本誌に匿名で寄せられている

なお、自由エルジア掃討作戦カンティーナを円滑に遂行する為に予備役登録していた大陸戦争の英雄[メビウス1]を現場復帰させる事をISAF軍が表明。本格的に自由エルジアを追い詰める事を強調した」

グリースメリア・タイムズ 2005年12月16日 国際面記事及び一面トップの記事より抜粋

アナトリア国際空港 2006年1月10日 17:45
「よくぞ来てくれました!ラインハルト中佐!」
一人の黒づくめの男が到着ゲートを通ってきた刹那に握手を求めながらにこやかに歩いてきた。しかし、刹那は苦笑しながら軽い敬礼だけを返す。
「今日からは一介の空軍少尉です。一国の空軍将軍である貴方がそう易々と握手を求めるものではありませんよ。私の機体は?」
「ああ、勿論届いてますとも。貴方の部隊と共にね。いやあ、本当に助かります。我が国の軍事力はひ弱で、ISAFにも加盟しておりませんからな」
「それでも我等を雇う金額はあったと言うのだから笑えるものだ。高い買い物とは思わなかったのか?」
刹那の部隊を雇うには、刹那の言い値で決まる。刹那にとって重要(どちらかの国の軍事力を削る必要がある場合や邪魔な人物が敵にいる場合)は非常に安く(中には1セントと言うものすらあった)、関心が低ければとても高い(今回は20億ドル)と言った具合だ。PMCや傭兵団・外人部隊からは「戦争代行人」(一部からは死神代行人)と呼ばれている。(錬度が非常に高いだけではなく、必要とあらば大量虐殺も辞さず、自己完結能力※独自の補給・情報網を持っているという意味※を持ち、そこら辺の中小国を2、3国に匹敵する戦力を持っていることから)と呼ばれていた。
「いいえ?まったくそう思っておりませんよ。反逆者共を討ち滅ぼすのであれば、安いものです」
刹那はムッとする。所詮はこいつらの考えはこの程度か、と。社会主義国の人間は保身の為には金を出し惜しみしない。何故なら組織の首脳部は保身と情報操作さえ上手く行けば金は腐るほど手に入る。常に失脚の恐れがある資本主義とはまったく異なる考えだ
「この地に展開する自由エルジア軍の総兵力は?」
「2万程度です。我が軍は10万の兵で包囲しておりますが、敵に制空権を取られて苦戦しております」
「・・・いくら社会主義国といっても、ISAFからの御駄賃は必要なのかね?」
「何ですって?」
「そちらの意向を知らないとでも思ってるのか?所詮は金が欲しいだけだろう?自分達を潤わせるだけの。戦争前はエルジアにべったりしていて、旗色が悪くなればISAFに情報を流して終戦後は協力する。小国は大変だな」
ククク・・・と哂いながら利用される小国の痛い所を突く。
「そうでもしないと生き残れんとですよ。あなた方だって、他国に利用され、そして生き残る為に利用しているでしょう?」
「利用される?ククク・・・不和の種をまいて利用しているだけだ。金を得る為に血を浴びる事の何所が悪いのやら・・・さて、仕事につきましょう。愛しい戦場が私を待っている」
"時計は銃弾により既に壊れ、彼(か)の者の時は戦場にいる間は動く事は無い"

"されど、彼の者は戦場から離れる事は無い"

"だからこそ、彼の者は最狂で、最凶で、最強で、無敵で、最悪の人種なのだ。"戦争狂"と言う人類は"

アナトリア 自由エルジア軍基地 21:45
「状況はなお最悪・・・かつての君の母国も冷たくなったものだ」
「・・・言うな」
南雲はかつての上官について行き、自由エルジアに入った。そう、彼が84便襲撃事件の犯人でもある。当時の自由エルジアの空軍力は非常に脆弱でまともに動かせる戦闘機は彼の戦闘機しかない上に、既に友軍が包囲されていた以上はどうしようもなかった。ISAFの目を逸らす為に止む無く民間機を攻撃した。結果としてISAFの目が国籍不明機捜索及び不明乗客に傾注し、部隊の40%程度がうまく逃走し、自由エルジアに合流できた。勿論、84便を落とそうとはせずに損傷させる事だけが目的だった。ただし、"相手の機体が中破する程度に"というかなり無茶な指示付きで
「聞いていると思うがISAFはあのメビウス1も戦線に投入したそうだ。・・・・これから我々はどんどん厳しくなる」
「・・・ええ」
愛機に寄りかかり、上向きながらも答える。その時、空襲警報が鳴った
≪彼我不明機、方位3-2-0、高度25000より速度1100ktで接近中!戦闘機は緊急発進(スクランブル)せよ!!繰り返す!――≫
「!航空機、しかも1100ktだと!?馬鹿な!この国の空軍機は全て・・・!ま・・・まさか・・・」
まさかISAFが―と南雲の口が続く前に5分待機していたスクランブル機が出撃した。接敵まで10分を切っていた。パイロットとしての直感、そして生存本能が彼を出撃準備へと急がせた。
「上げられる機体は全て上げろ!」

アナトリア 自由エルジア占領地上空 21:50
≪"魔弾の射手"の御一行の到着だ。セイバーリーダーよりセイバー全機へ交戦するぞ≫
≪OK、セイバーを援護する。フェニックス各機、高度75000に降下するぞ≫
10機のMig-21が超音速で敵地を侵攻する。だが、搭乗員ははるか後方でフライトシュミュレーターのような画面で航空機を操作しているだけだ。さらに高度85000にA-12(SR‐71の迎撃機)が15機がウェポンベイにAAM-4改を搭載し、同じく超音速で飛行する。ただしこちらは搭乗員が乗っている
≪お客さんだ、ターゲットαから5機飛んできた。セイバーリーダーよりセイバー全機へ、良い経験になる。我々の機体は"お釈迦にしても構わん"そうだ。一機でも多く屠れとのお達しだ≫
≪了解、良い所は取って行くからなあの人は、まあそんな所が良いのだが。セイバー104交戦!≫
セイバー隊の彼等は戦場に立つに値しない[ひよっこ]だ。機体は旧式で安いモノを使わせる。しかも此方の人的被害は皆無、さらに当事国に燃料代・整備代・人件費その他諸々を100%負担させるので全く"財布"にダメージはない。経験を積ませながら、一機でも多く減らさせる。その後に本隊が制圧する。これが刹那にとって"関心の低いどうでも良い紛争"に対する戦闘方法だ。因みにA-12の航空隊は、制空権の確保のみを目的としているのでセイバー隊が全滅したら本隊の到着まで敵機を攻撃し続ける。
「全機、ブラックデスサイズだ。おまけぐらいは残しておくれよ。セイバー隊が戦闘速度を下げ始めた」
≪解ってますよ。フェニックス各機へ、攻撃待機だ。この高価な機体は壊す訳にはいかん≫
「セイバー各機、敵機を抑え込め。高度10000、マスターアームON。こちらで火器管制を受け持つ。敵機をちゃんと狙えよ」
≪セイバーリーダー、ラージャッ≫
本隊とはたったの1機、つまり刹那のファントムの事だ。今の所は無人操作の中継機としてセイバー隊の後方100nmで待機している
≪セイバー隊、敵機と接触しました≫
「宜しい、エースブレイカー仕事だ。セイバーのファイアコントロールを全てお前に渡してやろう」
MFDのチェックリストを淡々とこなし、あとはウェイポイントをゆっくり定刻どおりに通過するだけだ。
≪ブラックデスサイズ、フェニックスです。セイバー隊、攻撃開始しました。ミサイルの白煙が確認できます≫
≪不思議なものです、勝手にミサイルが飛んで行きましたよ。!来ました、セイバー102ブレイク!≫
旋回時のGなど機体の限界まで気にする必要はない。ある意味最上の無人機なのかもしれない。
「セイバー全機の状態は極めて良好だ。此方でも手に取るように戦闘の推移がわかる」
≪初撃は完璧ですね、損害ゼロです。撃墜2機確認≫
「だが、気を抜くなよ。被弾したら敵の基地に突っ込ませろ」
いくら刹那が[ひよっこ]と言うとしても、素質や才能は中々抜きん出ている奴しかこういった戦闘には参加できない。
≪105、あのMig-29を挟むぞ≫
≪了解、任せろ≫
強力なエンジンに換装されているこれらのMig-21は推力の為すがままに、機体の限界の8.5GまでかけてMig-29の背後に回り込む。
≪クソ!何なんだこいつらは!引き離せない!≫
≪レッド16、今から援護に向かう!持ちこた――≫
≪107、スプラッシュ1。脱出は未確認。流石正確無比のファイアコントロールだ≫
Gや戦闘の恐怖をあまり知らない[ひよっこ]に良いように弄ばれる[実戦経験を持つベテラン]。何も兵器に乗り込んで戦う必要など無いのだ。それに感情を持たぬコンピューターが正確無比の攻撃を繰り出す。
≪時代はどんどん変わっていく、人間が戦う時代はもう間もなく終止符が打たれるわけだな≫
フェニックスの誰かがそう言った。
「否、それは無い。人間とは革新的なモノへはまず恐怖を覚え、拒絶するものだ。まあ、餓鬼は例外だろうな。奴等の好奇心は時に訓練された兵士の索敵能力を大きく上回る」
≪・・・・確かに≫
そう、セイバーの連中の多くはまだ14~15程度だ。未だ好奇心は大人より多くある。
≪セイバー108、被弾しました!≫
「!・・・了解だ。そちらの操縦を引き受ける」
脱落した友軍機の操縦をAIに引き渡す。AIは即座に機体を急降下させて敵航空基地のハンガーに突っ込ませた。内部にいた整備兵やパイロットたちの命を奪い、戦闘機5機とその武器弾薬、燃料を徹底的に燃やし始めた
「セイバー108、ダウン。今夜のお前らの食事は108持ちだな」
≪・・・・解ってますよ≫
苦笑交じりでやられた相手に言う。

2に続く

 

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