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第四十五話:死は風に乗って

ファーバンティ郊外 エルジア軍試験飛行場 18:50
・・・・コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
「・・・遅い到着だな」
遠くから響く戦闘音も恋焦がれるほどに嗅いだ硝煙の香りや重油やケロシンの鼻に付く臭いももう一切しない戦場から離れた飛行場で、刹那は嫌と言うほど聞いたエンジン音を聞いた。その機体は明らかにオーバースピードで滑走路に進入してきたが、30ftぐらいでコブラをかけて急制動し、見事な三点着地をした。
「ほぉ・・・さらにソフトがアップデートされていたか。まったく、"成長するAI"とは恐ろしい物だな」
機体の挙動を見て少し驚く。エースブレイカー(撃墜王撃破)と言う名のAIの最新型は周辺の状況を察知するだけではなくAI自身が戦闘技術習得を行なえるようにした、つまり「成長し続けるけAI」なのだ。しかも戦闘や訓練をしてる最中も自動でソフトを更新し続ける。滑走路上で反転し機体が止まると同時にキャノピーが開く。中には誰も乗っていない。乗り込むと後席に用意されていた耐Gスーツに着替えてJHMCSを軽量化、多数の戦術処理を出来るように改修したヘルメットを被り、マスクをつけてキャノピーを閉じる。

You Have Control Sir

MFDにそう出ると即座に操縦桿とスロットルレバーをチェック。計器類も全てチェックする
「I Have、さて帰るか・・・」
スロットルレバーをミリタリー出力に叩き込むとFE‐14エンジンが甲高い唸りを上げて機体を押していく。
80ktで全ての速度計をチェック、150ktで機首上げを開始し、200ktでフワッと飛び上がる。直後RWRから警報を受ける。ISAF空軍機が差し迫った事を示しているのだ。
「ECMミュージックオン、出力60%」
マスク内のマイクが拾った音声にAIは機敏に反応し、ECMを出力60%で作動させる。一旦RWRは静かになったが、また鳴った。ECCMを使ったのだろう。舌打ちしながらA/Bの最大位置のスロットルを叩き込み機体を方位2-7-0に向ける。エンジンの音が急速に変わっていくのをサイレンサー越しにも聞こえる。
ガシュン・・・ギュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
A/Bが正常に作動するのを確認すると、ハイレートクライムに入った。
「逃げられるかな?さっさと高度上げないと厄介だ」
兵装システムを立ち上げると、零式奮進弾が1発不足している事に気付いた。それで少しニヤつく
「X-02を葬ったか、ご苦労・・・・高度25000、速度320kt」
ハイレートクライムからポジティブクライムに移行し、速度を稼ぎにかかる。まだRWRの反応が敵機にロックされている事を示していて、刹那は思考をめぐらしていく。
(攻撃するか?・・・いや、交戦してる余裕は無い。逃げの一手で行くか)
燃料の残量から考えたら後ろから追ってくる敵機にミサイルを放って逃げる手もあるが、UNFの追手も考えなければならない。何故なら自分は脱走兵、しかも持っている情報はそこらの将校とは比べ物にならない。それならば地の果てまで刺客が来たとしても不思議ではない。それどころか接触してくる勢力も多い筈だ。自衛手段は少しでも多く確保しておかないとヤバイ事になる
≪・・・!―――!ブラックデスサイズ!聞こえているのだろう!?応答しろ!!≫
後方のISAF軍機が無線に割り込んできた。即座に無線の電源を切る。
(五月蝿しいんだよ。狗と交わす口などもう持っていない・・・・!!)
ビイイイイイイイイ!!!
MWSが悲鳴を上げて、搭乗員に警告する。
(・・・・構ってる暇は無いんだ。悪いがお遊戯はまた後でな)
スロットルをA/Bに叩き込み、機体を加速上昇させる。AI[エースブレイカー]が兵装システムにアクセス、零式奮進弾にセットして防御迎撃をスタンバイする。刹那は兵装システムへのアクセスを閉じるとAIに言い聞かせた
「・・・・その必要は無いよ、この程度のミサイルをかわせないで逃げられると思っちゃいない」
MWSから得た方位情報を後方警戒IRSTとレーザー測定儀にデータリンク、ミサイルの現在位置を補足させる。
「機種AMRAAM・TypeC・・・・距離20nm、高度34000降下中、速度870kt、方位0-8-7。被弾確率75%・・・回避行動に移る」
チャフをばら撒きつつ、速度を稼ぐ為に0Gで降下。降下角45度で操縦桿を戻す
「ECM出力95%、ラム・ジェットスタンバイモード・・・650kt、7500以上で作動開始」
コンソールを素早く叩き、MFDパネルに表示されたチェックリストを目で追いながら計器類をセットする。
「エンジン温度許容範囲内、燃焼室再点火開始、燃料タンク切り替え、タンク1&6バブル接続解放JP-7・・・オーライ。高度8400、速度720kt。ラムジェットエンジン始動開始。You Have Control」

I Have Sir

高バイパス比ターボジェットであるFE-14のエンジン音が急速に変化し、推力が増していく。ミサイルが後1kmに迫った時、AIに操縦を任せた機体は強大な推力の力任せに急速反転し上昇に転じる。刹那は機体の挙動に新兵の様な怯えと迷いを感じる。やや焦ったような機動だ。誘導抵抗により無駄に速度を殺している
「・・・・怖がるな。成長すると感情まで持つのか、こいつは」
クスッと微笑うとコンソールを再度叩き始める。エンジンの出力設定を変更し、リミッタを限定的に解除した。さらにグンと速度を上げていく。速度は上昇中にも拘らずに950ktを超えた。迫ってくるAMRAAMは失速し降下を始める。
「宜しい、I Have」

You Have Sir

刹那はスロットルレバーをA/B最大から2/3の位置に持っていった。巡航速度で飛ぼうと言う考えだ。とは言ってもラムジェットエンジンの巡航速度はマッハ2を優に越す。因みに同じ高バイパス比ターボジェットエンジン搭載機SR-71はマッハ3で航行できる能力を持っている。追跡はほぼ不可能だ。SAMなら話は別だが、タイフーン並にRCS(レーダー反射面積)を減らす為に全体の構造材にRAM塗料を塗っている。それにECMも強力であるのも加えられてECCMによって軽減されているにしてもレーダー画面のノイズは酷い
「次の手はどんな手だ?核か?それとも隕石を降らせるとでも?追いつけるものなら追い縋って見せろ」
速度が上昇するにつれて、高度もグングン伸ばしていく。
「・・・・まあ、この高度まで追いつける戦闘機・ミサイルがあれば見てみたいものだがな」
高度は既に5万フィートを超え、速度も910ktと言う超々音速でゆっくりと上昇中。ラムジェットエンジンの推力の御陰だった。ISAF軍機も海軍艦艇も撃つ事が出来なかった。何故なら相手の速度はSM-3並の高高度迎撃用ミサイルでなければ命中させる事は無理だったからだ。それにECMが加わり捕捉すら難しくなっていた。一応機内は2万フィートの気圧を保っているとは言えど、非常に寒くマスク無しでは息苦しい。
「・・・・・振り切ったな。フゥ・・・・・ッッ!?」
センサー類から敵機の反応が消え失せ安心した瞬間、撃たれた肩の銃創が燃える様に痛み出した。恐る恐るパイロットスーツを少し脱ぐと、止血パッドの効果も無く血はまだ流れていた。
「・・・・盲管銃創か。・・・・まずったな」
止血パッドを外して、銃創口を開いてみると弾片がまだ残っていた。しかも静脈が2本切れているのがくっきり見える。もしかしたら動脈も切れてるかもしれない。貫通銃創だと思っていたので、止血パッドだけで脱出していた
「良くもまあショックで心臓が止まらなかったものだな・・・・とりあえず抜かないとヤバイ。急がないと」
緊急時のメディックキット内の輸液や、ナイフ・メス等といった刃物も後席に設置されている緊急用戦闘脱出BOX(イジェクションシートに備え付けられている。脱出時にGPS追跡装置が作動する)の中だ


ノース・ベルカ 廃飛行場 20:10
「もう少し・・・もう少しだ・・・・」
これまで高空を超音速で航行し気象用ロケットの様に見せかけてオーシア軍やベルカ軍のレーダー網を掻い潜って来た。既に暗い中、ゆっくりと降下するファントムⅡはかつて自分が忘れられないかの男・・・・アントン・カプチェンコと最後の出会いをした飛行場への着陸体制を整えた。止まらない出血で意識は朦朧としかかっていた。
ドヒュッ・・・・ザアアアアアアアア・・・・・・
整備の行き届かないこの空港は滑走路上に雑草が生え、細かな砂が薄く積もっていた。それらを巻き上げながら刹那の機体は着陸した。
「ハア・・・・ハア・・・・」
後席から緊急手当て用の用具を取り出し、摘出・修復中に眠たくなるのを防ぐ為に麻酔せずにフラッシュライトを当てて消毒し切開する。
「ッ!」
カラン・・・
声にならないほどの激痛に耐えて弾片を取り出して捨てる。輸液を点滴しつつ、血管を修復し、傷口を塞ぎ再度消毒する。そして、痛み止めにモルヒネを一本打った。
「後は迎えを待てば良い・・・・しかし、モルヒネを打つと眠くなるな・・・・血圧が下がるからか・・・・」
瞼がどんどん重くなるが夜風でまた目が覚める。それを繰り返し、繰り返し・・・そうこうしてる内に夜風にも慣れたのか、体温が下がったのか何時の間にか眠っていた。

次に目が覚めたのは僅かに開けたキャノピーから風が入る愛機のコックピットの中ではなく、暖かいベットの中だった

ファーバンティ郊外 19:10
「ふう・・・体中がガタガタね・・・・」
脱出したメビウス1は目立ちそうな丘に向かって脱出時のGや空戦時のGで悲鳴を上げている体の節々を時々押さえつつ歩いていた。SARヘリの救護を待つ為である。
「・・・・?」
丘の頂上が見えてきた所で上空から一枚のハンカチが舞い降り、丘の頂上へと落ちた。陸の頂上に目を向けると人が二人立っていた。
(エルジア兵?・・・・いや、何か違う)
レッグホルスターからグロック21を取り出し、様子を見る。飛んできたハンカチを埋めて、二人は祈り、泣いていた。少年の着ているジャケットに見覚えがあった。
(あれは・・・黄色中隊のジャケット・・・航空雑誌で何度か見かけた・・・・)
グロック21のスライドを引き、初弾を薬室に送りセーフティーを解除した。出来る限り音を出さないよう気をつけたが所詮は射撃訓練で何十回しか撃ったの事の無くプロではない人間に以上の事を音を出さずにやって見せるというのはまず無理だ。さすがに気付かれた
「誰!?」
聞こえたのはエルジア語ではなくFCU共通語であるオーシア語だった。少年が銃をもって此方に向けようとする反射的にメビウス1も銃を向ける。少女が少年の銃を抑えた。
「大丈夫・・・ISAFのパイロットみたい」
(・・・レジスタンス?なら何故黄色中隊のジャケットを・・・・?)
疑問を持ちつつ、銃を下に下ろしてセーフティーを戻す。
「貴方達は誰?」
「・・・・」
相手は答えない。しかし、黄色中隊のジャケットを持っていることから少なくとも彼等に接点を持っていただろう。黄色ほどのプライドを持つ連中ならジャケット一つといえど我々には渡さない。
「・・・・そう。まあ、いいわ・・・。黄色が堕ちた事で戦争も終わった・・・もう、誰も撃たなくて済む」
「!」
"黄色が堕ちた"の一言にビクッと反応する二人。どうやらメビウス1が考えていた事は的中していたようだ。
「お二人さん、私のコールサインはISAF空軍の戦闘機パイロットメビウス1。身辺上の事はそれ以上のことは言えないわ。救助が来るまで時間がかかるし、お話しましょ。・・・・貴方達は?」
「・・・・・ぼくは・・・」

ノースベルカ 05:06
「・・・・コレは一体何の冗談だ?」
日の光に刹那は気が付いたらすぐさま視覚・聴覚・臭覚・第六感で周辺の状況を探った。まずは自分は室内のベットにいて、そこまで何者かに運ばれ、上着まで脱がされた(武装解除されたという理解で、何をされたかは考えていない程度の思考)。そこまでは理解できた。しかし、今自分のベッドの中に潜り込んでいる銀髪の見覚えのある女性はどう言う訳だか懐いた猫のように身体を寄せている。自身の装具は室内には見当たらず、小鳥の囀り、風のきる音しか聞こえない。少なくとも、この自分に擦り寄るように寝ている女性・・・ガーゴイル1の寝息も静かだ。しかも熟睡している。さらに注意深く見ると扉から風が多少吹き込み、F-4が駐機する空港が見える小屋と言うところまで首と上半身を回すだけで理解できた。
(・・・・何時からこいつは私達の動きを監視して、待ち伏せしていた?"取引"の内容を知らない連中が居ればそいつが私を捕らえようとするのは分かるが・・・何故何の拘束も哨戒員もつけない・・・?)
取引とは今回の戦争で刹那が捕らえた例の"暁"の幹部の身柄をUNFの迎えの艦艇に引渡し、吐かせた情報を国連関連組織・オーシア大統領・ユーク首相・エメリア首相・ノースポイント国防省・サウスポイント国防省・ベルカ元国王・一部傭兵団等といった反"灰色の男達"の組織、国、個人などに渡す事。見返りはISAF連盟国に対し自分の部隊に対する追撃を"強制的"(武力行使・経済封鎖など、理由は後付でも構わない)にやめさせること。9月20日23:59:59までに全て完了せねばならない。1秒でも遅れれば見返り無しの上に信頼もガタ落ちだ。何はともあれ、連絡手段を確保せねばならない。動こうとした瞬間に右手首に手錠がかかっておりそれは彼女の左手首と繋がっている事に気付いた。
(成る程、ある意味嫌な拘束だ。私がお前を殺そうとすれば感づかれ、防がれて反撃で私は死ぬ。お前ほど長い間共に過ごした時間が長い人間は居ない。全ての動きと弱点を知っているからこそ出る余裕か・・・・コレじゃ動けないし、銃創跡の治癒も完璧ではない。確実に殺られるな・・・・)
彼女の銀髪をサラッと撫でながらそう思った。しかし、本当に自分と瓜二つだ。育った環境が同じならこうなるものなのだろうか。そうふと思いつつ朝日を見ているともぞもぞと動いているのを感じた
「・・・・!何だ起きてたのか、驚かせるなよ」
「そりゃあ、ね。襲われないかとハラハラしっぱなしだったわ」
「そんなに野蛮に見えるかな?それより私の部下はどうした?殺ったのか?」
「フフ・・・冗談よ。貴方の部下?大丈夫、我々との"取引"が終わるまでは貴方が人質代わりよ。この状況、分かってるわよね」
何気なく傷口を指でツンと突く。ズキッと言う痛みにピクッと反応しつつもいつもの無表情のまま相手を見返す。
「しかし、何故殺ってくれと誘うような拘束の仕方なんだ?ベットに括りつければ十分だろう」
「そんなんじゃ怒るかなと思ってね、今の所は順調よ。貴方の部下は自白剤使うのが早くて助かるわ。仕事が早く終わる」
「それは良かったな。私個人としても歓迎したい事だ。さっさとこの状態から解放されたいものだ。それに寒い」
「人肌で暖めてあげようか?」
「・・・・怒るぞ、任務中に私欲を挟み込むな」
サラサラの彼女の髪をクシャクシャと撫で上げて表情を緩ませる。いつもこんな感じだ。二人だけのちょっとした時間があれば彼女は自分を求めたがる
「貴方はいつも硬いよ。硬すぎる・・・二人だけなんだからね・・・・」
「これが終わったら好きなだけ相手をしてやる。全任務が終わったわけではない。まだ義務が終わっていない。パソコン寄越せ」
「・・・・冗談に決まってんでしょ。はい、パソコン」
「・・・・精密機械は丁寧に扱わんか、馬鹿者」
彼女は机の上に置いてあったノートパソコンをパッと投げる。ムッとしながらそれを受け取り電源を入れ、即座にメールフォーラムで新規メールを書き始めた。あて先は自身の部下に向けてある

シュチュエーションは?

回答は直ぐに帰ってきた。

イエロー Sir

イエロー・・・状況は多少芳しくないという意味だ。直ぐに返答する

Roger 可及的速やかに情報を引き出せ。手段は問わない。但し、ターゲットの生存が第一任務である事を忘れるな

返答は素早く帰ってきた。

可及的速やかに、手段を問わず、生存第一義、Roger

メールを打つ手を一旦止めると同時に背筋が凍るような殺意を感じた。しかも、無数に多方向からだ
「・・・・!」
「・・・・今の・・・感じた?・・・・こんな数の殺意は初めて・・・警察では無いわね」
彼女も同じく殺意を感じたようだ。
「・・・・50・・・いや100近いな。私一人ならそれぐらいで十分だろうな・・・だが、二人なら超えられるかも・・・・手伝ってくれるか?」
「当然よ、一緒に待ってたって殺されるだけじゃない」
ベットの下から武器と刹那の服及び地上戦闘用の装具を渡される。Knights 6x35mm PDW(ナイツ社の最新PDW)を持つ。クロスコムを互いに周波数を合わせて、銃に初弾を装填する。
≪やれやれだ。何所から情報が漏れた?≫
≪貴方の所じゃないと思う。貴方の部下なら私が動いている事くらい分かるわ≫
≪私には伝えなかったと?≫
≪フフッ・・・聞かれなかったからじゃないの?≫
≪ハハハ・・・違いない。あいつ等は言われた事は10点中10点出来ても、言われて無いことは3点しか出来ない連中だからな。そう教えた。・・・・・・そろそろ来るぞ≫
外の殺気がさらに大きくなる。音も聞こえない事から一斉射撃の準備をしている様だ。
≪・・・・タイミングを合わせて窓から行くわよ。よろしい?≫
≪当たり前だ、戦闘狂≫
≪口が過ぎるわ、殺人鬼≫
互いに口を悪くしつつも、ハンドサインでタイミングを計る。
(3・・・2・・・1・・・GO!)
ガシャァァン!ドドドッ!タタタッ!ドンドンドン!ガガガガガガ!!タン!タン!タン!タタタタタタタタタタタタタ!!!
飛び出た直後に一斉射撃が小屋へ行なわれる。窓の周囲に向けて発砲した敵をPDWでヘッドショットを喰らわせて射殺し、即座に振り返って制圧射撃を喰らわせる。
≪PDWじゃ制圧力に欠けるな。ナイツ社に文句を言っても始まらんが≫
≪ぼやかない、ぼやかない≫
適当に弾をばら撒いているというのが正確な表現だが、それでもこれだけの人数に向けて乱射すれば5~6人には当たっている筈だ。しかし、誰一人怯まない。外見上どう見てもレベルⅢ以上の防弾チョッキを着ているとは思えない
≪クソ!このブリキ共は硬いぞ!!≫
≪薬で"ハイ"になってるか、途轍もなく酔っているのか、それとも心酔しすぎて"バーサーカー"状態になっているんだと思う・・・その分多く叩き込むか、心臓を撃ち抜くか、脳味噌をぶっ飛ばしてやらないとダメね≫
≪・・・冗談キツイぞ。此方コマンダー、ARCアルファ3-0応答しろ。・・・3-0、応答しろ。・・・・3-0?≫
周波数を変えて、オーシア大陸の支部のARC部隊を呼ぼうとする。しかし、繋がらない
≪・・・・ECMだ。近距離じゃないと連携も取れないな≫
≪相当前から計画的に練られていたようね。内通者を炙り出さないといけないわ≫
≪それは結構だが、この変態共をどうやって殲滅するんだ?弾が持たないし、数が違いすぎ――・・・・!≫
刹那はようやく気付いた。愛機がフル装備で駐機しているのだ。しかも、外部から命令を下せば勝手に"掃除"してくれる半分無人戦闘機なのだ。何も自分達だけでやる必要はない
≪・・・おい、私の機体は何所にやった?≫
≪空港のハンガーでカモフラージュして隠してあるわ。大丈夫、元はといえば核攻撃も想定していた爆撃機用の格納庫で外からの攻撃では簡単には壊せない様に作られてるし人間が通れる入り口は駐機用の大型のシェルター口しかない。鼠なら朽ちかかったフィルターを吸気口から通って入ってくるけどね≫
≪安心した。開けられるか?≫
≪電源室で電源を入れないと無理ね、開くのに2分は必要だわ≫
≪よし、一気に退くぞ。援護するから先に行け≫
≪了解!≫
フルオートにセットし、ワラワラと向かってきて撃ってくる集団に銃口を向ける。
≪行け行け行け!≫
タタタタタタタタ!
援護射撃を加えつつ、素早く移動する。2、3発喰らえば流石に倒れるが、それでも敵は硬い上に死を恐れず数が多い。5、6回マグチェンジするほど撃ってもまだ2/3はいる
≪電源室に辿り着いたけどこっちにも伏兵が居る!クソォ!開けられない!!≫
≪何だと!?今からそっちに向かう!≫
状況は最悪、この馬鹿みたいに硬い敵兵を全て倒さないと任務どころか自身の持つ情報が危うい。電源室は激しい銃撃に晒されていた。
(コレだけはしたくなかったんだが・・・止む終えないな)
無線周波数を航空用に変えて静かに告げる
≪・・・・エースブレイカー、起動しろ。仕事の時間だ。外に居る敵兵を全て薙ぎ倒せ。全てだ≫
キュウウウウウンヒュイイイイイイイイ!
JFSの起動する音がハンガーから漏れ聞こえる。直後に二基のジェットエンジンが一気に高鳴る音を山中に響かせた
≪伏せろ!早く!!≫
≪え!?≫
≪いいから伏せろ!!≫
バシュッ!!ドン! ヴォオオオオオオオオオオ!!!!!
ハンガーの搬入口をミサイルで破壊し内からF‐4が出てきた直後、それは機首を旋回させてM61A2バルカンの火を吹かせた。装弾数は改修した際に1200発に増えて、発射速度は2000発~1500毎分に落としている。その為、ゆっくり旋回しているのにも拘らず、非常に長い時間発砲出来る様している。
≪うわっ!危なっ!≫
≪頭を上げるんじゃない!掠っただけでもスイカが破裂するように頭が吹っ飛ぶぞ!≫
その言葉の通り、敵は胴体・首・手足が血霧となって消滅し、斃れて行く。タングステン鉄鋼+炸裂弾+曳航弾のミックスだが20mmと言う大口径、そしてマッハ3を超える弾速によって当たった・掠った部分を文字通り血霧にしているのだ。じきに動く敵は居なくなった
≪ご苦労、射撃止め≫
≪死ぬかと思ったわよ・・・・≫
≪生きてるじゃないか、さて任務に戻るとしよう≫
刹那は銃を置き、携帯を取り出した。先程の銃撃でノートパソコンが壊れたと思ったである。メールを開き、新規作成を選び内容を書こうとしたとき新しいメールが入って来ている事に気が付いた
(なんだ?ARCのメールアドレスだな)
何かと思いつつ、新規メールを確認する

奴は"折れた"

シンプルな内容だが一発で理解できた。直ぐに返信する

了解 予定通りに所定に情報をリークし身柄を例の連中に引き渡せ。その後はオーシア支部に向かえ

携帯を閉じると自分の頬が釣りあがっている事に気が付いた。悪い癖だ。仕事が終わる時と戦っている間は口が僅かに上向いてしまう。彼女がそれに気付いたようだ。
「終わったの?」
「ああ、終わった。あの大陸は残党を始末すれば今後10~20年間は無菌室化出来る。その間存分に我等の様な第四勢力が権力を伸ばせる。だからお前もこの戦争に乗ったのだろう?ハートセキリュティ※第1飛行中隊隊長?」
「言えてるわ。傭兵組織:「ブラック・ツイン・ドラゴン」戦闘部の部長さん」
※イギリスのPMC「ハートセキュリティー」社(職務中死亡した斉藤氏が所属していた民間軍事会社[建前は民間警備会社であり傭兵ではない、それにPMCは傭兵と誤解されないよう社員の規則は厳しい。某スパイゲームのようにドンパチをする為の会社ではない。元特殊部隊員など軍人・警官などが多い])とは一切無関係である。念のため※
「・・・しかし、君等がこの話に乗ってくれて助かったよ。御陰で丁度良く此方のスケジュール通りに言った」
「それはうちの社長にでも言ってよ。でも本当何所から情報が漏れたのかしらね」
「それなら少なからず思い当たる所はある。・・・・ISAFの連中か、エルジアの残党だろう。私に恨みを持つ連中といえばそれぐらいしか居ないし、それに灰色の男達は此方の規模どころか誰が首謀者かすら知らんだろう」
刹那は自分の手の内にある情報を探り寄せ、正確に絞り込む。
「ISAF!?それじゃうち等の脅しは効かないんじゃ・・・・」
「効くよ、100%・・・いや1000%は保障できる。奴等の生命線を握ってる者が私の掌中にある限りはな」
「!・・・ノースポイントとサウスポイント!・・・・・成る程貴方が育てられ、育てた所だものね。流石抜け目無いわ。・・・・でも情報を流したのがエルジアの残党だったら?」
「その時はもう一度あの大陸に戻る事になるだけだ。私のやりたい様やらせて貰うだけだよ。・・・・さて、私は24日には新たな仕事でオーシア、オーレッドに行かねばならない。仕事も終わった事だ。お前にも時間をやれる」
最後の方の言葉で彼女が猫じゃらしを追いかける様な猫の目になって刹那に抱きついたのは言うまでも無い。


10月25日 Holtz共同墓地 夕方
「・・・ここだ、トンプソン」
刹那はいつも通りの真っ黒なスーツに身を纏い、とある墓の前に来た。
「これが・・・アントン・カプチェンコ氏の墓・・・ですか?」
「ああ・・・此処に訪れるのは私も初めてだが、懐かしさはある」
カメラを携えて、手帳を片手に持つ記者、トンプソンは刹那が零す言葉を見逃さず書き留めている。9月24日までに何人かのエースに会う事は出来たが、やはり記者単独だけでは限界もある。こういう取材はその手の人間が必要なのは今も昔も変わらない。
「久しぶりだな、1995年末のB7R以来か。カプチェンコ」
反応はある筈が無い。話し掛けている相手は墓下の骨なのだから。
「知っているんですか?」
「・・・こいつの親族や部下ほどではない、が・・・・私に大きな影響を与えてくれた男だ」
トンプソンが刹那の言葉をメモっていると、墓に何か彫られていることに気が付いた
「・・・?・・・何か彫られてますね。ベルカ語のようですが・・・」
トンプソンがベルカ語の辞書を取り出そうとしたとき、刹那が静かに言った

 『新しい世界への門は開かれた』
THE GATE TO THE NEW WORLD HAS BEEN OPENED.

『我が魂は風となり、その門へといざなう』
MY SOUL SHALL BE THE WIND THAT ENTERS THE GATE.

『眠りし王の目覚めるとき』
WHEN THE SLEEPING KING AWAKES,

『私の肉体も蘇るだろう』
MY BODY, TOO, SHALL SURELY RISE.

「え・・・?解るんですか?」
「これでも世界中の戦場を渡り歩いている。世界中の言語が解らずに世界各国と契約書を交わせるか?」
「た、確かに・・・それで、この文の意味は?」
トンプソンが意味を聞こうとしたとき、刹那は前髪で目を隠して少し震えていた。
(・・・この文は私その物じゃないか・・・それに、灰色の思想にも繋がるな・・・・)
「・・・・この文にたいした意味は無い。気は済んだか?」
「ええ、彼の資料も貴方から頂きましたしね」
「では、行こう・・・ああ、そうだ。死者には最低限の行ないをせねばな」
刹那は静かに花束を置き、十字を切る。
「・・・カトリックだったんですか?」
「・・・神なんて信じていない。あるのは死神だけだ。死と生を操る最も忌み嫌われる神しかいないものだよ、この"血と硝煙と欲望の詰まった金貨で出来上がった世界"はな。・・・さっきの十字は奴の信仰していた神のだよ。私ではない」
トンプソンはカプチェンコの墓に水滴が付いている事に気が付いたが、刹那の顔を見て泣いていた人間の表情ではない事を確認した。
(・・・・まさかこの男が泣く筈無いものな。この血と硝煙と欲望の詰まった金貨で出来上がった世界で暗躍し、人を千も万も殺してきた男が・・・)
「どうした?」
「いや、なんでもないです。・・・あ、そうだ」
トンプソンは今まで聞くに聞けなかった事を聞いてみようと思った。
「何だ?」
「彼らが戦う理由は、何なんでしょうかって思いまして、聞くには聞きましたがいかんせん絶対数が少ないので・・・参考までに聞かせて欲しかったんです」
防弾仕様のメガクルーザーに乗り込もうとしていた刹那に失礼と思いつつも思い切って聞いてみた。
「戦う理由?決まっているものだよ。ある者は仲間の為、ある者は家族の為、ある者は国の為、ある者は金の為・・・・・ジュウニン・トイロってことだ」
メモに走り書きしながら、最後の言葉を聞きなおす。
「ジュウニン・トイロって?」
「ノースポイントの四字熟語の一つ、十人いれば好きな色も十個あるという事だ。つまり、人それぞれと言う意味だな」
「はあ・・・で、もう一つお聞きしたいのですが・・・・あなたは?死神と呼ばれ畏怖されるあなたの戦う理由は何なんです?」
二度目の質問に刹那はちょっと表情を崩した。
「私か?」
刹那は少し考えて答えた
「―――世界平和の為・・・それが最も適切だ」
トンプソンは刹那がやっている事に疑問を覚える。刹那は戦争を起こしたり、自身や部下を敵味方も無く送って紛争を長引かせたりと明らかに平和から遠ざかるような事をしているのだから。
「矛盾してませんか?」
「モノの捉え方によってひどく異なって見えるモノだ。これまで出会ったベルカ戦争時のエース達もこれから出会うベルカ戦争時のエース達も同じ、人それぞれ考え方はバラバラだ。これだからこの世界は面白い。そう、思わないか?」
化かされてる様な感覚、それがこの男と共に取材を続けている間に思った事だ。
「しかし、どうしてそう思えるのですか?我々が思い描く平和とはかけ離れた事をやっているではありませんか?」
「・・・一つ平和と言っても、色んな平和がある。表面上ではニコニコしながら裏では兵器でお互い脅しあい・にらみ合う平和もあれば、他国の紛争や緊張関係を見ることで自国は平和だなと感じるのも平和と言えばそうなのだよ。世界平和と言うのは世界中のパワーバランスが平衡している事を指すと、私は考える。何処かが突出すれば、そこに釘を打ち込んで殴って元に戻す。そうやって平和は得るものだ。今オーシアがオーシア国境で紛争をやってるのは、オーシアの力を削る為に仕組んだものだ。ユークがやっている地下資源をめぐる紛争も同じ意味があるし、ISAFとエルジアとの戦争は大陸の無駄に突出した軍事力を減らす意味もある。・・・それに平和の対義語は戦争ではなく、混乱だ
車のエンジンをかけながら刹那は言った。その全てをメモに書く事は出来たが、とても放送できる代物ではない事に後々気付いた。
「つまり・・・近年の戦争や紛争は"制御された戦い"、と言うことですか?」
「そう言う事だ。これまで一度も私の小さな掌からこの大きな世界がこぼれた事は無い。・・・そしてこれからも、な」

fin
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当ブログPV 製作viper氏

当ブログリンク先である[紺碧の空]の管理人・作者のviper氏に私がお願いを致しまして作って下さいました素敵な動画です

PV第一弾




PV第二弾

第四十四話:終わり、そして始まり

9月19日 06:30 ファーバンティ某所
「起きろアルファ04。交代だ」
「了解・・・くああぁ・・・眠むっ・・・」
ARCの最後の巡回交代を傍目に見つつ、刹那は日の出に照らされたファーバンティの市街を眺めている。猫一匹すら居らず静か過ぎて不気味な感じさえ肌で感じられる。この街を住処とするペットや野良の動物達は皆本能で逃げたようだ。そんな時、巡回を終えたベータ02からクロスコムで連絡が入る
≪コマンダー、この生活痕はどうしますか?バレたら大変ですよ≫
「んー・・・・まあ、放って置け。どうせ此処から出たら二度と戻らん。必要なら此処を爆破すれば良い」
≪Yes Sir≫
生活痕が残っていれば、追跡する側にとって有利に働く・・・・が、明日にはこの大陸から我々は消えているのだから別に問題は無いと刹那は判断した。夜の内に逃走経路の確保は一応完了している。逃走費用に5000万ドルもの大金を注ぎ込んではあるが、一人当たり1000万ドルもの訓練費用をかけているARCトルーパー30名を救い出すのであれば、5000万ドルなど安いものだ。御釣りの上に特典が付くレベルで得だ。
≪ところで、何か企んでそうな顔ですな。何か面白い事でも?≫
「ん?・・・・まあ・・・な。今思えば、中々面白い戦争の時間だったなって思ってさ。もう一回どうやろうかと思考している」
先程のARCが肉声も普通に聞こえるような直ぐ近くでコムリンクで会話してきた。
≪流石に冗談キツイですよそれ。第一上が許さないでしょう≫
「上?何の事?我々を束縛する物はもう無い。UNFとOPSなら先週辞表をメールで送っておいた。ISAFは脱走済みだし、何か問題が?」
≪辞表破られたら脱走する心算ですかw≫
「当然だ。これ以上恒久平和なんて妄想に付き合う必要は無い。それと非戦闘時の近距離でコムリンクを使うな、バッテリーが勿体無い」
≪Yes Sir≫

11時間後

「!コマンダー、ISAF海兵隊です!!西より接近中!!」
「・・・確認した。準備攻撃が来る、地下駐車場に潜ろう」
「Yes Sir!!」
潜伏していたマンションの屋上から西の海の水平線上に黒く途切れえ居る部分を発見したARCたちは地下へと階段を駆け下りてゆく。
「総員下がっていろ、準備攻撃が来ると同時に此処を爆破する」
「Yes Sir!」
ミサイル攻撃が来る中で施設の高層部に居るのは危険といえば危険・・・だが、これが上手く行けば我々の痕跡を消し、隠密のまま目標まで近づける。刹那を除く全員が地下に隠れたとき、屋上に衛星アンテナに偽装した対空レーダーに反応が出た。
≪・・・!来ました。対地ミサイルです。反射面積よりミサイルを解読します・・・解読完了、西の方角よりハープーン15基、南からはトマホーク10基≫
≪艦から攻撃・・・弾着までどれくらいだ?≫
≪あと・・・30秒。ハープーン3基が至近コース・・・いや、一基が直撃コース!このままだと15階に直撃します!退避を!≫
≪退避の時間はもう無い。衝撃に備えろ≫
≪R、Roger・・・弾着まで10!≫
刹那は踏ん張って弾着を待った
≪5・・4・・3・・・・インパクト!≫
シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!ドンッ!!
≪ぐぅっ!?くふぅ・・・≫
予想外の衝撃と爆風が刹那の身体を壁に叩きつけた。頭がシェイクされ、鼓膜が震えて何も聞こえなくなった。


ISAF軍最前線基地 ブリーフィングルーム 17:30
ブリーフィングルームには多くのパイロットが集まっていた。彼等はこの戦争を終わらせる為に必要不可欠な戦闘機パイロットである。ブリーフィングルームの明かりが落とされて、彼等の正面にあるディスプレーに首都ファーバンティの概要図および戦力配置図がパッと表示される。
「エルジア首都ファーバンティの沿岸部埋め立て地の地下に、敵の本営総司令部がある。我が軍はここを速やかに制圧し、戦争を終わらせる。地上軍が東部のシルバーブリッジと南部の水没した都市部から突入をはかるので、諸君は周辺の敵を攻撃し、味方を支援せよ。また、北からは敵の戦車部隊が接近しつつある。敵の援軍と埋めたて地内の勢力が合流するのを阻むため、北部にかかるジョンソン記念橋を破壊する必要がある。最終兵器「メガリス」開発中の情報もあり万が一を考え、敵に最後の手段を使うスキを与えてはならない」
司令官がレーザーポインタで目標を差しながら説明を加える。ディスプレーには海軍及び海兵隊の位置も表示されていた。
「尚、今作戦では海軍や海兵隊が君等と共に攻撃する。彼等との連携は決して怠るな。進撃方位はメビウス1揮下の傭兵部隊が首都より1-8-0の海面より進入し、シルバーブリッジの突入を支援し、オメガ、レイピアは首都より0-9-0の陸地より進入、南部の海兵隊第五師団の直援を行なえ。ヘイローは支援部隊の上空を確保しろ。弾薬が切れた機体はSAFが駐屯する基地に帰還し、対空兵装に変更してヘイロー隊を支援しろ。現在海軍及び海兵隊による攻撃が行なわれている」
伝えるべき事項を全て言い切ると司令官は一呼吸入れて力強く言った
「この戦争の終結は諸君等の双肩に掛かっている。気合を入れて全力で戦いきれ。そして全員この場所に戻って来い!これは命令だ」
「「「Aye aye Sir!!」」」
全員がそれに応答すると、室内の明かりが一斉についた。
「解散!出撃準備にかかれ!」


ファーバンティ空港 ブリーフィングルーム 同時刻
「諸君等のやる事は分かっているな?」
空軍政治将校が黄色中隊や実験部隊そして首都防空隊、さらにはまだルーキーの少年兵の部隊に至るまでの全てのパイロット達を前にして作戦会議を始めた。
「諸君等がやるべき事、それは最高司令長官の脱出までの時間稼ぎだ。今回の作戦では敵機を一機でも多く落とす事を頭に入れろ。僚機が殺られても、ただただ戦い抜ければ良い」
誰もが覚悟を決めていた。・・・否、"決めさせられていた"。メガリスの稼働まで最低でも5日は必要。
しかし、敵はそれを待つ事は無い。"駒"として残された彼等のやるべき事は、"駒"として散る事だった。
残存戦闘機は僅かに50機を切っていた。当初は数千機以上もあった戦闘機はこの長い撤退戦で消耗しきっていた。そして、多くのベテランパイロットも脱出しても敵の捕虜になるものが殆どで、中には見せしめに殺されるパイロットもいた。
既に海軍は潜水艦5隻(メガリス移動用)、駆逐艦10隻(内9隻はエストバキニアに逃げ込んでいた。首都のジョンソン記念橋防空のために一隻だけ残った)、戦艦一隻(座礁させ、浮沈砲台として稼働させている)
空軍は輸送機0、攻撃機、爆撃機も十数機、戦闘機は48機、空中警戒管制機・空中給油機も0、残存SAM及び自走対空砲も全て首都に展開
陸軍は残存総兵力4.5万名(ゲリラ化した部隊などは含まれず、戦死及び敵前逃亡扱い。理由は"駒"としての価値が薄れたからである)二個機甲師団、三個歩兵師団(旧式装備の予備役一個師団)、戦闘ヘリ一個中隊のみ
それに対し敵軍は一部では腐らせるほど余裕のある空軍(精鋭部隊が最前線で此方を攻撃するらしい)
この大きな首都を囲めるほどの海兵隊・陸軍、そしてエルジア無敵艦隊を潰滅させるほどの装備を持つ海軍
そしてそれらの消耗品を簡単に揃えるノースポイント、サウスポイントの補給部隊(ゲリラ掃討も兼ねて居るそうで、対ゲリコマ攻撃で生き残りのエルジア軍は出血をしいられている)
戦闘ヘリ30個師団も持ち、空挺師団、ヘリボーン師団もそれぞれ7個師団、SAMサイトが各地に張り巡らされ、逆襲に向かった攻撃機は7割以上は帰ってこない。

どう我々が戦おうと結果は見えている。

それが彼等の思考にあった。
亡国となった今、それでも上層部はメガリスに望みを託そうとしている。メガリスがどんな兵器かは、ただISAFを潰滅できる決戦兵器としか聞いていない。誰一人それが悪魔の兵器だとは知らなかった
「現在、ISAF軍が市街を攻撃している、順次発進し、これを迎撃せよ。さあ、準備に取り掛かれ!!解散!!」


ファーバンティ某所 17:55
≪・・・ッはあッ・・・クソッ≫
≪大丈夫ですか?コマンダー≫
刹那は意識がはっきりしていたものの、何も聞こえず全身が痺れ動けなかった状態から、30秒でようやく体のコントロールを取り戻した。
≪ああ、大丈夫だ。クリア!≫
自分が本来すべき事をようやく刹那は行なった。C4爆薬のスイッチを押した。
ドドドドンッ!!
刹那は自分達が生活していたフロアの破壊を確認すると、部隊に指示を開始する
≪証拠隠滅完了、作戦行動を開始する。アルファ、私と共に来い!≫
≪Yes Sir!≫
≪ベータ、撤退車両を確保!軍用トラックで良い≫
≪Yes Sir!!≫
≪チャーリーは目標の周辺確保及び、敵兵の装備を確保!脱出時に使う≫
≪Yes Sir!!≫
指示を出しながらロープを固定し、カラビナに通してリペリングの準備を行なう。銃の状態のチェックも怠らない。日陰となるビル東の側から降下を始める。トンッと軽快に足を踏み出した。
シャアアッ!トン・・・ダンッ!シャアアッ!トン・・・ダンッ!シャアアッ!トン・・・ダンッ!シャアアッ!トン・・・ダンッ!シャアアッ!ダンッ!!
≪降下完了、アルファ・チャーリー集合!≫
≪アルファ集合だ!走れ!≫
≪チャーリー集結!行くぞ!≫
ビルの南の正面口から重装備の兵士達がその装備の重さ(防弾ベスト、マガジンポーチ、キャリーバッグ、専用の装具等々。合計35kg)を感じさせない速度で駆け寄ってくる。
≪アルファは地上を徒歩で移動する。チャーリは屋上を伝っていけ≫
≪≪Yes Sir!!≫≫
≪チャーリー行動開始、アルファも私に続け!≫
≪Yes Sir!Move Now!≫
チャーリー分隊が近くの背の低い建物に向けて右腕のボウガンの矢にワイヤーを通し撃ち出す。その建物に鏃が突き刺さると一気に壁を駆け上がっていく。アルファ分隊は2つの五人一班に分け、目標に向けて分かれて行動を開始する。
≪コーナーをチェック!≫
≪ライトクリア≫
≪レフトクリア≫
≪良し、Move up≫
一つ一つの交差路を鏡によって偵察し、目標に向けて移動する。既に攻撃は始まっており、ISAF海軍のF/A-18E・Fとエルジア空軍のMig-35が戦闘を始めている。
≪此方アルファチーム2、エルジア軍と接敵。交戦中です≫
≪チーム1了解。チャーリーチーム、アルファチーム2の援護を≫
≪Copy sir。ターゲット捕捉!制圧射撃!!≫
≪チャーリーチームへ、援護に感謝する!全員敵の側面に回れ≫
チーム2の方は問題無さそうだと刹那は判断し、自分達で目標に迫る。その時隊員の一人が叫んだ。
≪コマンダー!10時方向敵戦車と一個分隊!≫
≪散開しろ!≫
「敵兵だ!」
「撃て!撃て!!」
ダタタタタタタタタタッ!!ピュンッ!コキュンッ!!チュンッ!!
≪来るぞ!!≫
≪伏せろ!≫
ドンッ!!ギュゥンッ!ドンッ!!バラバラパラパラ・・・・
弾が至近を風切音を響かせながら通り過ぎ、直ぐ傍の地面と壁で兆弾する。戦車砲弾が自分達の居た後ろの建物に撃ち込まれる。
≪此処にいたら殺られます。どうしますか?≫
≪援護してくれ。あの戦車を潰す≫
とは言っても、対戦車火器なぞ持ち合わせていない。手元にはブリーチング用の指向性を持たせたC2爆薬数個と手榴弾十数個、そしてC4爆薬。その中から手榴弾二個を取り出した。
≪アルファ03・04、向こうの建物まで走れ!GO!GO!01・02は援護射撃!撃て!≫
≪Roger、Keep Fire!!≫
≪Roger、Move Now!≫
ダラララララッ!タタンッ!!タタタッ!チィン・・コォン・・チリン・・
部下の移動と同時に援護射撃が始まる。移動が終了すると、移動させた隊員にハンドサインで制圧射撃を命じる。勿論、援護射撃をさせていた隊員にも制圧射撃を指示する。敵戦車は此方から移動した隊員の方に砲を向け始めた。
≪・・・・今だ!全火力を集中させろ!私は突っ込む!!≫
刹那は部下に叫ぶように言うと、手榴弾の安全ピンを犬歯に引っ掛けて抜きそれを戦車目掛けて投げた。と同時に小銃片手に走り出す。
「手榴ッ―!!」
ドチュンッ!!キュンッ!ヒュンッ!!
手榴弾の破片が直ぐ傍を通り過ぎる。刹那は冷静に生き残りを小銃で射殺すると手榴弾を取り出して戦車によじ登った。
「敵が上に乗ってやがるぞ!」
「畜生!急発進して振り落とせ!」
≪遅い≫
ピンを抜いて、ハッチをこじ開けて中に手榴弾を投げ込む。ハッチを閉じた瞬間、刹那は振り落とされた。
≪クッ!≫
「手榴弾っ!?」
ドンッ!!
爆発音と共に敵戦車は行動停止した。
≪周辺制圧しました、コマンダー≫
≪了解・・・今日は厄日だな≫
ヘルメットを被り直し、銃のチェックを怠らず行なう。
≪良し、行くぞ≫
チェックが終わり次第、目的地に向けて移動を再開。上空ではベイパーを引いて戦闘機達がが激しく動き回り、綺麗な雲を引きつつミサイルが飛び交い、フレアやチャフがディスペンサーから放たれる。
ドオン!
一際大きな爆発、座礁していた戦艦に対艦ミサイルが直撃して爆発したのだろう。既に戦車砲の咆哮やライフルやLMGを撃ち合う音が絶え間なく聞こえる。
≪・・・・戦闘が本格化してきました。急ぎましょう≫
≪そうだな≫


ファーバンティ上空 18:20
≪戦争の結末は君たちにかかっている。全機生き残れ!幸運を祈る!≫
ISAF空軍の第一波到着。既に戦闘は激化している。AWACSスカイアイの管制官の渇が全ISAF空軍パイロットたちに伝わり、浸透する。メビウス1のX-02にはプライベート・チャンネルでスカイアイからの頼み事が伝えられた
≪メビウス1、今日は俺の誕生日だ。プレゼントには終戦記念日を頼む≫
≪・・・了解!メビウス1Engege!!≫
メビウス1はクスッと笑うとレーダーを起動、JTIDS(統合戦術伝達システム、リンク16の派生型。対ECM、秘匿性に優れる)も起動しAWACSのAN/APY-2のレーダー画面がAN/APG-79のレーダー表示画面に出る。同時に他の僚機もレーダーを稼働させ、JTIDSを起動させる。一部のSu-30MKのIRST・レーザースキャンやF-15ACTIVE改(アクティブのレーダーAN/APG-63にE型改修機のAN/APG-63(V)3と同等の能力を得させた)の増槽先端に設置されたIRSTとレーザー探査装置を作動させる。
≪お~お~コリャ派手にやってるな・・・正面にタイフーン4機、方位0-0-0、距離35000、高度18000、向かってきてる。邀撃機だ≫
≪レイピア8、IRSTに弱探知確認。レーザーで確認する・・・・・方位0-0-0、距離45000、高度17000、向かってきている≫
≪此方でも捕捉、F-22Aとタイフーンだな。AMRAAMやR-77じゃあ心許無い、失探するだろう。AIM-9Xで行くぞ、FOX2アタックスタンバイ≫
≪OK、此方メビウス1。タイフーンは貰うわ。FOX3アタックスタンバイ・・・・≫
情報を共有し、楽々ロックオンできる様になった今のISAF空軍。一年前だったら無線で情報を得て、飛び立ってわざわざ自分の位置をばらしながら接近するしかなかった。それとは大違いだ。
≪メビウス1FOX3!スカイアイ、慣性誘導お願い≫
≪スカイアイ、了解。ミサイルの誘導開始≫
≪レイピア8、降下して接近する。レイピア第2小隊続け≫
≪Roger。J-STARS、本隊の方の戦況は?≫
≪此方J-STARSグランドマスター、東からの陸軍部隊の攻勢は良好です。F-15ACTIVE改、F-2のヘイロー第1中隊、Su-30MK、Mig-35のヴァイパー第3中隊と傭兵混成団が座礁した敵艦に対艦ミサイルを命中させ、現在敵地上勢力の損耗率は5.8%、それに対し我が方は0.4%の損耗率で優勢です。ただ敵の航空勢力がやってきているので僅かながら損耗が増えています≫
≪了解、こっち側が片付いたら直掩に向かう。間も無くロックオンできる・・・脇ががら空きだ!レイピア8、FOX2!≫
南方から迂回して来た制空隊は上手い事に敵の貧弱な側面を狙う事が出来た。CAP任務に上がっていたエルジア軍機にミサイルを撃ち込み、火蓋を切った。
≪3・・・2・・・1・・・スプラッシュ1!メビウス1≫
≪3・・・2・・・1・・・スプラッシュ2!!2機だ、2機もおとした!≫
≪口が減らないな、レイピア12・・・レイピア9、スプラッシュ1≫
≪良し見つけた。俺の正面上だ!手の空いてる奴は頼む、こっちの高度では追えそうではない≫
≪メビウス1、此方でやります。先にファーバンティに急行してください≫
メビウス1はAIM-9Xを選択し、レイピア10が見つけたF-22の生き残りに機首を向ける。
ビイイイイイイイイイイイイイイ!!!
トーン音が最大まで鳴り響き、目標が素通りした僚機を狙う為に旋回した直後にトリガーを引く。
≪メビウス1、FOX2!≫
≪!?しまった!囮か!!レッド2脱出する!!≫
≪メビウス1、スプラッシュ1!≫
敵機は速度エネルギーを失っており、ミサイルを回避する事はできないと瞬時に判断しイジェクションレバーを引いた。まるでオメガ大隊並の反応の速さだ。
≪良うし、CAP敵機は全機やった。突入する!AWACS、エスコート頼むぜ!!≫


ファーバンティ近郊 18:22
≪おちついていけば勝てるぞ≫
≪敵増援!方位1-8-0!高度125!超低空を高速で来る!≫
≪ここで食い止めるぞ!レッドリーダー、部隊を裂いて増援に当たらせろ≫
≪了解、ブラックリーダー。レッド7、8~12を連れて方位1-8-0へ≫
≪此方イエローリーダー、そちらまでETA9分だ。各リーダー持ち堪えてくれ≫
エーリッヒは正直焦っていた。機体のエンジントラブルを解決してる間に10分近くタイムロスしてしまったのだ。
≪隊長、此方6。落ち着きましょうよ。たまには味方に任せる事も悪くない≫
≪だが、奴との決着を逸早くつけたいんだ。最後のチャンスだからな。≫
≪分かりますよ、それは俺もです。しかし、奴をこんな大人数で叩いて4が喜びますかね?≫
6の返答を聞いてエーリッヒは後ろを振りかえった。自分の後ろには新兵のイエロー中隊。全員R‐73を装備させてる。確かにこれでミサイルの集中砲火を喰らわせれば幾ら奴でも持たないだろう。最終決戦との事で上層部から全員連れて行けといわれたのだ。
≪・・・・≫
≪・・・・隊長、自分はこいつ等を連れて行くのは反対です。確かに奴を片付けられるでしょうが、その後を考えてください。連中は既に今の我々を100回は潰せるほどの戦力を投入しています。我々程度が行っても"焼け石に水"です。いや、逆に相手に"火に油を注ぐ"結果になるかもしれません・・・・違いますか?≫
≪・・・・≫
エーリッヒは反論できなかった。そう、投入された敵戦力はイエロー13揮下のこの中隊を殲滅するには"十分すぎる"。奴を葬る事は出来ても、戦争に勝つ事は叶わない。むしろ、奴がやられて敵軍が弔い合戦だとさらに獅子奮迅の如く奮戦すれば、我々は持つまい。誰一人生きて帰れなくなる。エーリッヒは決断せざるおえなかった。
≪・・・・13よりイエロー中隊へ、よく聞け。・・・・1・3・14・6以外は方位2-8-0に向けて飛行し、敵のレーダーを掻い潜ってメガリスに針路を取れ。奴には・・・"リボンの死神"には5機で挑む≫
≪・・・ど、どう言う事で・・・ありますか?≫
新兵のジャン・ルイのみが言葉を発した。
≪この戦争では良い奴が死にすぎた。お前等は生きろ。付いて来るなよ、命令違反で撃ち落すぞ≫
≪そ・・んな・・・待ってくださ≫
≪ボウズ、悪いがテメエらのお守りなんて御免だ。お前等の背中まで護れねえ≫

≪え・・・6まで・・・?≫
≪そうだぞ、小僧共。お前等のへなちょこの腕前じゃあリボンの死神にゃぁそのぶら下げている高性能ミサイル届きもしねえ≫
≪14・・・≫
≪皆の言うとおりだ。ガキの戦うような空じゃねえンだ。こっから先の空は聖域なんだよ。敵機を5機以上撃ち落せるACEのみが飛べる数少ない聖域だ≫
≪・・・1≫
≪まあ、何だ。ひよっ子がそんな高価な玩具に乗ったって、リボン付きどころかそこら辺に飛んでる有象無象すら叩き落せないだろうよ。ガキはとっとと逃げ果せて寝てろって事だ。ハハハ!≫
≪・・・・・・・・≫
≪そういう事だルーキー。さっさと行け。さっさとしないと反逆者扱いだ≫
≪・・・・Copy Sir!!命令を実行します!13!!・・・・達者で!!≫
ジャン・ルイのSu‐37がライトターン、それに釣られるように黄色中隊の新人の面子たちや他隊のひよっ子達がライトターンしていく。
≪生き延びろよ・・・ルーキー・・・。・・・・さて、お前等。最後の空戦だ!気合入れて行くぞ!アクィラ全機、俺に続け!A/B焚け、ECM作動、IRST・レーダー作動、マスターアームON、マッハ2で敵陣を貫く!!ISAFに俺たちが健在して居るって事を知らしめてやるぞ!≫
≪≪≪≪ウィルコ!≫≫≫≫



ファーバンティ市内 18:25
≪被害にかまうな!橋を渡るんだ!≫
≪頭の上をリボンが飛んでる!≫
≪心配するな、バリー隊が上空制圧をする!≫
≪敵機がもう来ている。橋を落とされたら手も足も出ないぞ!≫
≪我々が到着すれば首都は落ちない!進むんだ!≫
≪ジョンソン記念橋に敵増援部隊接近!工兵部隊急げ!≫
≪ダメですブラボー2!敵防御陣地の抵抗が激しすぎて近づけません!!≫
≪クソッ・・・航空支援要請!上に居るメビウス1にやらせるんだ!対空火器を潰して空軍を護れ!!≫
≪Yes Sir!コリンズ!パンツァーファウスト持って来い!走れッ!≫
ジョンソン記念橋の南側では地下を伝ってきたISAF工兵部隊とエルジア守備隊が交戦していた。エルジア守備隊の重火器による抵抗で工兵部隊は足止めを受けている。
≪パンツァーファウストⅢ4基持ってきました!こいつで全部です!≫
≪オーライ、よくやったコリンズ。もう一仕事頼む。第3分隊を貴様にやるから、こいつを向こうの建物まで持って走れ。向こうの建物の屋上から敵さんの対空火器を潰してくれ。今からスモークグレネードを焚いて援護射撃を加える。十分広がるまで待ってから行け。Oorah!?
≪Oorah!!第3分隊集結!≫
コリンズが分隊を集結させて4基のパンツァーファウストⅢを4人のライフルマンに背負わせた。と同時に30m離れた7から報告が入る。
≪ブラボー2、こちら7。まもなく航空支援だ。何とかなりそうです!≫
≪空軍には少し待てと言え!お前達の花道を作ると伝えろ!≫
≪了解!≫
≪良し・・・グレネード投擲!カバーリングファイア!!≫
タラララララララララララララララララララララ!!!!!!!!!!!ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!
SAW持ちのM249とM240が火を吹いて敵の機関銃陣地に制圧射撃する。
≪良し、広がった。行くぞ!!≫
≪Move!≫
煙が十分充満するのを確認すると、コリンズは分隊に移動を命じる。10人の分隊が間隔を開けて一気に駆け出す。無事全員が道路の反対側のビルの中に侵入した。
≪ハアッ!ハアッ・・ハアッ・・・・クリアリングしろ!屋上に急げ!≫
コリンズは息を切らしながらも、ステアーAUGを持って先導を開始した。手荒く全ての部屋をしらみつぶしに調べる。
≪クリア!≫
≪オールクリア!屋上へ向かえ!≫
分隊員を先導し屋上へと上り詰める。いきなり眩しい夕日が視界に入るが直ぐに慣れさせて屋上に展開した。
≪分隊ライフルマン、全員パンツァーファウストで対岸のビルと河川敷に展開中の対空火器を狙え≫
≪Yes Sir!スタンバイ!バックブラスト安全確認!安全装置、良し!照準・・・良し≫
ライフルマンがビルの北側に整列、残りがそれの掩護についてサポートする。
≪撃ち方始め!!Fire!!≫
ババババンッ!!!!シャウウウウウウゥゥゥン・・・・ドォン!!ドドン!!ドンッ!ドドォン!!
≪命中!撃破・・・4!!ブラボー2!対空火器4基撃破!≫
≪了解だコリンズ!メビウス1、橋をやってくれ!≫
≪Roger、翼下にSDB(250ポンドJDAM)残しておいて良かったわ。ダルモエード3、そこを航行中の駆逐艦お願い≫
≪了解で御座います。MK84をタップリくれてやります!≫
一機のA-10Aが河を航行している駆逐艦の後方から進入してきた。CIWSの砲火に対してもビクともしない。その後方にメビウス1のX-02が続く。
≪ダルモエード3、投下!≫
ゴンッ!ヒュウウウウウゥゥゥゥン・・・ドドオン!!
≪敵駆逐艦撃沈!≫
敵駆逐艦の対空砲火が沈黙したのを確認するとメビウス1が投弾体勢に入る。
≪メビウス1、投下!≫
ガコッ!ヒュウウウウウウ・・・・ドドドドドンッ!!!
≪此方ブラボー6状況を確認する。・・・・!やったぞ!!橋が落ちた!!≫
≪ジョンソン記念橋を破壊!いいぞ!敵の進路を遮断した!≫
コリンズたちはガッツポーズを決めて喜んだが、メビウス1の後方に取り付いた敵機を見つけた。
≪あっ!危ない!!≫
≪リボンは俺がやる。雑魚はまかせるぞ≫
≪了解、ブラック2≫
≪6時に敵機!?クッ!≫
≪リボンとて、人間だ。落とせんことはない≫
それを見ていた誰もがX-02が撃ち落されると思った。だが、その直後ミサイルがブラック2とそれをカバーしていたブラック4とブラック6、ブラック8の後方に迫った。
≪!後方にミサイルだ!間に合わない!!≫
≪何ッ!?無理だ!脱出する!!≫
≪クソッ!脱出する!≫
≪しまった!?≫
メビウス1とダルモエード3の後方に取り付いたF-15アクティブとSu-47はパイロットが脱出した直後にミサイルが全て直撃した
≪チェックメイト!≫
敵機を撃ち落したのは4機の異なる編成で、一機はバラード1のF-22
≪Rest in Peace・・・敵の本丸の上で空戦ってのも悪くないな!≫
一機はグエンのシュペル・ラファール
≪御二方、忘れるな。生き残ることが勝つことだぞ≫
一機はアフマド(レイピア2)のタイフーン
≪まったくだ。後ろをがら空きにするなんて、ACEらしくない≫
一機は月詠のF-15S/MTDだった
≪助かったわ・・・後で礼をしないとね≫
≪礼なら後だ。シルバーブリッジはレイピアとヴァイパーに任せて大丈夫だが、問題は埋立地だな。 埋め立て地のまもりは固そうだ。そっちに向かおう。残弾は大丈夫か?≫
≪勿論で御座いますです。まだ30mmが腐るほど残ってる≫
≪こっちもJDAMがまだある。余裕よ≫


ファーバンティ市内 18:30
≪だいぶ静かになってきましたね≫
≪そろそろISAF軍が市内に雪崩れ込んできそうです≫
≪想定の範囲内だ。奴等が此処に侵入するまで最速でも5分かかる。それだけあれば十分過ぎる≫
刹那の部下が刹那に提言するが、刹那は聞き入れなかった。目標の建物の裏口の直ぐ傍に彼等は立っている。
≪最終確認だ。突入から1:30、それに全てをかける。それまでに目標確保し、暗殺目標を射殺する。18:30時計合わせ≫
≪Yes Sir、チャーリーチーム屋上から侵入しろ≫
≪Roger!≫
チャーリーチームがワイヤーで目標の屋上に一気に上ると、刹那は突入の指示を出す。
≪5・・4・・3・・2・・レディ・・Move Now!
≪ブリーチング!行け!≫
ドンッ!!バンバンバンバン!!!!!ドドドドドッ!!!!
壁を一気に爆破し、フルオート射撃で敵の歩兵を牽制しつつ一気に駆け出す。
≪アルファ01、1班を連れて1階掃討!アルファ06、2階掃討開始!チャーリー、5階、4階の敵を殲滅しろ。急げ!3階は私がやる!ベータ!撤退車両をこっちまで持って来い!目標確保と同時に撤退開始する!全て1:20以内に完遂しろ!≫
≪≪≪≪Yes Sir!!≫≫≫≫
ドドドン!!ダダダダダダダダッ!!!ガンガンガンガンガンガン!!!!!タララララララララララララ!!!!
激しい銃撃音と共に直ぐ傍を銃弾が通過し、爆ぜる。
≪06、2階に向かいます!ご無事で!≫
≪チャーリー、5階制圧≫
≪アルファ01、1階制圧中≫
≪ベータ、ISAF戦車部隊と接敵!交戦開始!ETA18:31:45!!≫
≪全隊状況が変化次第報告、残存時間1:10≫
刹那も3階に到達、廊下で待ち構えていた敵兵を64式小銃とP220の二丁で射殺する。
ドドドドドドドン!パン!パン!パン!パン!タタタタタタタッ!!ブヒュンッ!チュン!カンッ!
≪しつこい狗め、屍を晒せ!≫
「こいつを殺せ!撃て!」
ビシュッ!
刹那の肩を銃弾が貫通するが、痺れを無視して撃ち続ける。
≪ッ!やるな!≫
「死ねえ!この化物ッ!!」
≪死ぬのは貴様だ、五月蝿い狗ごときが私を殺せるとでも思ったか!
ドッ!
「か・・は・・・っ・・・」
ドサッ
刹那がやったのは敵の心臓に小銃を突き刺すという荒業だった。バヨネットも無いが、人間の肉体は言うなればバターのようなものだ。勢いに任せた刺突は脊髄を貫通し、反対側へと突き抜ける。血を噴出しながら敵は斃れた。しかし、此処で問題が発生する。入ったは良いが、銃が抜けないのだ。
≪・・・・・・チッ≫
時間の無駄だと判断した刹那はC4で死体ごと処分することにした。
≪クリア!≫
ドンッ!!
≪勿体無いが・・・まあ、もう一丁あるから良いか。さて、奴はこの階にいる筈だが・・・!此処にいると思ったよ、暁の狐≫
「!?・・・貴様!」
刹那は応接間に入って捕獲ターゲットの暁の幹部を見つけた。そいつは今にも拳銃自殺しようとしていた。その銃をこっちに向けてくる
バンッ!チュウン!バシュッ!
「がっ!?・・・」
相手が引金を引く直前に、刹那はサッと向かれている銃口から飛んでかわし、左脇の拳銃ホルスターに入れていた"特殊な拳銃"を撃った。相手は一瞬麻痺し、動けなくなる。
≪貴様には死んでもらっては困るのでな、撃ち込まれたのが9mmルガー弾じゃ無くて良かったな≫
刹那が撃ったのはテーザーガンという有線式スタンガンで、オーシアのみで生産される護身・凶悪犯制圧用のスタンガンだ。射程距離は5~6mだが、瞬間的に5万ボルトもの電気を流して筋肉を一時的に機能不能にする特殊銃だ。なお装弾数1発で、弾の交換には銃口に付いたチップの様な電極を取り替えるだけだ。

※日本では知名度は低いものの海外の警察(特殊部隊含む)、女性の護身用として高く評価される一方、ショック死などもあるので批判的な声もある。ペイントボール発射用拳銃、ゴム弾を使うショットガンなどのノンリーサルウェポン(非殺傷武器)の一つ、FPSゲーム[SWAT4]などで使用可能、満点クリアには必須品※

≪捕獲ターゲット、確保。状況は?≫
≪この建物はオールクリア、ベータ隊がV-22が脱出しようとしているのを発見し正面口前で交戦中≫
≪そいつに暗殺対象が乗っているようだ。離陸を阻止しろ≫
≪Roger、交戦します≫
外では銃声が酷く響いている、ターゲットが逃げ出さない様に両手を後ろに回してチューブ式の手錠を掛ける。そして、そいつを引き摺りつつ1階へと降りる。1階に着いた頃には銃声が止んでいた。
≪敵ヘリの駆動系を撃ちぬきました、これで上がれないでしょう。敵ヘリのパイロットも観念したようです≫
≪ターゲットは?≫
≪中に居たので射殺しました。行きましょう≫
≪この手で殺せなかったのは残念だが、了解だ。ちょっと銃弾が飛び交うドライブとしゃれ込むか≫
刹那は少し残念そうに言うと、ヘリの中で脅えている子女を見つけた。
≪あれは?≫
≪暗殺ターゲットの子供と妻のようですね、殺しますか?≫
≪そうしたいのは山々だが、いかんせん時間が無い。こいつを車に乗せろ≫
≪Yes Sir≫
部下に連れてきたターゲットを引き渡し、猿轡をしてからベータ隊が持ってきた軽装甲の4輪駆動車に載せる。刹那自身もトラックに乗り込み出発体制を整えさせた。
≪行け!GO!GO!≫
戦闘機に比べれば圧倒的に弱い加速Gを全身に感じつつ、トラックは動き出した。


ファーバンティ上空 18:32
≪こちらタンゴ4、埋め立て地南部に上陸。司令部の制圧に向かう。≫
≪こちらブラボー13。シルバーブリッジの敵防衛陣地を制圧!司令部の制圧に向かう!≫
≪敵軍の幹部を乗せたヘリが司令部から脱出していくぞ。≫
≪全機へ、ヘリを逃すな。≫
≪こちらタンゴ4、目標に到着。突入する。≫
≪こちらブラボー13、目標に到達した。≫
≪5つの機影がマッハ接近中。黄色中隊だ!彼らはまるで、国の最後を見とどけに来たようだな。決着をつけよう!ヘリは仲間にまかせろ。戦争を終わらせてくれ!≫
脱出しようとするV-22を狙っていた所にAWACSが新手の情報を伝えてきた。メビウス中隊を殲滅した、アクィラ隊。いつも通りの五機・・・いや、"たった"の五機だ。今の自分には奴等を凌駕できる腕前とスホーイシリーズの中でも俊敏なSu-37を5機相手でも十分戦えるピーキーな戦闘機
≪・・・・任せなさい、スカイアイ。生きて帰ってくるわよ、貴方への誕生日プレゼントを持ってね!≫
≪・・・そうだな。会敵点に接近!警戒せよ≫
≪1機で戦うな。5機でやる!≫
メビウス1の思考に"逃げる"や"負ける"という考えは無かった。ただただ、目の前に現れた敵機を撃墜する事のみしかなかった。兵装はAIM-9X4発、機関砲が850発、燃料は増槽内にまだ残っているので十分すぎる。
≪勝負だ!リボン付き!俺が戦端を開く!先には撃つなよ!≫
≪上等よ、イエロー13!5機で来るなら一歩たりとも退くものですか!≫
互いに420ktで接近、相対速度は840ktを数えた。メビウス1のAIM-9Xとイエロー13のR-73が同時に敵機の熱源を捉えたことを示すトーン音が最高潮を迎える。二機のパイロットは同時にトリガーを引いた。
≪≪FOX2!!≫≫
AIM-9XとR-73は同時に発射され、それをMWSで捉えた二機は互いにフレアを大量に撒いてバレルロール。両方のミサイルは外れ、別々の新たな熱源を追い始める。
≪バラード1!かわせ!≫
≪レッド・リーダーかわすんだ!ブレイク!≫
≪≪言われなくとも!≫≫
新たに狙われた二機も運動エネルギーを失ったミサイルを悠々とかわす。それに集る様に残存航空戦力が集結していた。ISAF最強の部隊の戦域内戦力20機とエルジアの最強の部隊残存18機が上空で格闘戦に入った。互いにBVRミサイルは切らしていたのだ。普通の航空戦ならば制空システムが崩壊しやすい格闘戦には入らない。しかし、互いに退く事は出来ないのだ。どちらかが退けば制空権は残った者へと渡る。
≪天使とダンスだ!全隊突入するぞ!ロクに通信も出来なくなるだろうが、全員生きてもどれ!≫
≪ドックファイトだ!レイピア4、俺のケツを見ててくれ!≫
≪接触点に接近!Engage!レッドリーダーより全機、ISAF軍を追い出せ!≫
≪ヘイロー5、右を蹴れ!スロットルを最大にしろ!≫
≪360度全方向戦闘機だらけか!味方を撃つなよ!月詠Engage!≫
≪エメットリーダーFOX2、FOX2!!≫
≪ブルー8!ミサイルだ!下方から来るぞ!≫
最後の乱戦が始まった、その上空を黄色とメビウス1とが戦闘を続けている。
≪リボン付きの真後ろを取った!FOX2!≫
≪喰らうものですか!フレア射出!IRジャマー作動!ブレイク!≫
≪此方6、また外しちまった!なんて機動しやがる!!≫
≪6、一機で突っかかるな。14と連携を取れ≫
≪甘いですよ!ガン!≫
ヴォオオオオオオオオ!!!ガガガガガガ!
メビウス1は冷静に一機のSu-37をロックオンし、機関砲を放った。何発かが主翼と胴体に命中した。しかし、まだ闘志は衰えずA/Bを炊いて激しく旋回する。
≪クソッ!1被弾した!ですがまだやれます!≫
≪脱出しろ、1!燃料を曳いてる!火がつくぞ!≫
≪・・・了解!ご無事で!1、イジェクティン!≫
≪スプラッシュ1!後4機!≫
そしてもう一機の黄色に喰いつこうとすると、先ほど撃ってきた黄色ともう一機の黄色が等間隔を持って迫ってくる。
≪流石・・・と言えますが!≫
スロットルをA/Bの6段階の最大の位置に持っていくと、AIM-9Xを選択。距離1.5マイルまで急速接近し、トリガーを引いた瞬間に操縦桿を右手前に引っ張った。
≪クソ!振り切れない!3、脱出します!!≫
≪メビウス1、さらに一機撃墜!6時に二機いるぞ!≫
≪3の脱出を確認、13より残存機へ、確実に仕留めろ!≫
≪分かってます!FOX2!≫
MWSがヒステリック女の様に警告を与えてくる。メビウス1は海面に向けて一直線に向かっていた。地上接近警報装置が作動し、HUDに><印が出てきた。上昇の為に操縦桿を引き、スロットルを戻す。と同時に残っているフレアを射出、さらに高Gで首が上がりにくいのを無理矢理に上げてJHMCSのHMD照準を追ってくる二機に向けた。トーン音が最大を示すが、発射を待った。ミサイルが海面に突っ込む
≪グゥ・・・・ッ≫
≪!今のをかわした!?≫
相手はもう一度食らわせるために此方より旋回を小さくする為にエアブレーキを展開しながら接近してきた。
≪それを待っていたのよ!FOX2!FOX2!≫
海面スレスレで、ウェポンベイから発射されたAIM-9Xは一度機体の正面に出てから敵機に向かった。それに合わせてメビウス1もスロットルをA/Bに叩き込み上昇に入る。AIM‐9Ⅹは機体側の誘導に従い、シーカーを最大限使って二機を追跡する。AIM‐9Xモーターの有効時間が延伸され、機動プログラミングが最大限効率的なものに換装され、推力偏向ノズルを装備するとともに、AIM-9Lより操舵翼を前翼から後翼に変更し機動性も向上,そして広いシーカー角を持つ最新鋭のフレアにも強い赤外線画像誘導方式ミサイルだ。

(同じレベルのものに日本の04式空対空誘導弾通称AAM-5、イギリスのASRAAM、ロシアのR‐73、ドイツのIRIS-T、イスラエルのパイソン5、中国のPL‐9、フランスのMICA等・・・多数が製作されている。対戦闘機で必中距離ならば百発百中は当たり前、フレアをフレアとして、戦闘機を戦闘機として認識できる赤外線画像追跡シーカー+多くが空力特性に優れ、モーターの持続時間が長めに設定され、動翼+TVC※推力偏向ノズル※を備えるミサイル。)

≪クソッ!こっちにきやがった!14!ブレイクだ!ブレイクしろ!!フレア撒け!≫
≪かわせるモノならかわして見なさい、必中距離割り込みギリギリだけど運動エネルギーは最高の状態なのだから≫
≪ダメだ間に合わん!14脱出する!≫
≪クソ!被弾した!13すみません!脱出します!≫
堕ちて行く二機の敵機を尻目にメビウス1は最後の一機、イエロー13と対峙した。
≪さらに腕を上げたな、リボン付き≫
≪フフ・・・、元はといえば貴方達のせいだったのにね。残念だわ・・・本当に・・・同じソラを並んで飛べなくて≫
≪気が合うんだな、俺達だってそうしたかったさ。軍人ってのはこれだから困る≫
≪そうね、でも貴方と私は敵同士でどちらかがこの空から堕ちなければならない≫
≪勿論分かってるさ。それが互いに与えられた義務だ。行くぞ!≫
≪望むところよ!!≫


ファーバンティ市内 18:35
≪アルファ05負傷!メディックパック誰か持ってないか!≫
≪ベータ04弾切れだ!AKMに持ち替える!≫
状況はシルバーブリッジに向けて疾走して行くに連れて悪化していく。敵はエルジア軍からISAF軍へと変わり、弾が切れる者、銃弾を喰らって負傷する者が増えている。刹那は全車に損害報告をさせた
≪コマンダーより各車へ、損害報告!≫
≪1号車負傷者4名、一名重傷!≫
≪2号車負傷者3名、されど全員軽傷なり!戦闘続行!≫
≪3号車負傷者5名!重傷2名!残弾が余りありません!≫
≪4号車負傷者2名、1名重傷!されど士気旺盛!残弾を再分配します!≫

≪コマンダー了解、戦闘続行だ≫
≪敵戦車1時方向から進出してきます!≫
部下の報告を受け、即座に1号車に伝達する。
≪RPG1時方向!捉え次第撃て!≫
≪了解!バックブラスト安全確認良し・・・Fire!!
バシュッ!シャアアアアア!ガン!
RPG29が僅かな白煙を残し敵戦車に撃ち込まれる。
≪命中!次弾用意!レオパルド2がRPG29一発で大破するとは思えん!≫
≪Roger!もう一発だ!AT-4用意!≫
案の定敵戦車は砲塔を此方に向けた。
≪1号車!左にドリフトしろ!2号車!ハンドル右に切れ!!≫
≪≪Copy!!≫≫
ドンッ!ギュンッ!!チッ・・・ドオン・・・
砲弾が一号車の荷台に立ちながら指揮、応戦していた刹那の右腕を掠めた。
≪ッッ!?クソッ!HEAT弾が腕を掠めたぞ!クソッタレ!3号車殺れ!今すぐに!!≫
≪射線確保!AT-4撃ちます!≫
バンッ!!シャウッッ!ドンッ!!・・・・・・・グワンッ!!
AT-4のHEAT弾がレオパルド2の正面砲塔装甲に直撃、数秒後砲塔を吹き飛ばした。
≪敵戦車撃破!歩兵の銃撃に注意を払え!!≫
≪5時方向敵追撃車両!ハンヴィー4台!!≫
≪デシーカ使え!ハンヴィーなら貫通する!!≫
≪4号車Roger!!≫
追跡車両はどん尻の4号車に迎撃をさせるよう指示した直後、視界の端に接近してくるヘリを見た
≪3時方向敵戦闘ヘリ!タイガーだ!気をつけろ!≫
≪8時方向敵IFV!≫
≪スモークグレネードを前方に投射!スモークの中を突っ切る!戦闘ヘリは2号車のデシーカに任せるぞ!IFVはRPG7でやる!掩護しろ!≫
≪≪≪Copy!スモークグレネード投射!≫≫≫
刹那はRPG7を取り出し、IFVに向ける。対RPG用の鉄柵はあるが非装甲の場所を狙った。
バシュッ!!シャアアアアアアアア・・・・・ドンッ!
砲塔のミサイルコンテナに直撃、その直後スモークの中に突入した。
≪命中!IFV撃破未確認!戦闘ヘリは!?≫
≪現在迎撃中!IFV砲塔大破!Nice Shotです!≫
≪了解!≫
スモークを抜けるとシルバーブリッジの入り口に差し掛かっていた。此処らへんの敵は小休止を取っている。
≪チャンスだ!一気に切り抜ける!!≫
刹那もAKSを小休止中の敵の兵士に射撃、当たる保障はゼロに近いが牽制射撃としては十分だ。
≪戦闘ヘリが引き返します!燃料補給でしょうか・・・≫
≪だと良いが・・・だが良い方向には捉えるな。全車、残弾を再配分しろ。負傷者の容態は?≫
≪全員安定してます≫
≪宜しい、後2分で橋を突破しエルジア試験飛行場へと向かう。そこがORP(集結地点)だ。ETA10分≫
リロードしながら指示を飛ばす。全車両は健在、負傷者の状況もマシだ。
≪敵兵が相当少なくなってきました。これなら抜けれそうです≫
≪それだけ敵の戦線が押しあがっているという事だ。我々には好都合だが・・・≫
≪脱出できる手段は整っているんですか?でなければ玉砕ですよ≫
≪当然だ。まあ、怪しい所もあるにはあるがな≫
橋を突破し、敵補給部隊の車列の中をかき乱すように走り続ける。市街地を抜けるのに5分とかからなかった。
≪市街地を抜けました!ベクトルは!?≫
≪0-2-1だ。距離3マイル≫
≪Roger!≫

ファーバンティ上空 18:36
≪ハアッ・・・ク・・・!≫
エーリッヒは敵機の動きに翻弄されそうになるのをどうにかして冷静に飛んで抑えていた。敵の戦闘機の機動性は並ではない。Su-37ですら一度もロックオンできない。HMDでやろうとすれば最小半径に割り込むほど相手の旋回半径は小さい
≪どうやら機体が重いようね?イエロー13・・・でも・・クゥ・・・一度も背後を取らせないなんて・・流石よ≫
≪ああ、お前に喰らわせる為に積んで来たR-73も役立たずだ。これではあの世の4や堕ちて行った仲間に申し訳が立たん!≫
エーリッヒは320ktでAOAリミッタを解除した。スホーイの十八番とも言える低速戦闘で同じくスホーイの設計が施されたX-02に勝負を挑もうとしたのだ。しかも試験機であるX-02はAOAリミッタ解除装置は無い。
≪旋回が鋭くなった・・・?ならばっ!≫
≪ほお・・・確かに付いて来れてるな。しかし、その重い可変翼では限界はあろう!≫
X-02はAOAリミッタがかかるギリギリまでSu-37に追い縋る。しかし、幾ら軽く作られた主翼であっても重たくて複雑な可変翼システムを備えるX-02はAOAリミットで旋回が頭打ちとなった。
≪・・・・ッ!ダメなの!?もう少しなのに!≫
≪残念だったな、リボン付き!FOX2!≫
距離を十分取ったエーリッヒはR-73を時間差を置いて4本放った。
≪!!クソォ!≫
メビウス1は急降下で速度エネルギーを稼いでフレアを放つ。しかし、速度エネルギーが低すぎる。まずは一発が近接信管が作動し、機体に穴を開けた。
≪あぐっ!≫
≪悪いが、これが戦争だ。お前は未熟すぎたんだよ。空戦能力では超一流でもな≫
相手のミサイルの爆発の衝撃波によって漏れた喘ぎ声に罪悪感を覚えつつ、エーリッヒはメビウス1に言った。残りのミサイルも一気に傷付いたX-02に襲い掛かる。その時、3機の戦闘機がミサイルとメビウス1の間を高速で通り抜けた。新たな大きい熱源をミサイルは追跡する。それらは見事なアローヘッド編隊で突き抜けたのだ。フレアをエンジェルの翼のようにばら撒きながらその編隊はブレイクする
≪何っ!?≫
≪これで助けたのは2回目だな、メビウス1≫
≪月詠・・・≫
≪ちゃんと礼は返してくれよ!メビウス1!!≫
≪・・・・レイピア1≫
≪メビウス1、喰っちまえ!≫
≪エメット1まで・・・何で・・・?≫
≪決まってます。仲間だからで御座いますです≫
ダルモエード3がメビウス1のキャノピーの真上へとゆっくり近付いて言った。
≪黄色も、あなたも。皆仲間の為に戦っているので御座います。この空域でそれを想っていないものは御座いません。その護りたい気持ちの強い方が勝つ。さあ、速度は十分です!思う存分反撃なさい!≫
ロールをして離れていくダルモエード3を見てメビウス1はハッとした。速度は十分なまでに加速している。燃料油圧系共に異常なし。戦えるのだ。半ば諦めかけていた闘志が復活し機首を上げさせた。エーリッヒは機体を立て直し、下方から突き上げてくるメビウス1に備えた
≪これでイーブンね!行くわよ!≫
≪こっちも軽くなったんだ、全力で行かせて貰うぞ≫
二機がすれ違いざまに機銃を叩き込むが、互いに掠らなかった。
≪逃がすものですか!≫
≪逃げる心算など無い、来いよ≫
エーリッヒはメビウス1を誘っていた。機銃戦だけでしか効果の無いポストールマニューバならば勝ち目は十分ある。
≪!奴は逃げる心算か!?≫
≪奴は・・・誘っているんです!≫
メビウス1もイエロー13が誘ってるのは分かっている。しかし、武装はGUNのみで補給している暇は無いし此処で引けば奴は周りの僚機に喰われる。それでは自分もスッキリしない。白か、黒か。それをハッキリさせたかったのだ。
≪リボン付き、お前が乗ってくれるか冷や冷やしていたんだ。乗ってくれなかったら今頃脱出を余儀なくさせられていただろう≫
≪私は私の手で貴方を落としたいの、他の人達に邪魔なんてさせるものですか!≫
≪やってみろ!≫
メビウス1はイエロー13の後方に纏わりつくように操縦桿とスロットルを細かく動かしていく、イエロー13は機体をシザース・バレルロールとマニューバを繰り返して速度を落としながらメビウス1に射線を取らせないように機動を取る
≪く・・・Gがキツイな・・・≫
≪射線を取らせないよう機動か・・・やるわね≫
二機は首都の上空で激しい空中戦を繰り広げている。そんな中へ接近する一機の機影が高度85000ft、速度マッハ2.4で接近していた。AWACSすら気付かないような高高度限定のECMをかけて侵攻して来る灰色のファントムⅡが死神の鎌を持って・・・

ファーバンティ郊外 エルジア軍試験飛行場 18:45
≪全車、撤退完了しました≫
刹那は部下の報告を受けて頷いた。
≪・・・・時間だ≫
≪は?≫
≪!方位0-0-0!低高度より戦闘ヘリ1機!中型輸送ヘリ3機!≫
部下の報告を受けてデシーカ重機関銃を構える車両上の兵士に刹那は言った。
≪来たぞ、迎えが。全隊、あのヘリに搭乗して撤退する!車両を放棄し撤退準備しろ!!≫
≪りょ、了解!≫
ヘリが着陸すると戦闘ヘリ・・・Mi-24AハインドAから2、3人の兵士が向かってくる。
「よう、死神の旦那。今度の積荷は大したモンだな。へへっ」
「こいつらを頼むぞ、ズボフ。貴様なら逃がしてくれると信じているよ」
兵士達の隊長角の様な男と刹那は微笑しながら話し合っている。その間に他の隊員も中型輸送ヘリCH-46シーナイトに乗り込んでいく。
「相変わらず旦那は、時間に正確で助かるな。一分のズレも無い」
「数少ない取り得の一つだ。18:47には離陸してくれ」
「了解だ」
男と話し終えた刹那はヘリには乗らず飛行場の管制塔に向かった。
≪コマンダー、乗らないんですか?≫
≪私には特急便がある。それもとびっきりのな。後はそいつ等に任せりゃオーシアまで連れて行ってくれる。任せる事だ≫
≪・・・・了解しました≫
クロスコムの電源を切り、散らかっている管制塔の適当な椅子を見つけて座った。次々離陸していくヘリを見送って、煙草に火をつけた。
「"主を何時まで待たせる"のかな?我が愛機は・・・・」

ファーバンティ上空 18:42
≪もう少し・・・!≫
メビウス1はもう少しでホットラインに乗るSu-37を睨みつけた。
≪甘い!≫
≪消えた・・・!?≫
メビウス1はBINGO寸前の燃料計に一瞬目をやった直後我が目を疑った。そこに居たSu-37が消えたのだ。瞬時に後方に目をやって、そこに敵機の姿を見てさらに驚いた
≪!しまった!クルビット!?≫
≪貰ったぞ!リボン付き!≫
Su-37はその特徴的な機体設計と推力変更ノズルを備えたエンジンを駆使して失速ギリギリの速度から機首を直角に挙げた直後に後方に機首を落としてメビウス1を正面に捉えた。つまりそのまま空中で一回転して後方を取ったのだ。Gsh-301の弾数は僅か150発、10秒も射撃は持たないがメビウス1一機を食うには十分な弾数だ。メビウス1も即応し、ラダーを蹴ってA/Bにスロットルを叩き込み即座に機体を射線を外す。直後にBINGO Fuelの警報が鳴る。帰還に必要最小限の燃料しかない事を警告しているのだ
≪直ぐには狙わせてもらえない・・・か。腕は確かだな≫
≪クソォ・・・もうA/Bは・・・≫
燃料を大量に喰うA/Bはもう一度でも焚けば帰還は不可能になる。スロットルを弱めにして若干降下しながら敵機を引き付け始める。
≪流石に粘るな、だがどんな戦闘機だろうがこれほど長い間エンジン出力を高めて空戦と対地攻撃をしていれば燃料切れは免れん≫
≪だったら落として見せなさい!≫
≪その心算だ!≫
メビウス1は流石に降下しながらのマニューバーでは限界がある事を知っていた。しかも降下すれば燃料消費は悪くなる。そしてとうとうPULL UPの警報が鳴り始めた
≪さあ、もう下には逃げられん!どうするんだ?≫
≪ついて来れるかしら?ビル街を抜ける芸当なんて真似できる?≫
メビウス1は機体をファーバンティ市街地のビル街に突っ込ませた。
≪面白い、やってやろうじゃないか≫
イエロー13もメビウス1のX-02に追従しビル街へと侵入した。メビウス1の狙いはビルを壁として攻撃をかわしつつ、チャンスを探る事だった。もう基地に戻る燃料は無い。僚機も多くが燃料切れでやむなく帰投し始めている。既にこのソラは二機の独壇場と化していた
≪はあ・・・はあ・・・≫
流石にビル街を抜けるのは心臓に悪い。高速でビルとビルの間をすり抜けて、ビルのガラスを割りながら縫って行く。
≪!見失った・・・≫
イエロー13はビル街を一旦抜け、改めてリボン付きを探し始めた。その瞬間をメビウス1は待っていた。
≪頂き!≫
≪しまった!!真下か!≫
ヴォオオオオオオオオオオ!!!!!ガンガンガンガンガン!!!
勝負はようやく決まった。イエロー13のSu-37のエンジンは二基とも火災を起こし、尾翼も捥げた。
≪脱出しろ!イエロー13!!もう勝負は決まったんだ!≫
メビウス1はさらに飛び続けようとするイエロー13の真横に占位しイエロー13に呼びかけた。しかし応答は無い。数秒後キャノピーが飛んだ。
(・・・よかった・・・脱出する気なんだ・・・)
そう想ったが、何時まで経っても射出座席が作動する事が無かった。キャノピーが飛ばせるならまだ電気系統は生きている筈・・・どうした事かとさらに呼びかける
≪イエロー13!早く脱出しろ!早く!!≫
無線が雑音と、空切り音を拾いながらようやく応答があった。
≪・・・それは無理だ、リボン付き。・・・どうやら射出座席はいかれてるらしい・・・≫
≪え・・・?≫
イエロー13はバイザーを上げて風圧で目を細めながらも、メビウス1を見ながら言った。
≪・・・参ったよ、私の完敗だ。・・・・最期にお前の様なパイロットに会えて良かったと思う。此処までスッキリして負けたのも初めてだ≫
≪・・・・・・≫
≪顔を、見せてくれないか?冥土のあいつに・・・4にお前がどんな奴だったかを教えてやりたい≫
メビウス1は高度をグングン下げていくイエロー13の言葉通りに、バイザーを上げてマスクを外した。
≪・・・・これはまた驚いた・・・そっくりだな、4に。・・・ありがとう、行ってくれ≫
≪で、でも!≫
オープンチャンネルでイエロー13の声を拾っていた無線はそこで切れた。イエロー13は手で行けと合図する。メビウス1は目を逸らして上空へ昇る為に操縦桿を引いた。その瞬間、Su-37から何かが飛んでいった。その直後、機体が地上へと墜落した。エーリッヒ・クリスマンを乗せたまま・・・
≪撃墜!やったぞ!レーダーから最後の機影が消えた!≫
≪こちらタンゴ8、エルジア軍司令部を完全制圧≫
≪5機はメビウス1が撃墜した。制空権は完全に掌握した≫
≪生き残ったな。メビウス1≫
≪…エルジア軍兵士に告ぐ。戦闘を停止し、次の場所へ投降せよ。中央公園総合テニスコート、国立図書館噴水広場…≫
≪おい、マーチンこちらパトロール隊。逃げ遅れたヘリの中で、女性と女の子を保護した。将校らしい男の死体もある。妙にでかい階級章をつけているぞ。一応作戦本部に連絡してくれ≫
その後の無線は全て上の空だった。機体を直ぐ近くの空港へと向け、他の僚機と編隊を組んだ。その直後、MWSがいきなり警報を告げた。
≪何!?≫
≪馬鹿な!?真上だと!?何故今まで気付かなかった!≫
≪ブレイクだ!ブレイクしろ!≫
一番反応の遅かったのは、運悪くメビウス1だった。非情なミサイルはメビウス1のX-02と編隊を組んでいた僚機共々、たった一発のミサイルの近接信管で巻き込んだ。衝撃で頭をMFDのパネルにぶつけるほど爆発は近く、大きかった
≪イジェクトだ!被弾機は全機イジェクトしろ!≫
AWACSが即座に指示を出す。被弾した全機がイジェクションレバーを引いた。14~15Gと言う高Gで気を失いったが、パラシーュトが開くショックで気が付いた。携帯無線がAWACSの慌しい声を拾う
≪・・・敵機高度75000!?840ktだと!?何だこれは!?レイピア中隊!補給が済み次第追撃しろ!Unkownは方位0-9-5に向け降下・減速中!敵機を逃がすな!≫

Fin ※次で第二部 ACE COMBAT04 編は終了です

 

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