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第三十一話:生者と死者

ノースポイント 入間統合自衛軍基地 5月1日 04:00
「ん・・・あ、おはようございます・・・」
「ああ、どうした?随分と早いじゃないか」
刹那は迷彩服を着ながらベットで下着の状態で寝ぼけているメビウス1を見て苦笑した。
「それは・・・こっちの台詞ですよう・・・・しかも何で電気も点けずに着替えているんですかぁ?」
「わっ!その格好でベットから出るんじゃない!」
彼女は刹那を逃がさまいとタンクトップやツナギすら着ずに抱きついてきた。困った刹那は仕方なく彼女に説明を開始する。
「・・・・仕事だ。私の副職のな」
「何ですか?それ・・・。私以外の女の人とも付き合っているんですかぁ・・・?」
「あのなぁ・・・・。UNFの仕事だ。作戦令状が届いたから行かなきゃいけないのだ。つうか、早く何か着ろ。重要な作戦前に私を誘惑するな」
彼女に背を向けながら刹那は言った。昨日の夜も刹那は彼女を抱いた。と言ってもSMに近いようなものだ。恨む者と恨まれる者が近づいたら必然的にそうなる。彼女は作戦と言うワードで一気に覚醒した。軍人として彼を見送る事にした
「・・・・じゃあ、早く帰ってきてくださいね。首を長くして待ってますよ」
「・・・明後日までには戻って来れる筈だが、流石にシバかれるのはもう御免だ。暫くの間は夜の運動は無しだ。分かったな?」
「え~?」
別に彼女の事が好きでも嫌いでもない。彼女が自分を欲しているからこそ、その欲求に答えているだけだ。しかし、それで毎晩のように殴られたり、蹴られるのは嫌になった。今の刹那にとっては携帯に届いた一件の暗号メールは助け舟の様なものだった。64式小銃と弾薬を取り、レッグホルスターの拳銃の残弾数を確かめると愛機へと向かう。行き先は"地獄の一丁目"ベルーサ共和国の政府軍特殊部隊キャンプの最寄飛行場。そこまでの航法を確認し、コックピットに置いている耐Gスーツを着ると、救命胴衣を着て、酸素供給用マスク付きヘルメットを被る。
≪タワー、此方ブラックデスサイズ。コード42731、タキシー許可を≫
≪音紋・コード認証・・・・良し、了解。ブラックデスサイズ、タキシー許可。世界平和の為に行ってらっしゃい≫
≪ラジャー≫
エンジンスターターを使ってエンジンを始動させる。常にこういう任務があるので、燃料は常に満タン、増槽をつけて待機している。BLACK OPSは常に出撃準備を怠らない。それは何時敵が動くか分からないからである。今回はベルーサの武器商人がテロリスト指定の武装組織[セブンズウェーズ]にAK47を5000丁、セムテックスハイエクスプローション炸薬と信管セットで100セット売るらしい。しかもそれはマフィア等が決めた協定ルートから外れたものだった。本来それらは現地の正規軍によって片される筈だったが、強固な防衛網によって断念された。
≪それじゃ、行ってくる。ロックロール!≫
刹那は戦いに向かう時だけ目が生きている。それは人間として愉しいのではなく、殺戮機械として愉しんでいる。

滑走路から飛び立つF-4を見ていたメビウス1は何か虚しい感じがした。
(何でだろう・・・・憎い筈のあの男が、何時の間にか愛せるようになった・・・・。隊長を落とした黄色と戦う理由を作ったあの男が・・・・)
そう思いながら自身もCAPの任務に備える為に、着替えを始める。その時彼女は気付いた。いつ間にかあいつが居なくなった事で、開放感よりも寂しく、苦しさが彼女の胸の中に居座っている事を。近くに奴がいないと、なぜか焦燥感にあおられる事を。
「よう、随分と楽しかったようだな」
「!?」
開いたドアから声を掛けられた。その主はレイピア1だった。
「・・・・えっと・・・もしかして聞こえてました?」
「ベットが軋む音が俺の隣部屋に響いて来るんだ。喘ぎ声は聞こえなかったけどな」
「~~ッッ!」
昨日も一昨日の夜も声は殺していた。恐らくこの事を知っているのは彼だけだろう。
「あ、あ、あの・・この事は・・・」
「勿論他言無用だ。ISAFのエースが非正規軍のSAFの人間とやっていた何て言えないし、ジョークとして受け取られるだけだ。安心しろ。・・・・それよりも奴は何をしに行ったんだ?SAFの任務とは思えないが」
「UNFの作戦とは言ってましたが・・・・」
「UNF?もしかして新統合軍か!?」
レイピア1は単純に驚いた。噂レベルだが、国連の独自戦力がこの戦争に関与しているらしいと聞いた事がある。それ関連だと思ったのだ。
「飛んでいくにしては東に飛んでいったみたいですけど・・・東にあるのはベルーサ大陸だけですよ?亡命とかそんなのじゃないと思いますけど・・・・」
「・・・・じゃあ、別の任務か。しかし、奴は一体何者なんだ。ただの傭兵でもないし、今度は新統合軍の話もあるし・・・・あいつはどれだけの組織に関与して、どれだけの影響力を持っているのか・・・」
「そんなの、分かる筈はないですよ。あの人は死人同然みたい目を私に向けるんですから」
「はあ?お前等愛し合ってるんじゃなか・・・」
ボコッ!
レイピア1はメビウス1のアッパーカットの直撃を受けて、2~3m飛ばされた。
「冗談じゃない!誰があんな男と!」
「だ、だからって・・・いきなりアッパーはないっしょ・・・」
「だったら、新品のケツの穴が欲しいですか?喜んで9mmの穴を開けてあげますよ?それとも11.4mmがいいですか?」
「わー!!前言撤回するから!!銃に手をかけないでー!」

ベルーサ共和国 09:00
「お久しぶりです、中佐」
「歓迎なら必要ない。作戦指揮所は」
「此方です」
顔を隠した兵士が機体から降りて、装備を外し、武器を取った刹那を迎える。
「・・・来ましたか。中佐殿」
「用件は知っている。問題はターゲットをどうやって潰すか、だ」
「ええ・・・取引現場までに500人以上の歩哨が居ます」
「大したものだな」
刹那は苦笑しながら指揮官を見る。彼の目は死んでいた。
(BLACK OPSが活動を下火にしていたから彼等の疲労が溜まっているのか・・・申し訳ないな)
「・・・私一人で行く。単独なら見つかりにくい」
「えっ!?お、お待ち下さい!それでは我々の・・・」
「大丈夫だ。お前等の力もいらない。ゆっくり休んでいろ」
「し、しかし!」
尚も食い下がる彼に対して刹那は鋭く睨んでいった。
「命令だ。聞こえんのか!?」
「は・・・ハッ!」
気圧された彼は、慌てて答えた。
「では、無線機を借りるぞ。取引は10:30からだったな」
「は、はい」
物資集積所から無線機を持ってこさせ、7.62mm20連マガジンを10箱貰うと直ぐに目的地に向けて歩き出した。その時、刹那は指揮官の疲れた顔から約一月前に酷く言い負かした男を思い出した。
(そう言えばあいつどうなったけか・・・・)

時は戻りサンサルバシオン スカイキッド

サンサルバシオン スカイキッド 4月4日 23:00
「・・・・またか」
エーリッヒはまた4との浅く短い夢を見て目が覚めた。毎回彼女が微笑みながら自分の手を引っ張って愉しく二人だけの散歩を行なっている、そして突然その4の腕を誰かが切断する所で終わる。そして目が覚めた後は奴の言葉が反響して聞こえた。
(ハッ!・・・降伏しない敵を放置しておけば、給弾整備されたらまた戦力と化す。それを放置して何が兵士だ。笑わせる)
「・・・・・クソッ」
(甘い・・な。甘すぎる。結局はご都合主義の貴族の坊ちゃんか。それに戦う意思の無い敵を撃ったのは貴様もだろう?)
「・・・・違うッッ!」
(いい加減、この戦争と言う戯事にも飽きてきたがな・・・)
「黙れ・・・・ッッ!」
(おっと、"本音が出てしまった"か。・・・・私にとっては全てが戯事で暇潰しでしかない・・・。私が死ぬまでのな。私を失望させるなよ?"人間"?)
「貴様に・・・貴様なんかにッッ!畜生!!
息が荒くなり、大声を上げる。それは小さな酒場で、大きく反響した。あの少年が心配そうに自分を見ている。
「隊長さん・・・大丈夫?」
それだけではない、酒場にいた全員の隊員と、酒場の少女もこっちを見た。
「ああ、大丈夫だ・・・・!」
その時に、自分のポケットで紙が擦れる音がした。それは今更届いたSTNを破壊したパイロット達を取り上げたISAF軍の新聞のFAXだった。その時、怒り半分やけくそ半分でその紙を壁に貼り付けてピンで留めた。
「見ろ!・・・敵にも賞賛すべきパイロットもいる!こういう敵は見習え!奴等はコソコソと人の弱みをついて動き回るコソ泥だけではないことを覚えておけ!!」
彼はそれを一気に言うと何かが吹っ切れたように、落ち着いた。皆は「4の仇はとる」とか言ったり泣き出す者も出た。そんな中酒場の娘だけ、自分に対して何らかの嫉妬のようなものを感じた。その視線から逃げるようにエーリッヒはそこから立ち去って車に乗り込んだ。

4月5日 サンサルバシオン旧市街内 01:45
「・・・・!」
タッタッタッタッ・・・・・
また奴がいるのではと思い、基地に戻るに戻れずエーリッヒはスカイキッドの直ぐ近くで車を止めていた。そんな時、MPのそれとは程遠い走る運動靴の足音が聞こえてきた。それは直ぐ近くで止まった。
「ハァ・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・・」
女のしかも若い肩でする様な荒い息が聞こえる。
ダッダッダッダッダッダッ!!ピーッ!!ピーッ!
その直後MPの軍靴と警笛の音が一旦近づくとまた遠ざかった。どうやらこの女を追っているらしい。女は音が聞こえなくなると同時に駆け出した。しかし、そいつの目と私の目が合った。
「ハアッ!」
彼女の息を一気に吸うを音が狭い路地に響く。こっちに気付いたのだ。エーリッヒは"レジスタンス"を捕らえる為にドアを開けて、外に出る。彼女は息をゆっくりと整えつつ、壁に張り付いた。観念した様だ。ゆっくりと彼女はこちらを見上げた。その顔を見てエーリッヒは驚いた。
(酒場の―――娘!?)
「・・・・ッ僕らの街から出て行け!!インベーダーめ!」
背後から聞きなれた声が聞こえたが、それは何時よりも強く、覚悟の入った言葉だった。エーリッヒが振り返るのと同時に娘は声の主・・・・自分に銃を構えるハーモニカの少年に駆け寄った。
「・・・そんなに俺たちが憎いか?」
「・・・・・・」
相手は此方の質問には答えなかった。否、答えられなかったといったほうが良いかも知れない。少しの間沈黙が訪れる。エーリッヒは思った。
(こいつらが4の機に・・・・・ラインハルトなら、直ぐに銃を抜くだろうな。そして躊躇無く撃つだろう。・・・・・俺は・・・・奴とは違う)
ダッダッダッダッダッダッ!!ピー!ピリリリー!!
MPが戻ってきたようだ。エーリッヒは決意を決めて言った。
「行け!」
その言葉を聞いた彼等は酒場に向けて走り出した。
「これで・・・いいか?ネール・・・・」
エーリッヒは天を仰ぎながら4の名を言った。

ベルーサ共和国 5月1日 11:45
指揮官は驚いた。戻って来た刹那は全身返り血だらけ、しかも満足げな顔で帰ってきた。
「実にお粗末な連中だ。全て喰い尽すのに30分も要らなかった」
刹那は武器商人の生首とテロリストの首謀者の生首を兵士に渡すと、地面に座った。
「やはり、あなたはおっかない。全て喰らってきて腹を一杯にしたわけですか」
「まあ、な。クソッたれな武器商人の肉は不味い。ドブの味がする。そういう奴は闇世界でも厄介者の部類に入る」
刹那はニッコリとしながら言った。小銃の弾は尽き、ナイフは折れて、拳銃弾もなくなっていたのだ。満足に存分に人間達を食事したのだろう。
「一休みしたら、ノースポイントに戻る。掃討作戦を始めてくれ。仕留め損ねが10匹ほど隠れているからな」
「了解!分隊集合!」
彼等は兵士を集め出した。刹那は機体に戻ると眠りについた。今日だけは刹那は願わなかった。

目が覚めませんように

とは・・・・

Fin
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第三十話:憎む者、憎まれる者

4月30日 ノースポイント 入間統合自衛軍基地 14:10
「・・・雨・・・何故だろう・・・」
刹那は、エプロン(駐機場)でボーッと空を眺めていた。少しずつ、ソラが泣く様な雨が降ってきた。
「・・・詩人は・・・割には合わないと・・・思って、いたんだが・・・」
その言葉は、雨水が当たるごとに弱々しくなっている。

ふらっ・・・バタッ

まるで死んだように地面に倒れる。勿論遊んでいる訳ではなく、本当に気絶したのだ。整備員が駆け寄り、大声で医務官が呼ばれる。

入間統合自衛軍基地 医務室 15:20
「過労ですな」
「か、過労?」
死んだように眠っている刹那の隣でSAF指揮官のNASDFの士官はそのあっけない答えについつい聞き返してしまった。過労でパイロットが倒れては戦争が成り立たない。だから休暇は彼にも外地で活動中の隊員にも与えられているのだが・・・
「ええ、過労です。正確には肉体の酷使もありますが・・・一番の要因は・・・精神的に追い詰められているという事でしょうな」
「精神的なダメージ・・・ですか?」
噂を聞きつけたISAF空軍のパイロットや傭兵も集まってきた。医務室の前には人だかりが出来ている。
「恐らく、いじめの様な追い込まれかたでしょう。一応カウンセラーの免許も持っているので、分かります」
「イジメ!?ぐ、軍隊の中でですか!?」
「それ以外は何も思い当たりませんな。この方は現役の時は働きすぎで倒れましたが、今回は誰かが故意的に彼を追い詰めた・・か。若しくは彼自身がそうさせたか・・・です。この方は他人に重荷は背負わせない様に自分だけで何もかもやってしまう」
「・・・こいつを知っているんですか?ただの傭兵なのでは・・?」
その言葉を聞いた医務官は溜め息をつくと一旦刹那の方に目を移してからまた士官に目線を戻した。
「知ってるも何も・・・[黒い死神]と言えばあなただって分かるでしょ・・・・刹那元NASDF一等空佐・・・この基地の・・いや防衛省の直轄の士官で、シューテイングスターと言えば誰にだって分かります」
「・・・へ?」
「此処に居る自衛官で彼を尊敬しない人なんていやしませんし、彼はUNFスペシャルフォース[BLACK OPS]の第三戦闘中隊の中隊長でもあるんです」
「・・・・・・」
BLACK OPSとは、国際連合の軍事機関[UNF]通称[新統合軍]の世界最強のハイテク、ローテクを最大限に駆使した戦闘集団、それはもう化け物揃いで全員がゴルゴ13やシモ・ヘイヘで構成されていると言っても過言ではない。それを聞いた士官は開いた口が塞がらなかった。オーシア軍を壊滅させるのに5日も必要無いと言われるくらいの戦闘力、さらに最強のUNAF戦闘機部隊不死鳥[スカーフェイス]鬼神[ガルム]、怪鳥[ガーゴイル]始祖[ユニコーン]それに、各国の特殊部隊がそれぞれの国の国益の為に行動する時にもかなりのOPSの人間が関わっているという。
その内の第三戦闘中隊は全員がレンジャー資格を持っており、特殊部隊の中でも精鋭と呼ばれる部類から選抜され死者を普通に出すような入隊試験の後、その合格者で構成される人類最強の兵士達で構成される最強・最高・最狂・最凶の中隊。仲間が何人斃れても目すら向けず、どんな犠牲をも厭わず、どんな危険な場所にも瞬時に飛び込む。そしてそいつ等が通った後は地面や壁にはペンペン草すら生えないほどの銃撃痕と爆発口を残すと言う最もエキサイテイングで過激な特殊部隊だ。皆揃って任務を終わらせる為に二次被害なぞ考えず暴れ、殺し、邪魔するものはビルであっても直ぐに爆破する短気っぷりは「死の旋風」と呼ばれる。そんな無法者や破壊神が降臨する所の中隊長とは信じられなかった。見た目によらず彼も破壊神なのだろう。
「五月蝿いぞ。まったくゆっくり気絶もさせてくれんのか」
「ああ、起きましたか。どうですか?体の調子は」
「拒絶反応がまだ起きるのはどうにかしないとな。相当、危険だと思う」
表情を変えずにケロリといっているが、体が痛みに絶えて振るえている。
「暫く様子を見ましょう。胃潰瘍か十二指腸潰瘍だったら大変ですし」
「・・・・それに、最近は白髪が増えて困るよまったく・・・・わざわざ染めなきゃなんないし」
「やはりストレスですか・・・無茶のし過ぎですよ。"中佐"」
「その名で呼ぶな、馬鹿者。傍耳を立てている奴もいるようだしな」
相当無茶をしているのか、雨で濡れた髪には1/3は白くなっていた。彼はどんな兵士がどんな事を言っているのかをも知っていた。そしてその殆どは戦争の引金を引いたものに対する憎悪と憤りだった。それを知ってしまうと言うのはある意味残酷だった。
「では、頑張って」
「ああ、またいずれ――・・・ッ」
刹那は寝せられていた診察台からおりて上着を着て、靴を履くと、そうそうに医務室から出て行った。医務官はそれを咎める事は無かった。だが・・・
(拒絶反応が大きくなっている・・・・。あと・・・10年この状態を維持できれば・・・・良い方か・・・)
少しよろけながら何とかドアを開ける。自分の命は無限に生きられるがどんな能力も劣化はする。さらにそれに体調不良が重なって、最悪の状態へと進みつつあった。
「ハッ・・・・ハアッ・・・クッ・・・・・」
自分の部屋に戻る頃には既に目はぼやけ、足は竦み、ベットに倒れ込むとまた眠りに入る。刹那はいつも寝る前にはこう願う。

二度と目が覚めませんように

と・・・
勿論生きているのだから必ず目は覚める。それはどんな生物でも同様である。しかし、今の刹那には生きると言う行為は苦痛に過ぎず、さりとて世界が自分の能力を必要としている限り"戦死以外"では絶対に死んではならないと、自分よりも上位のコマンドから絶対命令が出されている。このままずうぅっと眠っていれば苦痛も受ける事は無い。だから刹那はそれを望んでいる。そして、自分が死ねる唯一の条件は、全身の細胞の半数以上が再生不可能なほどのダメージを受けるか全身が飛び散るか、そして、不死の能力が劣化し、その影響で死亡。というぐらいしかない。彼はそれでも願う。

――目が、覚めませんように――

しかし、それは不意なる訪問者によって妨げられる事になる。
・・・カチャッ・・・
「!!!」
ドアが開く音で目を覚ました刹那は瞬時にレッグホルスターからSIGP220を引き出して近づく奴に向けた。
「・・・・・ノックぐらいしろ」
銃口の先には珍しくここに入ってきたメビウス1がいた。
「・・・・くたばったかと思ったんですけどね・・・残念です」
「お前よりかは先には死なんよ。特に私を憎んでいる間はな・・・何用だ?」
「いいえ?様子見しに来ただけです」
「嘘が丸見えだ」
「!」
刹那は銃をホルスターに戻しながら言った。彼女の目がこっちを見ておらず、何かを隠しているようだったからだ。
「"心配だから"が抜けているだろう・・・違うか?」
「ッッ!・・・何を根拠にッッ!?」
「ほう、図星か」
いとも簡単に誘導尋問に引っ掛かった彼女は少し驚いたようだった。
「憎悪と愛情は紙一重なのさ。いずれこうなるとは思っていたが」
「・・・愛するがゆえに憎く、憎いがゆえに愛せる・・・そんなのが私にあると・・・・!」
「では、試してみるか?」
不意に刹那の腕が彼女の腕を掴み、ベッドに叩き付けるとそのまま馬乗りになった。1~2秒たってから彼女の腕が抵抗を始めた。
「・・・やはり・・・何故即座に抵抗しない?嫌だったら私の手が伸びてきた時点で後ろに下がるなり、銃を取るなり、なんかのリアクションがあるものだ」
「!・・・・」
彼女は刹那の目から顔を叛けた。
「それどころか、私が触れた瞬間一瞬緊張感がほぐれた様にも見えたしな。何故だ?」
「そ、それは・・・・んっ!」
唇に刹那の唇が重なる。それは子供や肉親とやるような挨拶的なものだったが、メビウス1の心臓を破裂させるほどのショックをもたらした。しかも、良い意味で
「・・・な、なにを・・・・」
「何って、オーシア辺りでは当然の挨拶だろう?それとも私がお前が好きだと思っているのか?馬鹿者」
「・・・・」
「私は誰も好きではないし、嫌いでもない。誰彼も恨みも、愛しもしない。お前はそんな私に何を望んで此処に来た?偶然なんて台詞は私は信じない。偶然なんてこの世には無いんだ。奇跡は起きない事を言う。この状況をひっくり返すお前のジョーカーは何だ?銃か?刃物か?言葉か?それとも体か?ここら辺には誰も来たりはしない。近くの部屋の連中は皆揃ってCAPと言う名の遊覧飛行の最中だ」
目をそらす彼女の目を睨みながら刹那は一気に言った。
「答えろ、馬鹿者」
「・・・・・こうしたかったんです」
「・・・!」
彼女は平静を装いつつ、自分の肩を拘束する刹那の腕を掴みバランスを崩し、ベットに刹那を押し倒しつつ今度は彼女が刹那の上半身に全身を預けた。刹那は彼女がどう動くかを見極める為に、わざと隙だらけの姿勢をとっていた。
「・・さっきの状態じゃ。聞きたい事を聞こうにも聞けませんからね」
「・・・質問か」
「あなたの答え次第で、私は今後の道を決められる。真面目に答えてください」
彼女はそういいながらホルスターの拳銃に手を掛けた。回答次第ではズドンとやるわけだ。それは刹那も同じだ。
「・・・なんで、ノースポイントの陰の防衛大臣とまで言われた貴方がこの戦争の引金をエルジアの最高指揮官に引かせたのですか?」
「・・・・それ、か。まあ良いさ。もうそろそろバラさなきゃと思っていたんでな」
刹那は銃のホルスターから拳銃を取り出すのを止めた。
「・・・懐かしいな。何時だろうか・・・・そう、ユリシリーズが堕ちると分かった頃だった。・・・・その時に、STNが作られて、アークバードや我々のレーザー兵器が脚光を浴びるようになった時に、うち等のボスはこういった。"STNではカバー出来ない地域に我が国のレーザー兵器を配備しよう"何て言い出してな・・・・そりゃ、素人目から見れば核の冬が来るんだったら対策は練るべきだと言うだろうな。・・・・だが、我々軍人から言えばとんでもない。"世界中の軍事バランスが狂って必ずそれをめぐる戦争が起きる。そんな事になれば核の冬よりおっかない事になって皆おっ死ぬ"と知っていた。だから、でかい戦争を起こしてでも止める必要があった・・・・それが戦争を始めるように"私達"を引張った原因だ」
「・・・・」
ゆっくりと簡潔に言う刹那は彼女に対して苦笑していた。
「本当ですね?」
「ああ、嘘や偽り無しに言った」
刹那の目は彼女の目を射抜くように微動だにしなかった。
「・・・・良かった。やっぱり思ってた通りだ」
「え?・・・ムッ!・・・ッ!・・・・はぁッ・・・何をするんだ馬鹿者!」
彼女は刹那の四肢の支点を押さえながら、無理やり彼の唇を奪った。そして無理やり自分の舌を彼の口の中へと捻じ込んだ。彼は首を振って抵抗して直ぐに振り払った。二人の口をつなぐ糸が垂れて消える
「ようやく、自分の気持ちに正直になれました。つっかえたものがやっと出て行ったような気がします」
「何が言いたい」
「・・・好きです。貴方の事が・・・殺したいほどに・・・憎いほどに」
彼女は刹那が動けないようにしながらも彼の首筋を舐め始める。
「・・・・そこまで私をモノにしたいか?」
「ええ。あなたの全てを奪い取りたいんです。昔の自分じゃ、考えられないほどに」
「・・・好きにするがいい・・・そこまでと言うならば、何もしない。勝手に奪え、勿論命と機体だけはやらんがな」
「・・・それって・・・ずるいですよ」
雨降って地固まる

fin

第二十九話:宿命

サンサルバシオン郊外 4月3日 23:45
「・・・・」
エーリッヒは戦死した4の唯一の遺品のハンカチを見ながら、ベッドの上で寝っ転がって居た。彼は今軽い憂鬱な状態になっている。今迄いた戦友が死ぬ事は生き残る者にとっては非常に辛い。

「何千人の美女に甘い言葉をかけられるより、戦友の一言の方が重い」

と言うのは間違いではない。
彼は始末書を書かされ、STNが陥落した事は一定期間黙秘との事だった。しかし、それはあっというまに少年に伝わり、恐らくあのレジスタンスの酒場の少女に伝わり、町中に響ているだろう。何故なら自分達はそれを彼に喋ったからである。

「いたくお気に入りだったようだな。あの娘」
「!?」
簡易的な個人用プレハブの入り口に一人の男が立っていた。
「・・・貴様、一体何所から入ってきた!?」
「私に境界など意味は無い。私は何所にも居るし、何所にも居ない。私はそんな存在なんだよ。エーリッヒ」
クククと微笑しながら、その男は言った。真っ黒なコート、そして低く冷たいテノールの声、長い黒髪の後ろを束ね、蒼と緑の絶妙なオッドアイをもつ目。そしてそいつは4を殺した張本人。あの蒼いリボンの奴が放った矢で傷ついた4に容赦なく止めの短刀を突き立てた男。ラインハルトまたの名を刹那。裏世界では「中佐」又は「死神」の名で通り、それに目をつけられた者は肉片まで残されずに死ぬ事になる。
「今お前がどのような心境を持っているのか・・・それを見たくてな」
「良くもまあ、抜け抜けと言えたものだな・・・。いの一番に貴様を撃ちたくてたまらねえんだよッ・・・!!」
「ほう?この様な状態でもか?」
エーリッヒは明らかに自分より10cmは小さい刹那に片手で胸倉を掴まれて、持ち上げられた。
「・・・それに、空の上でやられる事には恨みは持たないんだろう?」
「・・・・それとこれとは話が別だ!貴様は明らかにもう戦えない4を狙ったろうッッ!?・・・がっ!!」
ドサッ!
半ば無理やり外に投げられる。そして、地面に落ちるのと同時に奴はこちらを見て嘲った。
「ハッ!・・・降伏しない敵を放置して、給弾整備されたらまた戦力と化す。それを放置して何が兵士だ。笑わせる」
「何ぃ・・・!?」
起き上がろうとするエーリッヒの胸倉を再度刹那は掴むと、銃を突き付けながら言った。
「甘い・・な。甘すぎる。結局はご都合主義の貴族の坊ちゃんか。それに戦う意思の無い敵を撃ったのは貴様もだろう?第一次STN攻撃の際の攻撃隊は撤退を始めたのに殆どを撃墜するまで追い掛け回し、製油所では逃げる敵機を追い掛け回して何機かを撃墜した。ベルカ戦争では連合国の戦闘機が必死に逃げようとしているのをまるで虫けらの様に落として、エースに成り上がった。違うか?」
「な・・お前・・・・。どこまでそれを・・・」
「全てだよ。お前・・いやエルジア軍、ISAF軍の全将兵、傭兵に至るまでの家族構成・その住所、性癖、財産、生年月日、本名、所属師団・部隊・階級etc、etc・・・・全て私が掴んでいるんだからな。裏世界を統治するのも大変なんだ。分かるか?お前とは生まれた意味も、死ぬべき目的も違う。何もかもが表にいるお前に説法を聞かされたくない」
眉間に突きつけられた拳銃はグリグリと喰い込む。少しして刹那はエーリッヒの眉間から拳銃をどかした。
「だが・・・、今はただ観察しに来ただけだ。いい加減、この戦争と言う戯事にも飽きてきたがな・・・・」
「・・・な、何だとっ!?・・・この戦争が・・・戯事だとお前は言うのか!?」
「おっと、"本音が出てしまった"か。・・・・私にとっては全てが戯事で暇潰しでしかない・・・。私が死ぬまでのな。私を失望させるなよ?"人間"?」
そこまで言うと、そいつは灯火管制された暗闇の中へと消えて行った。
「・・・これまで俺達が身を挺して、罵られてまでやって来た事が・・・奴にとっては戯事だって言うのか・・・・ふざけるな!死神!!お前は・・・お前は一体何なんだ!!」
エーリッヒは拳をにぎり、暗闇に向けて叫んだ。

コンベース市郊外 4月4日 02:50
ゴオオオオオォォォォォ・・・・・・ゥゥゥ・・・
「また空を見ていたのか、ラリー」
暗闇の空を眺めていた男に嵐山三等陸尉は苦笑混じりに言った。
「・・・ああ、懐かしき良い音だ。あれは・・・F100-PW-100だな。F-15のエンジンだ」
「ソラに戻りたいか?」
「この右足さえまともなら、直ぐにでも飛ぶさ」
ラリーは軽く右足をひきずるようにUH-60Aの開いたドア部分に腰をかける。そして彼の本音は空を飛ぶだけではない。かつての相棒に会いたい。そう思っている。嵐山はそれを重々知っている。何故ならNGSDFの9割の正規自衛官は戦闘に関して口外せず絶対機密を保持するという唯一の命令を守って対テロリスト戦闘を経験しており、機密作戦と言う点で外人部隊や民間軍事会社、各国の特殊部隊はとは関わりが深い。
「まあ、今日も気楽に行こうぜ。あと1時間でオペレーション・チャリオットが始まる」
「WW2のエメリアの乾坤一擲の作戦の再来か。海上突入部隊は大変だな」
ハハハと笑いながら、小銃の再チェックを怠らない。
≪レンジャー1よりAll UNIT's、集結地点に集合せよ。繰り返す・・・≫
「お呼び出しだ、ロックロール!」

今日の任務は包囲されても尚抵抗を続ける敵を殲滅し、さらに旧型戦艦の改造戦闘艦[テイルピッツ]を破壊する事である。

作戦名[チャリオット]

WW2の際包囲されたエメリアがベルカの戦艦、[テイルピッツ]のドライドックに対しを海上から駆逐艦[キャンベルタウン]貴下エメリア艦隊が砲撃とMG42、MP40の銃弾の嵐の中突入し、ドックに体当たりを敢行。キャンベルタウンごとドックを爆破し、サンナゼール港内の施設・兵員を破壊、殺傷しUボートを何隻か破壊して多大な損害を出しつつも作戦を完遂して来た作戦をもじっている。

最優先目標[テイルピッツ]はベルカ戦争時にエルジアが"保護した"旧型戦艦にCIWS20門、二連装主砲を一門取り外し、Mk41垂直発射セルと交換、SPY1-D、OPS-28改、最新鋭のソナー対潜水艦装備、ミニイージスシステムを導入した魔改造艦でこれまで直接攻撃は全て失敗している。
第二目標の敵部隊はISAF軍が上陸作戦を行なう前から駐留し始めた部隊に第42歩兵師団、第五機甲師団が市内に居る。さらに市民が多数居る為、迫撃砲や曲射砲は全てNGSDFの特科部隊の精密射撃になっている。そのためたいした戦果は出ておらず、狙撃で敵が出てくるのをどうにか防いでいるといった所だ。航空支援は戦闘機では無理、A-10やAC-130では民間人をまき添えするので駄目、となるとヘリしかいないが、RPGの弾と射手が異様に多い事が悩みの種である。すでにISAF陸軍のヘリが10機程度落とされている。
第三目標は捕虜と市民の開放、戦闘に集中する為に民間人は一定の場所に集結させ、捕虜を救出したら戦力に加えると言う手筈になっている。

≪諸君、作戦の最終確認だ。後45分でエルジア海軍第二艦隊に偽装されたISAF海軍第一艦隊が湾内の哨戒艦艇に対し攻撃を開始する。それと同時に市内に突入、同艦隊から出撃するNGSDF、SGSDF特殊部隊と合流し、最優先目標を叩き潰す。その後、敵部隊を掃討しつつ同志と民間人を逃がす。手筈を間違えるなよ≫
≪レンジャー2、ウィルコ≫
≪レンジャー4、ラジャー≫
≪レンジャー6、ラージャッ≫
「レンジャー3、コピー」
「デルタ1、ラジャー」
≪デルタ3、コピー≫
≪デルタ4、コピー≫
先鋒となるヘリボーン各隊の報告を確認しながら部隊員に対し戦闘準備を下令する。他にはISAF軍のタンゴ隊が戦車と装甲車の混合編成で突っ込んで来る手筈だ。
「なあ、ラリー・・・」
「なんだ?」
嵐山はラリー・フォルクに対して小声で聞いた。
「お前、この戦争が終わったら・・・サイファーに会うつもりか?」
「!・・・・さあ・・な」
ラリーは少し間を置いて答えた。それを嵐山は確かめると、顔を下に向けて言った。
「会える、と・・・・良いよな。俺の戦友はイーグル・クロー作戦で本当は俺を庇って戦死扱いなのに事故死扱いにされた。棺に入った戦友の亡骸にも会えなくて、さ。お前もそうならなきゃ良いんだが・・・・何か愚痴っぽくなったな。忘れてくれ」
「・・・・・お前らしくないな、嫌な予感・・か?」
「・・・ああ・・・多分この作戦は苦戦する、と思う」
確かにその通り、戦闘地域は市街戦で相手は市街戦に特化した第42師団。簡単には打ち破れない。
「気にするなよ、戦友。いつも通りに戦って、街のバーで落ち着こうぜ」
「・・・そうだな。覚悟しろよ?戦友。俺は結構酒豪なんだからな」
「互いが無事ならこの上なく良いのさ。金なんてどうだって良い」
「ああ!行こうぜ」
それぞれヘリに乗り込みながら互いを励ましあう。シャフト・ローターエンジンが唸り始め、暖機運転を始める。防弾多機能MHMDバイザー(マルチ・ヘッド・マウント・デイスプレー)のIRシステムを起動し、バッテリー残量を確かめる。小さなソーラーパネルがバイザーの上についておりソーラー蓄電池によって電力を供給する。小型だが暗闇で半年間はバッテリーのみでも稼動し、2年は整備いらずの高性能バイザーで目の視界を妨げずに使用できる。IRセンサーシステムの他、暗視システム、部隊間連携装置C4Iシステムがバイザーが稼動中は常に作動し、装着するID固定の人体の異常を感知した場合には状態により鎮静剤か覚醒剤、モルヒネが迷彩服下から微量静注射される。NGSDF・SGSDF両軍共通の最新装備だ。ヘビーアーマーの中で最強のドラゴンメイル・背嚢・110mm対戦車砲等の重い装備を装着していても、人間への負担を軽くする為にパワースーツの無音・耐湿・耐弾の腰関節アクチュエータが腰の部分をサポートする。そのため、彼等の装備は汎用装備で30kgを超えている。

「・・・・時間だ」
嵐山は時計合わせされた時計を睨みながらパイロットに伝える。
≪テイク・オフ。レ-ダーに捕捉されるなよ。何所にレーダーサイトが隠れているか分からんぞ≫
隊長の指示でヘリが一斉に離陸する。NOE(匍匐飛行)で目標地点に一気に向かう。地上には友軍のレオパルドとチャレンジャー、ルクレールが突撃する。その後ろに海兵隊のストライカー旅団が続く。
≪特科部隊、射撃始め。敵車両は衛生写真で確認した所から動いていない筈だ。制圧射撃開始せよ≫
≪了解、撃ちー方始めッ!風速2.34m、仰角24.6度、方位2-7-1.45・・・撃ーーッ!!≫
ずっと後方で発砲炎が光り、暫くして発砲音が響く。
≪「5・・・4・・・3・・・弾着・・・Now!」≫
着弾を多数確認するとIRセンサーの向こう側で兵士の行動が活発になるのが見えた。
≪撃ってくるぞ!レンジャー、デルタ総員聞け!!目標手前でフレアをかけて減速するから一気に市内に転がり込め!≫
≪何だと!?止まっても無いのに降りろだ!?無茶言うな!!≫
≪落ち着け、ヴァシリ。受身をしっかり取れ。周辺警戒を絶対怠るな!!≫
≪RPG来るぞ!10~2時方向!数は20~30!!なんて数だ!≫
≪対空砲も稼動中!やらせるな!!≫
≪コブラ全隊へ!突っ込んで対空砲を潰せ!!≫
≪オーライ!戦闘ヘリ部隊前へ!!≫
≪RPG来るぞ!撃て!!≫
タタッ!!ドドドッ!!シャアアア!!!!シャシャアアアア!!ドドドドッ!!!ドシュアアアアアアア!!!!タタタッ!!
RPGが機体を掠め、後ろに去っていく。そしてRPG射手に向けて01式小銃ロングバレルモード(追加銃身にスライド銃床を最大限伸ばした状態)、スリーバーストファイアで応じる。機体の要員も7.62mm74式機載機関銃で応戦する。
≪L-90が稼動中!早く敵をしとめろ!!海上部隊を確認!目標敵艦の水兵と戦闘中!!≫
≪降下30秒前ーッ!!≫
「良し、全員聞け。機体から転がり落ちたら瞬時に集結し、遮蔽物を確保しろ」
「「「了解!!」」」
嵐山は追加銃身を取りはずし、スライド銃床も最短の位置に戻す。バーストから乱戦に備える為にフルオートに切り替えなが言った。既に機体は街中に侵入している。
≪降下10秒前ッ!全機フレアかけろっ!≫
「クッ!」
ドアの淵を掴みながら転倒を避けて部下を見る。全員が耐え切ったのを確認すると機体が水平に戻ろうとする力に耐えた。
≪降下!!≫
「行くぞ!」
小銃を片手に持ちながら一気に機体から飛び降りた。と同時に分隊員3名も一気に飛び降りた。時速40~50km/h、駐車中の車にぶつからない場所を選定して、飛び降りる事には成功した。転がって衝撃を抑えて直ぐに周辺を索敵する。
「全員生きてるか?」
≪当然です、分隊長≫
≪何とか!≫
≪無傷だ!敵影視認できず!クリア!!≫
「良し集合!」
手信号で合図しながらIRセンサーの反応を確かめたが燃えさかる戦車と、装甲車の反応のみだった。
≪あの建物を抜けて、一気に行きましょうか?GPSと地図によれば最優先目標はこの建物の向こう側です≫
「いや、敵兵に隠れられていると厄介だ。それにそこから先は開けているから危険すぎる」
≪了解、迂回します≫
ヘリが高速で湾内へと抜けていく、最優先目標は複数同時処理機能を持つCIWS20門という針鼠のような防空火器を持つが、夜間奇襲・・・しかも少数部隊の同時突入には対応できない。さらに運の悪い事に停泊中で戦闘要員が出てきていない
≪レンジャー全隊、状況報告≫
≪4、状態グリーン≫
≪6、敵と交戦中。されど問題なし≫
≪2、状況グリーン、敵を殲滅≫
「3、敵影なし」
≪デルタ各隊も健在だ、目標を叩き潰す。ラリー!行くぞ!≫
各隊が移動を始める。敵兵が必死にAKを取って応戦を始めるが、ろくに狙って撃ってきていない。牽制射撃を食らわせながら目標に向けて大回りに進む。
≪此方タンゴ、市内に突入した!コブラ、レンジャー、デルタ各隊に感謝!≫
≪Roger、友軍の位置を常に見失うな!同士討ちに注意≫
後方の友軍が突入してきたが、市街戦に戦車はキツイ。360度だけではなく上方90度まで監視せねばならない。それをサポートできるのは歩兵だけだ。
≪敵部隊回りこんできます!≫
ダットサイト・フォアグリップ付きの89式小銃をセミオート射撃で敵を倒しながら部下は言った。
≪民間人がいる街に部隊を侵入させようってのが間違いなんだよ!クソッたれめ!空軍を呼ぶことすら出来やしない!≫
≪ぼやくなトミー・・・!最優先目標発見!周囲に敵影なし!敵艦に乗り込むぞ!≫
≪了解、デルタ4。破壊工作を開始せよ≫
≪りょうか・・ッッ!!撃ってきやがった!伏せろ!!隠れろ貴様!まだ撃ち返すな!≫
傭兵の一部が敵艦のいるドライドックに到達したようだ。だが、敵は機関銃で防備を固めているようで彼等は入口にすら到着していない。
「レンジャー3、援護する!」
タタッ!!タンタンタン!!トトッ!トタタタッ!!
発砲炎を視認次第、機関銃手に5.56mm弾をプレゼントする。しかし、そうそうアサルトライフルの弾は命中するものではない。敵は怯んだだけで今度はこっちに向けてM2ブローニング12.7mm機関銃を撃ってくる。しかし、ほんの一瞬でも傭兵達には十分だった。
≪今だ!撃てえっ!≫
ドドドッ!!ダダダッ!!ドドドンッ!!!
傭兵達のAK-100シリーズ、M-16A4、G36K、FN-FALが一斉に火を吹く。それは確実に敵の体に命中した。
≪Tango、DAWN!GO!GO!!GOー!!!≫
「怯むな!突っ込め!!飛び込めばこっちのもんだ!」
一気に漁業市場を駆け抜けて目標に向けて全力で走る。
≪此方S1、デルタ4とレンジャー3を確認した。間も無く敵艦に到達する。中で合流しよう。Over≫
≪Roger、C4を仕掛ける場所をミスるんじゃねえぞ!弾薬庫とCIC、そして機関室だ!≫
「了解!敵の水兵はこっちで抑える!早く中へ!Out!!」
敵艦のハッチのロックをレミントンM870ショットガンでぶち破って、デルタ4はフラッシュバンを投げ込んだ。
≪開いた!フラッシュバン!≫
カカンッ!バンッ!!
≪Move In!≫
≪Go!Go!!Go!!≫
バンッ!!ガシャッ・ガシャッ!!ドン!パン!パン!ダンッ!!
待ち構えていた敵艦の水兵はフラッシュバンにより目と耳を一瞬にして無力化された。と同時にデルタ4兵士の一人がショットガンを敵にぶっ放したのを皮切りに、デルタ4は敵艦の乗員に向けて発砲を開始した。しかし、彼等は刹那のようなウォー・マニアックスとは違い、それに抵抗感を持っていた。しかし彼等は敵だ。撃たなければ殺されるのは、こっちなのだ。白旗を掲げて両手を挙げるまで撃つのを止めない。そして苦しむ敵兵にはいたぶったりはせずに直ぐに楽にしてやる。それが彼等の唯一の戒律だった。それは特殊作戦を経験してきた自衛官等も同じだ。捕虜にするのは将校だけだ。それ以外は負傷、又は"保護"と言う名目で治療、軟禁する。
「・・・妙だ。静か過ぎるぞ・・・・」
「兵士らしき人間は見えません・・・内部にもたいしていないようです。味方の無線からは銃声が聞こえませんし・・・ビーコンも生きています」
嵐山等は不思議に思った。もっと激しい抵抗があると覚悟していたのにまったくといって良いほど音がしない。市内で待ち伏せているのか・・・それとも、撤退したのか・・・。
フキュウウウウ!!!
「!!?タービンが動いた!?何の真似だ!?」
「行きましょう!!」
突然、目標のエンジンが動き出したのだ。と同時にドックに注水が始まる。嵐山達は艦内へと突入した。
「こちらレンジャー3!デルタ4!S1!何があった!?」
≪こちらデルタ4、・・・艦内は制圧した。敵は降伏もしたんだが・・・我々では説明できない。艦橋に上がってくれ≫
「・・・!?」
奇妙な無線内容だが、艦橋に駆け上がった彼等が目にしたのは堂々と仁王立ちして海を見つめているこの艦の艦長だった。その他はまるで我々が居なかったかのように出航の準備を進めていた。とても降伏した敵艦の艦内とは思えない行動だった。
「どう言う事だ?」
「・・・・あの艦長が降伏する代わりに艦をドックで木っ端微塵にせずに湾内に沈めさせてくれと言ったんだ」
「その条件を呑んだのか?」
「・・ああ。船乗りとしてこいつには海で永眠して欲しい。と言うのが彼等の理由だ。」
デルタ4もS1もその艦長の背中を見ながら言った。そしてその艦長が完全武装の兵士達に振り向いて微笑って言った。
「・・・・・この艦が生まれて62年・・・こいつはこれまで3回の海戦を乗り越えてこの戦争に参加し、何度も戦い抜いた。老朽艦だが改装に改造、改修を続けてずっと戦い続けてきた。私もこの艦も疲れきった。最期くらいは我が侭を許して欲しい」
「・・・・・分かりました。出航したら全員を捕虜として下艦させます。我々も任務がありますから」
「・・・・ああ。頼むよ」
歴史的には名も無いようなただの大佐の艦長は、快く我々の条件を引き受けた。余程人望があるのか誰も文句を言わなかった。
「出港準備完了しました!」
先程の我々との戦闘で負傷した水兵が敬礼をしながら報告してきた。
「良し、総員退艦用意。航海長、湾中央部まで艦をオートパイロットで進めさせよ。最低要員以外は退艦後、彼等の指示に従い生き延びるのだ」
「・・・か、艦長は・・・」
「応答はどうした!?」
「ア、アイアイサー!!」
「宜しい・・・さて、航海長。後は私に任せなさい」
「は・・し、しかし・・・・」
「いいのだよ。責任は取らねばならん。街を巻き込んだことと、艦を沈めなければならない事のな」
それらの対話を聞いていた自衛官と傭兵は挙手の礼をして生き残った水兵の案内と、遺体の収容を始めた。遺体はエルジア本国に赤十字を通じて送還し、生き残った水兵らは捕虜収容所に連行する為だ。そして艦長が何をしようと言うのも理解できた。航海長以下航海士全員が最後に降りてきたのを確かめると戦艦テイルピッツを離れた。と同時に艦が動き出す。C4の遠隔爆破スイッチを右手に持ちながら嵐山はゆっくりと遠ざかる艦影を見つめた。10分後、艦が湾中央で停船したのを確認すると嵐山は目を叛けずにスイッチを押した。
ボンッ・・・・ドオォン・・・・
遠くで大きな火球と共に爆発が連なって大爆発を起こした。
「レンジャー3よりHQ、目標・・・沈黙。捕虜と敵兵の遺体を後送したい。装甲車を廻してくれ」
≪了解、間も無く街の敵兵も一掃出来る。ミッションコンプリート、RTBせよ≫
「・・・・Roger・・・さあ、帰ろう。俺たちの家へ。・・・歳・・かな。少し・・・・疲れた」

fin

第二十八話:"紅き血""犠牲""悲劇""喜劇""永遠""復讐""影""光"そして・・・"黒き疾風"

STN 上空 10:25
≪・・・遅かった・・か≫
エーリッヒは黒い煙を上げる地平線を見て、呟いた。既に守備隊との連絡も取れない。
≪だが・・・ただでは帰さんぞ。イエロー13より4、6、10、7。ISAF軍機を片付けろ≫
≪イエロー4、ウィルコ≫
≪6、了解≫
≪10ラジャー!≫
≪7、Copy≫
僚機の了解を確かめると、マスターアームをONにする。今回は、短距離AAMのみを持ってきた。敵は消耗しているだろうし、取り付ける暇も無かったのだ。
≪行くぞ・・・!!≫
敵機は傭兵の機体らしきEF-2000と黒いF-22、そしてISAF軍の塗装のF-22。三機だけでは無く、その後ろにF-15のパルス・ドップラー・レーダー波を4つキャッチしている。前衛と後衛が合流するまでそうそう時間は掛からないようだ。数では不利・・・だが、練度ではどうかは分からない。
≪イエロー13、Engege!≫
エーリッヒはまずISAF軍機のF-22を狙いに入った。ヘッドトウヘッドで正面から挑んでくる。10と6は後衛を叩きに行かせた。赤外線センサーの反応・・・トーンが次第に大きくなる。F-22には自機から発せられる赤外線を弱体化させる装備を持っている。その御陰で敵機のAIM-9と同射程しかえられない。
≪イエロー13、FOX2!≫
≪メビウス1、FOX2!≫
トーンが最高潮になった瞬間トリガーを引く。敵との混信で無線が交じり合う。女の声が聞こえた。バレルロールとフレアでAIM-9Xをギリギリでかわす。敵機とすれ違う瞬間、自分と敵の透明のバイザー越しにパイロットの目とエンブレムが見えた。澄んだ蒼い目、そして蒼いリボンのエンブレム。

あいつだ―――

エーリッヒは気付いた。何度も鉄の翼を交え、結局落とせなかった・・・あのパイロット・・・


メビウス1は外れたミサイルに舌打ちしながら敵のミサイルをかわした
メビウス1の目には翼端が黄色く塗装され、灰色の迷彩が掛かったターミネーターのパイロットと自分の透明のバイザーとキャノピー越しに目が合った。金色の目、そして大きく書かれた黄色い13の数字。

隊長を落とした、あいつだ―――

すれ違い旋回に入った。憎しみよりも、高揚感が彼女の体を覆った。旋回するGが心地よく感じられる。

今度こそ・・・撃墜してみせる!

これで黄色とは4回目の会敵となる。一度目はノースポイントの西洋上、二度目は製油所、三度目はコモナ諸島。
三回とも自分よりも奴よりも腕の良い味方に助けられるか、逃げるしかなかった。だけど今度は違う。こいつを上回れる自信も腕も、持っている。

急旋回でグルグル回る様に相手の後方を取ろうとする。まさにドックファイト、これこそ戦闘気乗りの本懐と言う奴だ。急旋回を何度も繰り返し、Gが自分の意識を奪おうとする。それに耐える訓練も日々欠かさず行なった。"円卓の鬼神""不死鳥"すら上回るというNASDFのアグレッサーとも何度も戦った。そしてこいつを最も知っていて、最も自分が恨んでいる奴にも頭を下げてまで空戦の術を学んだ。
バイザーでAIM-9Xの照準を合わせながらも、撃てなかった。最小交戦距離を割っているし、どうせ角度がありすぎて当たりはしないからだ。


出来る!良くぞ此処まで成長した―――

敵を賞賛しながらも、エーリッヒはGに耐えていた。
エーリッヒもR-73を敵にロックしながらも撃てずにいた。最小交戦距離を割っているのでオートセーフティが掛かっているからだ。しかし、エーリッヒは栄光あるベルカ空軍のエースパイロットだ。敵にそう簡単に後ろを取らせなかった。こういう好敵手の為に格闘戦では無比の強さを誇り、機体整備の不調から当時の成長途中の鬼神と片羽に落とされてしまったゲルプ隊から空戦の技術を受け継いでいる。

だが、此処で落とされるわけには!――

先に動いたのは――――エーリッヒだった。最大のGをかけて敵機の後方に張り付いた。



・・・だがそれが"灰色の死神"の付け入る隙を、与えてしまった



≪堕ちろ≫


感情も何もない、冷たい低いテノールの声。それが妙に二人の間に響いた。

≪隊長!!後方上空です!!!!≫
4の叫び声でブラックアウトしつつある意識に響いた。
≪≪んなッッ!?≫≫
敵との混線で、はもった。そして後方を振り向くと・・・一機のカナード付きファントムが装甲の一部を摩擦熱で少し紅くなるほどの高速で突っ込んで来た。その速度は2600kt、マッハに換算してマッハ3以上。キャノピーは三重の防弾・防熱性の特殊ガラス、エアインテークはスクラムエンジンの状態で解放状態、そしてチタニウムと複合材で出来た機体だからできる芸当だ。エンジン内温度は1万度を軽く超えている。味方すら顧みずそれはまるで黒き棒の様に突っ込んで来た。
≪ぐおっ!≫
≪クッ!!≫
二機の戦闘機は同時に左右に旋回した。だが、エーリッヒは急激な旋回で空戦エネルギーが落ちていた為、遅れを取った。

ヴオッ!!!

馬鹿でかい衝撃波が二人がいた空域を一気にかき乱した。
≪うわああっ!!≫
≪きゃあっ!!≫
≪・・・外したか。もう一回≫
それは速度を少し落としながら戦闘機のそれとは思えないような急激な旋回をすると再度急激な加速をした。それはこっちを目指してくる
(馬鹿な・・・・この世にこんな機体が・・・・)
エーリッヒは機体を安定させようとしながら、それを見た。それが一瞬の隙だったのかもしれない。
≪くう・・・・!捉えた!!FOX2!!≫
ビイイイイイイイイイイイ!!!!
≪しまった!!≫
メビウス1がその僅か数秒の隙にエーリッヒを捉えた。そしてAIM-9Xが放たれる。それが自分を落とそうとする一撃だった。

かわせない

諦めかけた時、信じられない光景が目に入った。
≪隊長!!≫
敵と交戦していた筈の4がエーリッヒの機とミサイルとの間に割って入った。
ドンッ!!
あっと言う間も無く彼女の機は被弾した。そして煙を噴き出している
≪4、脱出しろ!≫
≪隊長・・・・・ごめんなさい・・・・命令、無視しました・・・≫
その言葉が、彼女の最期の言葉だった。
ヴオッ!!!
刹那が一瞬硬直した戦闘空域の中で落伍した敵機を逃す筈は無かった。4の機体にすれ違うギリギリでM61A2改の20mm弾が彼女のエンジンを貫き、そして衝撃波で彼女の機体を一気に破壊した。
≪誰か4の脱出を見た者はいないか!?≫
エーリッヒは敵味方問わず全周波数で叫んだ。しかし、誰からもその答えは返ってこなかった。万一脱出していても衝撃波で彼女の体はズタズタになっている。刹那のファントムが再度旋回しようとするのを見て、エーリッヒは撤退をせざるを得なかった
≪・・・ストーンヘンジ破壊に成功!黄色中隊の一機を撃墜した。任務成功だ!良くやった!!≫
敵のAWACSの大声の後に他の敵パイロットの歓声が混じった。

fin


第二十七話:英雄の誕生

ロスカナス空港 4月2日 08:15
暗いミーテイングルームには男女多数の人間が集まり、正面に貼られた地図を見つめていた。彼等はこれから人を救う為に作られ、今は人を殺すために使われる巨人を倒しに行くのだ。
「ブリーフィングを始める」
そして正面に張られた地図の前で多くの勲章をぶら下げ、少将の階級を肩につけた初老の司令官は威厳のある声で言った。
「今回の任務はいたってシンプル、且つ非常に複雑だ」
この部屋にいる人間達は殆ど国籍が異なり人種、民族も様々である。だが全員が同一の目標と戦意を持ち、これから自分達が何所に行くかをも知っていた。
「オペレーション・ストーンクラッシャーは三つの任務からなり、それを四個飛行中隊で完遂する」
そして彼等は全員が死ぬか地べたを這いずり回る事を前提にそのソラに向かう。
「まずは、ECM破壊・SEAD任務。これをオメガ中隊が引き受ける」
オメガの名を持つ彼等は地べたを這いずり回っても何度も帰ってきた。
「続いてヴァイパー・レイピア中隊がCAP任務を負う」
ヴァイパーの名を冠する彼等は敵機を決して逃がさずに叩き落し、レイピアの名を響かせる彼等は空戦で無類の強さを誇る。
「そして、本丸[ストーンヘンジ]を攻撃するのは・・・・メビウス1率いる傭兵部隊だ」
傭兵・そして全てを殺し尽くす為に生きる者によって育てられた無限の輪の名を関するものはパターンによらない空戦技で敵を翻弄し、喰らってきた。
「司令部は今作戦の損耗率は40%を想定している。月並みではあるが・・・・全機還って来い。新たな英雄を我々は欲しているのだから。出撃!」
司令は感情を抑えた声で言った。戦争に犠牲はつき物・・・・いやあるべきなのだ。そして司令が言い終わるのと同時に彼等は立ち上がり、装備室へと向かった。彼等は耐Gスーツと救命胴着を着て、そして酸素マスク付きヘルメットを取ると機体へと向かう。彼等の機体には任務にあわせ2000ポンドレーザー誘導貫通爆弾やHARM対レーダーミサイル、そしてミーテイア、AMRAAM-D・R-77や全機の護身用としてASRAAM、AIM-9X、R-73等が搭載されていた。
「いよいよアレを壊す時だ・・・。隊長・・・見ててください」
メビウス1は機体に乗り込みながら言った。だがそれは祈りに近いものだった
「俺たちは俺たちの事をやれば良い筈だろう・・・・?畜生・・・手が震えてきやがった。負ける喧嘩はしたくないんだがな・・・・」
グエン・キャラウェイはそう言うと手の震えを押さえようと両手で操縦桿とスロットルレバーを強く握った。
「フー・・・・・」
ジン・クルスは背中に冷や汗を掻いていた。
「・・・・全て上手く行くはずだ・・・。何も心配しなくたって大丈夫だ・・・・」
スギ・アヤグモは自身に言い聞かせていた。
「・・・・気楽に行ければ・・苦労はしない・・・足が震えっぱなしだぜ畜生」
レイピア8はヘルメットを被り航法を確認する時に自身の足がガタガタ震えているのに気付いた。
パイロット全員がストーンヘンジに恐怖を抱いている。何故ならストーンヘンジのギリギリまで接近せねばならないからだ。さらにその護衛にエルジア軍精鋭のアクイラ中隊通称黄色中隊のオマケつきだ

キイイイイイイイン・・・・

そんな彼等の横を堂々とタキシーする一機のファントム、カナード翼と推力変更ノズルが特徴的な機体で撃墜した敵機の灰と煙でかなり汚れている。その機体は先程STNに奇襲を仕掛けて、今度は再度出撃し偵察と爆撃判定を行なう為に出撃する。その機体からは恐怖はまったく感じられず、戦える事への喜びすら感じるようなエンジン音で彼等の機体を振えさせた。

≪此方フォースリコン001、タワー、離陸許可を≫
≪タワー了解した。001クリアード・トゥ・テイクオフ≫
フォースリコンの本来任務として動く為に飛ぶ。フォースリコンの他の隊員はは未だにエルジア占領地で活動している。だから刹那だけ遊撃員として動いている。
ギュアアアアアアアアアアアアアア!!!!
滑走路にアフターバーナーの轟音を響かせて一気にハイレートクライムで上昇する。高度制限が解除されるとファントムは数時間前に通った道を逆戻りし始めた。武装は20mm機関砲と増槽三本に偵察ポッド二基のみ。FE-14複合サイクルエンジンを乗せるファントムは轟音を残して基地から去った。それに続く形でF-16E8機のオメガ中隊が編隊でタキシーを開始する。
≪・・・・・さあ、ペイバックだ!≫
≪タワーよりオメガ1、クリアード・フォー・テイクオフ。ちゃんと還って来い!≫
オメガ中隊が滑走路の端について離陸を開始し始める時にはヴァイパー、レイピア中隊が続いてタキシーを始めていた。
≪乾坤一擲ってやつだな・・・これは・・・ヴァイパー1離陸する!≫
≪タワーよりヴァイパー、クリアード・フォー・テイクオフ。さあ行って来い!≫
ヴァイパー隊のMig-358機が離陸する時間はさほど掛からなかった。すぐにレイピア8機が続く
≪オーライ、愚痴ってもしょうがねえしな。レイピア隊行くぞ!≫
≪タワーよりレイピア、クリアード・フォー・テイクオフ。死ぬなよ!≫
レイピア隊のF-15アクテイヴが離陸するとそれぞれ思い思いの機体の混合編成でメビウス1率いる第四中隊8機が滑走路に着き、その後ろにE-767I[スカイアイ]KC-767Iが続く。
≪タワーよりメビウス1、クリアード・フォー・テイクオフ。臨時メビウス中隊の実力を見せてやれ≫
≪ウィルコ、離陸を開始します!≫

サンサルバシオン郊外 アクイラ隊基地 09:10
「イエロー4、大丈夫か?」
「ええ・・・何とか空は飛べます。ですが機体の予備は――・・・・」
エーリッヒは自分の隊で唯一一度も出撃時に編成を変えなかったイエロー4に声を掛けた。白い包帯がまだ彼女の左腕には巻かれている。先日、レジスタンスによる破壊工作を受けてイエロー4の機の左エンジンの予備が吹っ飛ばされたのだ。
「今日の朝のは余りにも素晴らしい奇襲だったらしい。完全にSTNの最寄周辺基地は潰された。隣接する基地に三機残っているだけだ」
「隊長はご存知ですか?今朝の奇襲攻撃・・・あのスカーフェイスやガーゴイル、ユニコーンが出ていたことを・・・・」
「・・・・ああ、ついさっき隊司令から聞いた。あの英雄や最古参の空軍傭兵がいるって事は知っていたがあそこまで素晴らしくなるものなんだろうか・・・。彼等に一歩でも近づきたい。そう思うよ」
湖を見ながらエーリッヒはさらに話す。
「だが、彼等の指揮を取っていたのはAWACSじゃないらしい。無線内容を解読した結果、STN上空でドックファイトをやったファントムが指揮官だった。大したもんだな。そんな彼等を指揮できる人間なんて限られているから・・・さ」
「え?それは初耳です・・・・どんな機体だったんで?」
イエロー4は黒い髪が風に撫でられて顔を覆うのを右手で押さえながら行った。
「カナード付き、推力変更ノズルつきでなんでもブラック1を軽々と喰らったらしい。」
「え!?ブラック1てエルジア軍内部でもかなり腕の立つ人ですよ?それを軽々喰らうって・・・・しかもF-4で・・・・!!」
ウウウウウウウウゥゥゥゥ!!!!!!!
「空襲警報!!とうとうきやがったか!」
「私も出ます!!」
イエロー4の目がただの女の目から兵士の目に変わったのがエーリッヒにはすぐに分かった・・・が
「駄目だ!お前の機はまだ完全じゃないし、おまえ自身完治していない!」
「嫌です!私はあなたの護衛機である事を忘れたんじゃ無いでしょうね!?」
彼女の言葉に強い思いが篭もっている事が痛々しいほど伝わってくる。それに押されたのかエーリッヒは少し彼女の目を見つめると、とうとう折れた。
「・・・・分かった。無理はするな。これは命令だ。いいな?」
「Copy Sir!」
二人揃って野戦飛行場の装備室に駆け込み装備を取る。だが、このように二人そろう事はもう・・・・・無かった

ストーンヘンジ上空 10:05 高度7万5千フィート
≪良い眺めだ。真上に撃てないから、どうしようもないのが弱点なんだよな・・・・≫
刹那のファントムはスクラムジェットエンジンを使ってマッハ2.4の超々音速、しかし地上速度から言えば戦闘機としてはさほど速くない速度でストーンヘンジ上空を遊覧飛行していた。高度は4万メートル近く、上空40km近くまではパトリオットやスタンダードでなければ届かない。AAMなら辛うじて昇れるが、此処まで上昇してからでは機動性に差がありすぎる。さらにストーンヘンジは真上には撃てない弱点があった。だから絶対に安全なのだ。
≪あと5分で第一陣なんだが・・・歓迎委員会がおいでなすったか≫
下方に映像を集中させたIRSTに反応が出る。友軍の針路ではない。敵機と判断しAWACSに一報を入れる。
≪・・・・オーライ、エルジア機、F-2A・・・・外国製のフェイクファルコンと認識。方位3-2-0、450kt、エンジェル15、レイピアにこれを応させろ≫
≪Copy、スカイアイよりレイピア隊、前へ≫
給油機と行動を共にしていたレイピア隊のF-15アクテイヴが敵機4機に向けて針路を取る
≪給油機退避を開始、攻撃隊が降下開始。攻撃態勢!≫
≪Ok、確認した。これより偵察を開始する。現在STN上空には対RWR妨害装置と対アクテイヴレーダーECMが掛かっており、対レーダーミサイル、アクテイブ・レーダー・ホーミングのBVR・AAMは使用不可だ。警戒されたし。ではECM破壊作業を開始せよ≫
≪オメガ、スタンバイ。リリース・レディ、侵入路確保。超低空から行くぞ。AAAに注意≫
オメガのF-16E型の胴体下には増槽ではなく250ポンド無誘導小型爆弾がつるされていた。最も機体姿勢に影響を与えず、尚且つ機動性を確保できる最大の位置だ。これで8機の連続爆撃で隔壁に覆われたECM装置を破壊する。
≪目標視認!!AAAが撃って来た警戒しろ!・・・5・・・4・・・3・・・2・・・リリース!!≫
VADS120mm防空機関砲の弾幕を一列で、マッハ0.9で突破したオメガ1は爆弾にセットされた武器セレクタを確認するとビパーを重ねてトリガーを引いて操縦桿を手前に引き投弾、スロットルをA/Bの位置まで持っていくと退避に入った。後続機も続々と突っ込んでは機体を急上昇させて投弾して行く。
≪全機投弾完了!!HARMスタンバイ!≫
機体主翼下に一発ずつ搭載されたAGM-88対SAMレーダーサイトミサイルを武器セレクタに選択しながらハーフロールで機体を水平に戻す。下方で数回にわたって爆発音が響く
≪此方ブラックデスサイズ、ECMの効力・・・消失。ハードキル成功だ。ミュージックオン。HARMをターップリ喰らわせろ≫
超上空の刹那の機が一定の周波数のSAMレーダー波、SA-19の捕捉レーダー波を機内ECMで遮断する。敵がECCMを張った瞬間がHARMを撃ち込むチャンスだ。
≪敵がECCMを張った。オメガ、スパイク19だ。オメガフライトSEAD開始!≫
≪ラジャー、オメガ各機へ。ブレイク≫
スカイアイが宣言するとオメガ隊は散開し、RWRの反応のある方向に機首を向ける。レーダー波を正面に捕捉するとトリガーを引いた。
≪オメガ1マグナム!≫
≪オメガ11、マグナム≫
≪オメガ2、マグナム≫
SAMレーダーサイト各所に向けて高速対レーダーミサイルが放たれると、敵はレーダー波を消した。だがこいつはノースポイント三菱重工業で製造され、独自改良が行なわれた自立赤外線装備のハイブリットタイプ。SAMレーダーサイトは残らず破壊された。
≪オメガ中隊ミッションコンプリート、初めてだぜ。作戦で損失ゼロは!≫
≪ブラックデスサイズより各隊。まだだ、VADSは生きているぞ。第四中隊のダルモエード3とアフマドは敵AAAを破壊しろ。ツクヨミとメビウス1は攻撃続行。ヴァイパーはCAP開始。基地からスクランブル3機、上がってきたぞ。レイピアは隊を分けて北東から接近中のスホーイ5機を片付けろ。ただのスーパーフランカーだ落ち着いてやれ≫
≪ウィ、ウィルコ!≫
刹那は電子機器を中心に見ている彼等や地上がレーダーに映されないAWACSとは違い、IRST・偵察ポッドの写真という眼と戦場の空気で敵を見ている。しかも息も凍る上空でそれを行なっている。
≪STNの砲口の位置を常に見分けろ。下手すると死んだ事すら分からずに機体ごとミンチにされるぞ≫
≪了解!クッ!砲撃で機体が安定しないッ≫
上空から見れば小さな砲撃だが、その衝撃は直ぐ近くを飛ぶ彼等にはとんでもない物だ。
≪メビウス1リリース!・・・・やった!一門撃破!!≫
≪ツクヨミリリース!!・・・・・良し制御室に直撃だ!≫
≪メビウス1そのままだと被弾するぞ。方位0-4-2へ。ツクヨミはそのままマックパワーでライトターン。VADS1が狙っている≫
≪りょ、了解!ウワッ!!危なかった・・・・≫
≪うわお!助言サンキュー!!≫
一門潰して浮き足立つ味方に欠かさず指示を飛ばす。少しの戦果で浮き足立つ所を狙うのは防御側としては正解だ。何故ならまだ爆弾を抱えた攻撃機を落とす事は防御側にとっては勝利に等しい。最小限の犠牲ならば敵は厭わない、本作戦はSTNを全滅させなければ意味は無いのだ。一門でも残って帰還すれば友軍機はその一門のせいで動けなくなる。
≪オーライ、ダルモエード3。AAA破壊はもう良いぞ。STNへ攻撃開始。500ポンドをたっぷり食わせろ。量を打ち込め≫
≪了解で御座いますです!目一杯積んできた爆弾を食らわせますです!≫
作戦機の中でもっとも爆弾を所持するダルモエード3のA-10Aに今度はバトンタッチ、連係プレーで効率よく減らすしかない。後数分で黄色中隊がやってくる。
≪ダルモエード3、投弾!・・・・2発命中!!≫
≪目標沈黙。あと4門、アフマドも攻撃に加われ。レイピア4、そこでレフトターンだ。≫
≪良し!振り切った!≫
AWACSも仕事を取られない様に必死に管制する。
≪ワッ!?ツクヨミ被弾した!燃料タンクに被弾!撤退する!≫
≪チッ、ツクヨミ撤退を許可する。ダルモエード3、アプローチ中断。そこからは危険すぎる。反対側に飛び越えてやり直せ。メビウス1と挟撃しろ。≫
≪ダ、ダー!≫
≪ラジャー!!≫
STNは後4門、一門一門潰していては黄色中隊到着に間に合わない。一気に決める作戦に出た。
≪メビウス1、それを潰したら残り二門をSDB2発ずつで潰せ。それで爆弾が切れるはずだ。ダルモエードはそいつを潰したらアフマド機と共に最後の一門に全弾投下で足元を仕留めろ。ろくに狙わなくも良い≫
≪了解!・・・・行きますよ!≫
≪ダー、・・・・・ベイブウェイ!≪ベイブウェイ!≫・・・・命中!≪やった直撃だ!≫≫
≪沈黙確認!スカイアイよりブラックデスサイズ、ニューコンタクト。北東よりマッハ2で接近中の編隊を確認。エンジェル21、方位3-1-0≫
≪了解した。・・・・遅いな黄色中隊・・・・レイピア・ヴァイパーはCAP終了、給油機とランデブーしろ≫
≪ヴァイパー1了解≫
≪レイピア1、Copy。黄色となれば我々じゃ手に負えん・・・・≫
IRSTとMFD上のレイピア、ヴァイパー隊が南下を始める。
≪黄色が来るぞ。急いで始末しろ≫
≪か、簡単に、言わないでくださっ・・・い!!≫
メビウス1に悲鳴を聞きながら再度地上の状況を見る。
≪ダルモエード3、ベイブウェイ!!≫
≪オメガ14、リリース!!≫
≪目標・・・沈黙。メビウス1、そのままA/Bで8Gレフトターン。高度に注意≫
≪りょ・・・く、うううううう!ロ、ロックオン!リリースッ!!≫
メビウス1が意識が飛ぶギリギリで放たれた爆弾は正確にGPS情報に基づき、管制室に命中。破壊した。
               エース
≪目標無力化。ラストだ、ACE≫
刹那は彼女の働きをじっと眺めていた。恐らく第四中隊の中で最も戦果をあげたものだ。そして黄色に対抗しうる・・・・数少ないACEにもなるだろう。
≪え・・・ラ、ラジャー!!ロックオン・・・・リリース!!≫
SDB最後の二発は正確に砲身と管制室にあたった。
≪ターゲット・・・・沈黙。よくやった。勲章モノだ≫
≪有り難う御座います。・・・・刹那さん≫
少し優しい声で話しかけると彼女は憎しみも何もかも忘れて照れくさそうに答えた。しかし―――
≪安心するな!五機の編隊がマッハ2で接近中だ!≫
≪此方スカイアイ、ブラックデスサイズ。良いだろう?≫
≪ああ。大丈夫だ。こっちのACEは向こうより疾い。クリアード・トゥ・インゲージ!≫
≪・・・え・・あ・・・え?≫
何が何やらと言う感じで答えるメビウス1にいつもの口調で言った
≪何をぼさっとしている。敵機を叩き落せ.この・・・・蒼く澄み切った"ソラ"を我々のものとするんだ≫

fin

第二十六話:英雄の誕生

4月1日 ノースポイント 入間統合自衛軍基地 04:50 地下5階SAFミーテイングルーム
「諸君、静粛に」
NASDFの制服を着た士官が世界最強の飛行部隊の部隊長達に対し威厳のある声で言った。それに直ぐ答え、ミーテイングルームは一気に静かになる。と同時に部屋の明かりを消した
「・・・・オーライ諸君、明日の作戦についての最終確認だ。諸君の任務はTARCAP・・・ISAF軍への露払いである。明日の作戦[ストーンクラッシャー作戦]には三個飛行小隊がSTNへのストライク、一個飛行隊がSEAD担当する事はわかっているな?諸君はそれらの直接援護を行なう」
士官はそう言うとSTNの資料をスクリーンに映した。
「STNの弱点・・・それは海抜2000フィート以下は攻撃できない事と、至近距離での交戦は想定していない事・・・・そして直上発射できない事・・・以上の事から、我々の航跡はどうなるかな?」
士官はそこまで言うと不敵な笑みをこぼしながら部隊長達を見た。そして彼等も少しニヤついている。それを士官は確認すると、ストーンヘンジ周辺の衛星写真をスクリーンに写し、そしてそれに赤いマジックで線を加えた。
「超低空を地形追従レーダーを持ってSTNの懐まで突っ込み・・・・STN上空でファンブレイク、ブラックデスサイズとユニコーンが約10分間のCAPと同時にガーゴイル・スカーフェイス両隊のJSOWによる敵邀撃機の破壊とBLU-107デュランダル、CBU-87クラスター爆弾による隣接する複数の敵航空基地の滑走路、誘導路に対する制圧攻撃をかける。JSOWはGPS/INS、BLU-107デュランダルとCBU-87は落下式対無誘導爆弾だから敵のECMは関係無い。現刻より作戦準備に掛かれ。FLIR等の装備は整っている。解散」
その士官による説明が終了するのと同時に各隊の部隊長は一斉に立ち上がった。
「オーライ、一発かましてやるぜ」
「エルジアの連中が炎に焼かれて逃げ惑う姿を想像するとゾクゾクするわ」
「そりゃ楽しみだなガーゴイル1、ロックロール!奴等を血の池に沈めてやる」
「ああ・・・それは良いなスカーフェイス1・・・私は血の臭いさえ嗅げればいい・・・それで十分だ」
「相変わらずなんですね。刹那さんは・・・・」
後ろからいきなり声を掛けられてサッと振り向く。勿論SIGP220を引き出しトリガーに指を掛けながら。照星の先にはメビウス1の姿があった。
「何用だ」
「お話があるんですが・・・」
メビウス1は向けられた銃を気にする事は無く、ズイッと顔を近づけた。
「モテモテねえ・・・中佐殿?」
「五月蝿い。話って何だ。作戦が近いから手短に、だ。くだらない内容だったらぶち殺すぞヒューマン」
クスクスと苦笑しているガーゴイル1に一喝を入れて再度メビウス1の眉間に銃口を突きつける。刹那の目は今化け物の目をしている。何もかも破壊しようとする化け物の目・・・常人だったら逃げ出すような殺気と冷気に包まれる。メビウス1は怖気づく事も無く言った。
「刹那さんはあのアクイラ隊のリーダーと仲が良いですってね・・・・これをISAF上層部に漏らしたらあなたはどうするんですか?エルジア側に逃げるんですか?」
「!?・・・どういうことだ!ラインハルト!!あのイエロー13と仲良いなんて聞いてねえぞ!?」
「黙ってろ・・・別に隠しては無いが」
周りの人間が動揺しても刹那は落ち着いていた。刹那にとって陣営などどうでも良い事だ。ただ人を殺せれば良い。それが断末魔と銃声が聞こえればなおさらだ
「へえ・・・・てっきり私を殺すのかと思ってましたよ」
「・・・・お前も中々筋金入りになって来たようだ・・・・私の後ろにいる奴等がいなかったら直ぐに射殺している所だ。それに、通報したって別に構わん。私は何にも縛られない。否、縛る事などお前の様な小娘には無理だ。オーシアの大統領が土下座してきたら考えてやってもいいが」
「そのくらいは解ってますよ。こっちも任務の準備中なので・・・・では」
メビウス1の何かが変わったと言う事は刹那には痛いほど解った。奴は私を焦らせて早く死なす気だと言う事も・・・彼女の言葉には憎悪の塊が感じ取れた。戦争に引金を引いた本人に対する酷くどす黒い憎悪の塊を・・・・
「フ・・・憎しみだけでは生き残れまいて・・・・」
SIGP220を収めながら刹那は呟いた。

4月2日 ストーンヘンジ周辺 05:45
≪・・・・時間だ≫
≪無線封鎖解除、間も無く攻撃態勢に入る≫
≪ガーゴイルフェイス・イン、デュランダル・スタンバイ≫
≪スカーフェイスマスターアームON、クラスタースタンバイ≫
東から超低空、昇り始める太陽から急速に接近する中隊規模の戦闘機群は各機が武器のセーフテイーをはずした。
≪・・・・・始めるぞ。目標確認≫
≪ブレイク・・・・・Now!!≫
その戦闘機群はストーンヘンジの上空をフライパスした直後に上空に向けて機首を上げると各方向に散開した。
≪!?・・・・て、敵機だ!!≫
≪た、対空戦闘用意!!戦闘配置につけーッ!!≫
地上の対空車両、対空火器に人が群がり出すが戦闘機はそれらを気にせずにA/Bで目的地へと向かう。
≪空襲だー!!総員戦闘配置につけーッ!!!≫
周辺の2つの基地が騒ぎ出し、スクランブル機のエンジンがかかり始める頃には滑走路上に翼下に爆弾とありったけの対空ミサイルを積んだXF/A-27やADFX-02に率いられたF-22とSu-50がウエポンベイを開いていた。
≪オーライ・・・・ベイヴウェイ!!≫
≪滑走路を叩いたらハンガーも叩け、増援機を上げるな≫
≪Copy≫
投下されたデュランダルはパラシュートを開いて滑走路直上数mでロケットモーターを作動させて一気に滑走路にのめり込み、かなり進んだ後に爆発し滑走路に大穴を開けた。クラスターは滑走路に傷をつけてさらに野外駐機中のF-2AやSu-35、ラファールその他輸送機多数を破壊した。余ったデュランダルはハンガーに打ち込まれ、ハンガー内で大爆発を起こし中にいた整備員と機体を吹き飛ばした。
最寄の基地には攻撃は加えなかった。何故ならこの後ISAF軍機が徹底的に壊し、上がってくる機体はSAF機が叩き落しているからだ。
≪まるでダックハントだ。張り合いがねえな≫
≪いずれSAMの嵐が飛んでくるさ。おっとスパイクSA-19!≫
≪そいつはご勘弁だ。ヴィーゼル機持ってねえか?≫
≪オーライ、ユニコーン隊、ワイルドヴィーゼル任務だ。2、4You Will≫
≪ラジャー≫
ユニコーン1のスーパークルセイダーにクフィルが続く。目標はSTN周辺のSAM群
≪機銃で片付ける。ミュージックオン≫
ECMを展開するとRWRに反応のあるSAMレーダーサイトに攻撃を加えるために機銃を選択する。
≪機銃は一射撃で終わらせろ。空戦十則を忘れるな≫
≪了解・・・・敵SAMよりミサイル来ます!5、6!ミサイルをスライスターンしてかわせ!≫
≪チャフばら撒け!ECMが効いているか解らんぞ!≫
≪ウィルコ!Fuck it All!!!≫
≪目標確認、射線確保!撃て!≫
≪撃破確認!RWR、反応減少!≫
SAMの反応が減ったのを確認すると次の目標に向けて機を向けた。
≪此方ブラックデスサイズ、敵機が2~3機離陸した。援護求む≫
≪了解、ユニコーン4、7行け!≫
≪ウィルコ。7、インメルマンターンでSTN上空に戻る。FOX2アタック・スタンバイ≫
≪Copy、インメルのちに敵機にFOX2アタック行きます!≫
クフィル二機が編隊から離れると急速に上昇、ストーンヘンジ上空に向かっていった。
≪ブラックデスサイズへ、此方ユニコーン4、援護入ります!≫
≪ラジャー、頼む・・・・ッミサイル!ぐっ!≫
刹那は後方Su-35から放たれたRー73をフレアを2パッケージずつ放ちながらエンジン出力を下げてナイフエッジ、そしてスライスターンでかわしに入る。そしてミサイルはギリギリでフレアに突っ込み爆発する。
≪かわした・・・敵機は2機ケツについてくる。奴等をデッドラインまでまで持って行ってやる≫
≪Copy、FOX2はまだだ≫
≪5・・・4・・・3・・・2・・・・・・・Now!!≫
刹那のカウントと同時に敵機に向けてミサイルシーカーをオンにする。
≪ブルー4!後方に敵だ!!≫
≪トーン来ました!!FOX2!!≫
≪んな!?うああああああ!!!≫
≪4、スプラッシュ1≫
≪7、FOX2!≫
≪ブラック6!かわせ!≫
≪駄目だ!かわせない!イジェクト!≫
≪7、スプラッシュ1!≫
ケツについていた敵機を叩き落すと同時に刹那は後一機の敵機に迫った。
≪ぐあああああっ・・・・・≫
敵機のパイロットがGで大声を上げている。
≪フッ・・・・クッ・・・・フッ・・・・クッ・・・・・≫
刹那はフック呼吸をしながらガタガタ振動する敵機をHUDに捉えようとする。G計は7Gを超えている。敵機は8GでのハイGヨーヨーに耐えている様だ。
≪捉えた・・・・FOX3≫
ドドドドッ!!!!・・・ガン!!ガン!!ギン!!バキャ!!!
ヴァーティカルローリングシザースで逃げようとする敵機をホットラインに捉え、ガンレテイクルの中に収めるとトリガーを一瞬だけ引いた。発射された弾丸は敵機の主翼に命中し、Gで主翼が一気に折れた。揚力を失った敵機はそのまま堕ちていく。
≪ブラックデスサイズ、スプラッシュ1≫
≪ガーゴイル5ベイヴウェイ!≫
≪命中確認!撤収!≫
敵飛行場にデュランダルが打ち込まれたのを確認すると、各機は編隊を整えて一路ロスカナス空港に向かった。その間僅か12分45秒、自動式SAMが2発発射されたものの回避され、3機が邀撃出撃に成功するも撃墜された。
かくして対隕石超大型レールガン砲台、コードネーム「ストーンヘンジ」破壊作戦[ストーンクラッシャー作戦]は幕を上げたのである。

fin

非人道兵器に関する私的意見(特にクラスター爆弾)

最近クラスター爆弾や地雷に関する記事やドキュメンタリーをよく見かけます。

しかし私から言えば、前者は面制圧に非常に重要な爆弾であること、後者は敵の進軍を遅らせその間に迎撃できるという遅滞戦闘用兵器であることから無くしてはならない兵器だと思います。

人道やら何やらは戦争と言う特殊な外交手段の前には無力であり、戦闘が終わるまで決してそれらを排除すべきではないと感じますね。それに両方とも不発弾などを一瞬で排除できる兵器が存在しますからそれを使えば問題は無い筈です。(いわゆるディージカッターなどの爆風で何もかもを薙ぎ倒す兵器の事大概はこれで破壊されます)ただコストが掛かりすぎるので米軍・EU・ロシア軍くらいしか持っていません。しかしながら地雷原に打ち込めば地雷一個あたりを破壊する費用は手作業より格安になります。

かの自衛隊ですら前には対人地雷を、そして今回はクラスター爆弾を禁じられてしまいました。
自衛隊の防衛のやり方は
①シーレーンの確保、敵の戦闘艦隊に対し対艦攻撃を展開、護衛艦隊とF-15J、F-2と今回のF-X機、空・陸自高射部隊による航空阻止作戦を展開(場合によってはE-767、KC-767とF-2・F-15J・F-Xを持って爆弾(クラスターを含む)、ロケット弾、米軍機による対地ミサイルetc・・・で敵航空基地を強襲します)

②潜入してくるであろう敵の特殊部隊をWAIRや中即連、空挺、山岳、冬季レンジャー、警察機動隊(対テロ訓練は欠かさず行なっており自衛隊との共同訓練も多数行なっている)などの特殊部隊で排除又は撃退、その間に米軍と共に防御陣地を作成し備蓄を確保。

③敵の上陸艦隊、又は空挺部隊を空自と陸自そして在日米軍の共同作戦を持って全力迎撃、取り逃がしを集結地点に敵が集まったのを"クラスター爆弾と指向性散弾(クレイモア)、機甲師団、特科部隊の多弾頭ロケットランチャーの散弾などで一斉制圧"

④上記の①~③を何度も繰り返し、敵国に講和を持ち込むか国連軍の介入まで持ち堪える。


です。つまり①、③の段階で必ずクラスター爆弾は使われます。抑止力以外にもチャンとした戦闘方法があるのです。それに戦争状態になって人道もクソもありません。自国の保身の為には必ず武力はいるのです。
それに不発弾は技術上どうしても発生してしまうので無くしようが無いと思います。第一全ての信管が作動なんて考えられん(笑)それにどんなミサイルでも不発にはなる事だってあります。最新鋭ミサイルですら不発が起きるのにねー(笑)

ウィキでは滑走路にばら撒いて不発弾で敵飛行場の能力を奪う云々・・・・

ばっかじゃねえの?
ありえないって・・・それだったらデュランダルを使った方が良いに決まってる!それに加えて飛行場にクラスターを打ち込むのは"面制圧兵器"としての有効性があるからです

某反戦団体は・・・
不発弾を地雷代わりに(ry
脳外科行って来い
兵器はコントロールできなければ兵器ではないわ!狙った瞬間に作動しなかったら味方の兵士が引っ掛かるかも知れねーだろうが!そんな馬鹿がいるかい!それに作動するのは不発弾中約14%、不発弾率事態が1桁ですので使えません。


第一この世に存在する兵器の中で人や人の乗った目標を避ける弾丸や誘導装置がありますか?

ありえません。あったら是非とも見せて頂きたいですね。GPSですら爆弾誘導装置になっていますしね。インターネットは部隊間情報交換装備として存在していますしね。マスコミだって心理戦の重要な兵器になりますよ。車だって銃器積んだり爆薬積めば兵器に早変わりです。人自体強力な兵器なのによく言うぜ。

それに過去の兵器で敵を殺す、又は無力化する、破壊する、士気を下げるなど以外の兵器がありましたか?

ありませんよ、そんなもの。”てつはう”ですら今のフラッシュ・バンの様に兵士達、又は騎兵の馬を脅えさせる立派な兵器ですから


それに加えて、どんな武器、兵器も人間、生物を殺傷し、物を破壊する。またはそれの補助する事を目的としています。それが敵のいそうな所に撃ち込むのは道理にかなっており、それで民間人に被害が出ても仕方のないことです。それに撃ち込んだ者を責めたり被害者ぶっても現実は変わりません。力の無い者は逃げるほか無いのだから。逃げたくなければ銃を取るしか道は残されていません。
自分の保身を約束したければ自分の身を自分で守ることです。中には金を稼ぐ為に傭兵になったり、戦場以外で生きる事を知らない子供だっているのですから

個人的には福田首相はこの責任を持って辞任してさらにクラスター禁止を直ぐにでも解除して頂きたいです。

クラスター兵器の廃棄には最低100億円、代替兵器にはもっと、もっとお金が掛かります。国防の為には金は絶対的な力を持ちます。テロリストだって武器商人や国から銃器やRPGを購入してるんですからね。

社民の福島みずほはこんな事をブログに書いています。

>日本政府が、愚かにも最新型で高価なクラスター爆弾をこれから買ったりしないように、きちんと交渉をしていく。




(д) ゜ ゜スッポーン

・・・・○校生(校則上何歳かは出せません)の俺ですら怒りを覚えるぞ?(^ω^♯)ピキビキッ
いっぺん耳の中に突っ込んで奥歯をガタガタいわしたろか!?

クラスターは国防上絶対的に必要です。・・・・B-52(爆弾搭載量世界一!)か戦術核を導入するのであれば話は別です。つまり、クラスターを完全全廃して代替するには先述の様な超攻撃的な兵器を導入しなければなりません元はといえば攻撃的なクラスターですが、航空機、又は砲弾ロケット弾にしか積めないので防衛用兵器としても十分成り立ちます。ライフル一つ取ってもメッチャ攻撃的だという事なんですがね・・・

まあ、ペラペラと喋ってしまいましたが上記の意見はあくまで私的な意見です。本気にしないでくださいね。

 

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