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第十話:

9月20日 ノースポイント 那覇統合自衛軍基地 04:52
「ふう・・・着いた着いた」
キャノピーを開けながら刹那は呟いた。愛機からタラップを使って降りる。
「お待ちしてました。刹那准尉」
ISAF軍の制服を着た男が敬礼をして迎えてくれた。
「これから厄介になるな。ISAF空軍SAF(スペシャルエアフォース)フォースリコン001認識番号1344253。刹那准尉、只今着任した」
SAFとは傭兵、若くして退役をした空自自衛官で構成される特設空軍の事だ。フォースリコンとはかの有名なオーシア陸軍特務偵察隊とは違い、戦闘機による偵察又は輸送機からパラシュートによる空から強行偵察する為に作られた新設部隊だ。その募集要項は陸戦、空戦、言語に長けてなければならない。
「では此方に。既に003と008は到着しています」
その士官は兵舎に向けて歩き出した。この士官の階級は中佐だが、SAFはどんな階級にも縛られない独立部隊だ。例え将軍クラスが声を掛けようにも敬語でなければならない。
「まだフォースリコンは3名しかいません。ですが質を保つ為には何としてもこうでなければならないのですよ」
フォースリコンは余りにも任務内容が危険なためサイファーの様な傭兵でも敬遠する程だ。殺気を感じて反射的に手元の64式小銃を構える。兵舎に着いて中に入ると二人の男女が銃を此方に向けていた。
「誰だ?てめえは・・・」
「こいつじゃないのか?俺等の部隊に配属されるのは」
二人がこっちから目をそらさずに言った。
「お察しの通りだウォルター少尉、レヴェッカ准尉」
此処まで言っても相手は銃を下ろさない、銃身から左手を離し特徴的な蒼い模様の描かれた小刀を取り出す。
「ふうん・・・ダマスカス刀・・・か」
すると相手は銃を下ろした。
「あんた中々やる方だね。このまま発砲したってその刀で防がれて7.62㎜弾を喰らうだけだ。それにパイロットスーツの袖の中にSIGが格納されてるし、相当実戦を知ってるようだ。あたしはレヴェッカ、レヴィでいいわ」
女から自己紹介をした。直ぐにもう一人の男が自己紹介をする。
「ま、ここに入れるんだから相当の腕前だろうな。私はウォルター、かつては死神と呼ばれたが、左足が逝っちまったんでね・・・・鉄脚とでも呼んでくれ」
刹那はようやく此処で小銃を下ろした。
「私は刹那、と言っても偽名だがな。お前等揃いも揃って同じ臭いがするな。血と臓腑の臭い、戦の臭いがプンプンしやがる」
クククと笑いながらも刹那は言った。
「此処にいるのは皆同じ様な奴さ。ISAF正規軍のやつらは腑抜け揃いだ。実戦では役に立ちはしない。皆簡単に死んでいく」
ウォルターはニヤリとしながら体験談を始めた。
「そうだな、今ひとつ今の戦場は緩い」
レヴェッカも笑いながら言う。刹那は自分と同類の人間が居る事に心地良さを感じていた。
「私は数多の戦場を歩いてきたが、今回の戦争ほどつまらん物は無い。あっさりISAF軍は後退するし、調子に乗っていたエルジアも秩序は守れていないと聞く」
「ヤー、そうさ。どっちもどっちなんだよ。所で、お前の愛機は何だ?」
「私のか?私のはF-4ファントムⅡカスタムだ。貴官は?」
「あたしのはF-22カスタム。ウォルターはS-32カスタム。つーか、あんたは敵のレーダーに引っ掛かりたいのか?」
「そっちの方が楽しいんだよ。敵に追撃される時は気持ちがいい。んでもって敵を殲滅するのさ」
身振り手振りを交えながらも楽しく会話をする。そんなウォーモンガー(戦争狂)達に任務内容の書かれた紙が配られた。
「んー?何々?・・・・早速任務か。リグリー飛行場の敵の防衛網を弱体化させるために戦闘機により敵地の弾薬集結所に強襲を掛けよ・・・だってさ」
レヴェッカは苦笑しながら命令文を読み上げた。
「所詮、俺等は消耗品さ。Lets do it」
ウォルターがヘルメットを持ち、外に歩き出す。当然ながら既に当該空域の情報は紙に書かれ彼等の愛機のコックピットに張られている。
「結構敵は多いんだな・・・。事前情報でCAP機は4、中規模対空陣地が6、小規模対空陣地は12、最寄の基地には50機・・・・」
刹那は愛機のエンジンを回しながらも、その事前情報を見る。
「増槽2、爆弾と機銃弾をありったけ頼む」
整備員にオーダーを出して、後はそれの完了を待つ。
≪武器搭載完了しました。いつでもどうぞ≫
整備員が無線に言った。彼等もSAFで様々な訓練を受けた整備員だ。ほぼ全ての機体の整備マニュアルを頭に叩き込まれている
「OK!Lets move it!」
機体のエンジン出力を上げて、タキシングを開始する。
≪フォースリコン001、あんたの腕前を見せてもらおうか!≫
≪001了解、003、008怖気ついたらさっさと帰っていいぞ≫
≪まさか!≫
笑い声が無線に響く。兵士は消耗品である事を証明するかのような感じである。彼等は死ぬ事を恐れない。皆笑って死んでいく。何故なら彼等は闘う事でしか自分の存在を感じられないのだ。
≪行くぞ前線豚ども、フライト時間だ≫
三機の戦う為に生まれた戦闘機と三人の戦争狂が死の臭いがプンプンする空に向かって飛んでいった。

エルジア軍燃料弾薬集積地 周辺監視塔 11:45
「ふあ~暇だなあ・・・・」
エルジアの監視兵は敵襲も何も無い為もう一人の監視兵と話をしていた。
「だよなー。あーさっさと家に帰りてぇ」
一応周囲を見ているこの兵士だったが次の瞬間の目に映った映像が最期となった。
「え?て・・き?」
ヴァアアアアアアアアアアアアアア!!ガンガンガンガンガン!!!グチャ!べキョ!
エルジア側のレーダーにも、監視役の兵士も気付かないところを一気に飛んでいく三機。そこは所によっては戦闘機一機分の非常に狭い渓谷の中。途中にある監視塔は徹底的に破壊していく。
≪後もう少しだ。001クラッシュしてくれるなよ!≫
≪分かってるウォルターいや003≫
≪ここまで無傷ってのも驚きね。001あんたが隊長だ。指示に従うぜ≫
≪Roger!008、003へ。此方でミサイルの誘導を行なう。全機攻撃用意。生きて帰れよ。じゃないと敵に継続的な損害を与えられんぞ≫

SAFの交戦規定は"どんな犠牲を持ってしても敵に多大な損害を与える事"だ。それに背く奴は即座に通常部隊に回される。だが、フォースリコンはこの交戦規定にさらにどんな犠牲を持っても帰還せよが混じっている。
≪ターゲットインサイト!ガンホー!ガンホー!≫
≪003ライフル!≫
≪008ライフル!≫
ゴゴゴゴン・・・・シャアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアア・・・・ズガアアアアアアアアアン!!!!
ミサイルベイから放たれたマーベリックは確実にロックした敵の弾薬庫や燃料集積地に命中した。
≪奇襲成功。次だ。爆弾投下アプローチ体勢に移行。ブレイク≫
散開を指示し、各機の機体の腹、ミサイルベイと主翼に搭載されたクラスター爆弾を用意する。
≪敵CAP機接近、如何するか決めてくれ。隊長≫
敵のMig‐29UBが背後に迫ってきた。
≪当機が一番ターゲットに近い、投下後に援護する。アプローチ続行≫
刹那にはちょっとした自信があった。今敵がミサイルを放てば機体の残骸と爆弾がそのまま基地に落ちるからである。
≪目標上空、ベイブウェイ≫
ゴンゴンゴンゴンゴンゴン・・・・・・・パパパパパパパン!!・・・・グワッッグワッグワッグワワン!!!!
クラスター爆弾の小爆弾が敵の対空陣地と余っていたトラックなどに命中して爆ぜた。刹那は節約していて燃料がまだ少し余っている増槽を落としそのまま敵機に進路を向ける。
≪003、008行け。援護を開始する≫
≪003スタンバイ・・・・スタンバイ・・・・・・・・ベイブウェイ≫
≪008スタンバイ・・・・スタンバイ・・・・ベイブウェイ!≫
二機の機体から爆弾が切り離され、一気に地上に向かう。そして大規模対空陣地3つが小爆弾で文字通り吹き飛んだ。その瞬間敵機からIRミサイルが放たれる。目標は爆撃直後の無防備の僚機だが、その間に刹那のファントムがいた為、IRミサイルはファントムをロックした。
≪エースブレイカー02You have≫
刹那は1機当たり4発、4機全機で16発の迫り来るミサイルを見てAIに自機のコントロールを預けた。電子パネルに[I have]と出た。
≪グッ・・・≫
突如自機は急旋回をして爆撃直後の燃え盛る敵対空陣地に機首を向けた。かなり強いGで刹那は危うくブラックアウトする所だった。
≪さて・・・お前ならどんな機動を見せるのかな?≫
急降下で息が詰まりそうな所でも余裕を見せる刹那。僚機は既にもと来た道を戻り始めていた。
≪う゛あ゛!!≫
恐ろしいほどのGが機体と刹那の肉体に掛かる。急上昇に機体が転じたのだ。すると16発全弾がその炎に突っ込んだ。そのまま自機はもと来た道である峡谷へと機首を向けた。敵機もその峡谷へと突入してくる。さらに最寄の空軍基地から上がって来た敵機も峡谷に突入する。
≪大した歓迎振りだ。エースブレイカー02、I have≫
AIに指示を出す刹那。この峡谷は先程も言った通り、戦闘機一機分の広さしかない所がある。誤差は2m以内と余りも厳しい所だ。
≪振り切れるか?いや、やるしかない≫
HUDを睨み、その先の風景に集中力を増させる。そして最大の難門の最も狭い所に接近した。
≪GUNセット・・・FOX3≫
ヴァアアアアアアアアアアア・・・・・バスッゴン!ビシッ!メキッ!
刹那はその狭い所にバレルロールしながら機銃弾を撃ち込んだ。さらにアフターバーナーを吹かして、さらに加速する。操縦桿をギリギリまで微調節させて叫びながらその穴をくぐった。
≪イイイイイヤッホォオオオウ!!!≫
元々そこの地質は岩状で硬いが、20mm炸裂弾曳航弾ミックスの直撃で脆くなった所を戦闘機が高速で通過したのだ。その穴はあっと言う間も無く崩れ去った。それに敵機が交わす術を持たずに突っ込んだ為に敵機は全滅した。
≪此方001、003、008無事か?≫
≪此方003、損傷無し。008も損傷は無いようだ≫
≪こちら008大した度胸だなお前さん。気に入ったぜ≫

Fin
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第九話:死神の予感

9月19日 ISAF軍第一艦隊空母ウィスコンシン 19:00
コンコン・・・
「失礼します・・・・!?」
玲は一応仲間の女性整備士についてきて貰って刹那の部屋に入った。実はこの整備士も刹那に用事が在るらしく、都合が良かっただけだったのだが。だが部屋には誰もいなかった。
「あれ?????」
二人はそろりと一歩ずつ入っていく。すると・・・
「おやおや・・・いつもの会話相手の連れと一緒か」
「「うひぃ!」」
何と天井の幅20㎝の支柱の上で片手腕立て伏せをしていたのだ。そこから頭からぶら下がって目の前に現れたんじゃあ驚くのも無理は無い。
「え・・あ・・その・・・」
何とも言えない状況にいきなりなった。刹那の上半身は裸で、無駄な筋肉、脂肪は全て削ぎ落としたきれいな筋肉質の身体がである
「ん?ああ、別に気にするな。最近体が鈍っていたんでね」
そこまで言うとクルッと体を宙で半回転させて着地した。身のこなしはかなり良いらしい。既に机の上には様々な戦闘機の模型が10個並びさらにISAFとエルジアの勢力図が描かれた藁半紙が十枚ほど重なっている。余程熱心に観察していたらしく、敵味方の戦死した人数、負傷した人数、部隊名がズラッと書かれている。恐らく彼が作り出した独自の情報網があると見て間違いなさそうだ。その机の横には部品数が多くて有名な64式小銃が立てられている。少し前まで分解整備をしていたらしく、工具がその横に置かれている。ベットの上にはSIG拳銃とその弾45口径弾果ては手榴弾が転がっている。
「さて、まずは君の方だ。何の用か聞こう」
刹那は整備員の方を指差した。
「は、はい。あのですね・・・機体の整備ですが・・・その・・上手くいってなくてですね」
戸惑いながらも整備員は言葉を綴った。
「で、来てもらいたいって言っているのか?」
刹那はそんな彼女の言葉を繋げた。
「は、はあ・・・そうです」
モジモジとしながらもどうにか伝えきった。退出しようとする彼女を手を前に出すジェスチャーで引き止めた。
「その点なら問題無い。私の機体には特殊なAI・・・人工知能が積まれている。そいつが戦闘中でも常時自動で整備しているから問題は無い、そう伝えといてくれ。あとは、いつでも発進出来る様に燃料と機銃弾は搭載してくれと伝えておいてほしい」
一応のオーダーを出して彼女を退出させた。
「何故、今から燃料弾薬を積むのですか?直ぐに敵襲がある訳無いと思いますが」
玲は刹那が出したオーダーに疑問を抱いた。何故なら刹那はスクランブル待機でもないし、次の作戦からはノースポイントを拠点に主に強行偵察任務に出る為の休みが取られている筈だからだ。
「私は昼間の空襲は前座だと思っている。私がエルジア軍の人間なら爆撃コース上で邪魔になる本艦隊は放っておけない筈だ」
そう言うと一枚の写真を取り出した。
「リグリー飛行場?」
その写真の日付けは今日。最新の上空からの映像だ。それもかなり空港に近い。
「よっく見ろ・・・此処だ」
刹那は人差し指で駐機場を指した。特徴的な角ばった機体、黒い塗装・・・・
「・・・・・F-117!?その隣はSu-・・35?にF-15・・?」
かなり高い所から撮られたらしく画像の拡大図でも分かりにくい。
「こんな物を何所から!?」
玲は刹那に問うたが、刹那はこう言っただけだった。
「企業秘密だ。それより始めるぞ。じゃあ、まずは1トゥ1でヘッドオン状態でな」

AWACS[スカイアイ] ISAF艦隊より約50KM西、高度10000m 22:15
「今日の空襲は一回だけかな?」
スカイアイの管制官は欠伸をしながらレーダー画面を眺める。何の反応は無くまったくを持って暇だ。
「・・・・・・っとと」
他の管制官も流石に眠気が掛かっている為これ以上は無理がある。
「おい、そろそろRTBを進言したほうが良いんじゃないのか?」
寝ている管制官を起こしながらコックピットに声を掛ける。
「おい?何かあったか?」
その管制官が気になって他の奴にレーダー監視をさせるよう言った後にコックピットに入った。するとパイロット達の視線は右に向いていた。
「ん?・・・・!!」
急いで管制室に戻るが、レーダーには何の反応が無い。再びコックピットに戻る。その視線の先には機影が一つあった。
「ばかな・・・此処まで接近して反応が無いだと!?」
管制官もパイロット達もその機体に目を取られた。敵機ではないのは確かだ。だが、ビーコンも出さないで何の為に?そんな考えが頭に浮かんだ時管制室から無線が入った。
≪機長!上位から強制リンクが!拒否できません!発信源はごく至近!!≫
「「「何ぃ!?」」」

近くには他に機影は無い。友軍機なのかも分からないが、その機体からのデータリンクらしい。直ぐに管制室に戻る。
「!?何だこれは!」
レーダー上に突然ブリップ(光点)が現れた。IFFはENEMYと出ている。その数は10機
≪管制室!国籍不明機が我が機に接近!パイロットから発光信号だ。解読する・・・ワレハ NASDF ボウエイショウチョッカツ ダイゼロチュウタイ ダイニテイサツタイ コールサイン ニンジャ テキタイカンコウゲキタイ ノ ジョウホウヲ タシカニトドケタ・・・?何だこれは・・・・!国籍不明機が北東に進路をとった!≫
コックピットから報告を受けて、すぐさま艦隊に連絡する。
「此方AWACSスカイアイ!第一艦隊へ、敵機らしき機影を捉えた。これよりデータリンクを行う。さらにスクランブルを要請する!」

ISAF第一艦隊 22:20
「敵機接近!スクランブル機は即座に離陸せよ!」
スピーカーがけたたましい音を出す。刹那と玲はまだ空戦のイメトレの講義の真っ最中だったが、刹那はスピーカーが音を出した瞬間には、椅子から立ち上がって部屋を出ようとしていた。
「そうら、来なすった!玲!お前は此処にいろ!こっちの方が安全だ!」
有無を言わさない声で玲に命令した。
「えっ・・・でも・・・」
「お前はまだ完璧じゃない!邪魔だ!!」
強い命令口調に反論を妨げられた。
「・・・・」
刹那は飛行甲板への階段を全力で駆け上がる。アイランドから飛行甲板に出たときには既に一機が離陸体制に入っていた。
「馬鹿な奴等だ。この前の教訓を生かせてない!長距離ミサイルをたんまり積んでいやがる!!」
刹那は歯軋りをしてそのF-14を見た。レイピア4の機体だ。他の機体も皆同じである。
「まわせ!」
整備員に怒鳴り、エンジンを回させる。全計器チェック。各装備、油圧、燃料、機体ALL OK、直ぐにIRSTとAI・・・エースブレイカー02を起動、さらにローレライシステムも直ぐに起動させる。整備員に離れろと指示を出すとそのままカタパルトに向かった。
≪Brack-Death-Size!離陸許可は出てないぞ!おい!ええい、くそ。そいつも飛ばせろ!Brack-Death-Size Cleared for TAKE OFF!≫
バン!ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
カタパルトで射出されてそのまま2-7-0に機体を向ける。
≪・・・・・捉えた。F-117にSu-27UB、そしてF-15Cか。距離50000、高度50m≫
自分の頭の中にIRSTで捉えた敵機の形状が映る。脳に直接干渉するローレライの能力だ。
≪飛ばすぞ、相棒!≫
咄嗟にA/Bを使用して加速する。マッハを越えた瞬間スクラムジェットに切り替える。
≪800kt・・・・900kt・・・・1000kt・・・1100kt・・・1200kt≫
マッハ2になり次第、そこで出力を安定させる。マッハ2になると低空での自身の出すソニックブームの被害がなくなる為、自身のソニックブームで自機が破壊されるのを防ぐ為にとっていた高度、1000mから降下させて、敵機と同じ50mに下げた。後は正面から挑むのみ。
≪ネガテイブコンタクト!敵機が見えんぞ!≫
≪こっちもだ!何所だ、何所にいる!?≫

僚機はこっちの事は気付いていない様だ。
≪此方ブラックデスサイズ!これより全機に敵機の位置を常時送信する。敵攻撃機はステルス!繰り返す!敵はステルス!護衛機はその後ろに隠れている!不意打ちに注意!≫
コンソールを叩きながら無線に叫んだ。送信を完了すると、再びHUDに目を向ける。するとAAM警報が鳴り響いた。
≪!AMRAAM!!それにR-33か!≫
チャフをばら撒きながらも増槽投下を準備する。
≪被弾まで後20秒!≫
上空からのミサイルが飛来してくる。AMRAAM等の特有の機動だ。
≪よし、NOW!≫
増槽を捨ててインメルマンターンをした。するとミサイルは増槽を目標と信じてそのまま増槽に命中した。すると増槽の中身が一気に周囲に広がった。
≪!?レーダーに霧が!?いや、チャフ!それも量が多いぞ!≫
増槽の中身はグラスファイバー片、つまりチャフだった。敵機の目は確実にこっちを見失った。
≪今のミサイルで敵機の位置が丸見えだ。ブラックデスサイズに感謝する!FOX3!!≫
≪FOX3!!≫
≪FOX1!AWACS、誘導頼む!≫

僚機が一斉にフェニックスやスパロー、アーチャーなどのBVRミサイルを放つ。
≪!敵にこっちの場所がばれた!≫
≪護衛機!援護してくれ!≫
≪くそ!振り切れん!グアアアアア!≫
≪ブルー6が・・・・!!・・うわあああ!≫
≪くそ!チャフだ!チャフ!交わすんだ!≫

敵機の断末魔が聞こえても尚も敵攻撃機は無傷。護衛機は殆ど消えたが、敵攻撃機の位置は友軍のレーダーには映らない。
≪全機、こっちのデータリンクを信じてその目標に近づけ≫
≪レイピア6、了解≫
≪バイパー12、コピー≫

友軍機が敵攻撃機に近づいていく。
≪捉えた・・・GUN OPEN FIRE!≫
ヴァアアアアアアア!!!!

先頭のF-117に機銃を仕掛けるとあっと言う間に爆散した。
≪敵機確認!≫
それに僚機も続いた。曳航弾が黒い特徴的な機体に吸い込まれまた爆発する。
≪よおし・・捉えた。バイパー12、Fire!≫
また一機が爆発を起こす。その爆発の光がまたF-117の機体を照り返す。
≪鴨撃ちだぜ!オメガ4、FOX2!≫
ミサイルの直撃を喰らい、4機目が吹っ飛んだ。
≪最後は私が貰う、FOX3≫
ヴァアアアアアアア!!!ガン!キュン!ガキュン!バキャ!!
最後の敵機が爆発して、敵の反応が全滅した。
≪良くやってくれた。あの国籍不明機がいなければ艦隊は壊滅していたよ≫
AWACSから賞賛の声が上がった。
≪国籍不明機?≫
≪ああ、そいつが敵襲を知らせてくれたんだ。そいつはNASDF機と名乗っていたが≫
NASDFのワードに刹那は反応した
≪そいつはNASDFの中でも最精鋭の偵察隊だろう。恐らく、第零中隊の第ニ偵察隊だ≫
≪偵察隊?NASDFにステルスで編成された偵察隊があるのか?≫
レイピア4が隣に寄ってきながら言った。
≪いや、機龍のレーザーを偵察ポッドにとっかえただけの機体で、敵地偵察は得意の部隊だ。別名ブーメラン隊だよ≫
≪ブーメラン隊・・・中々良いネーミングじゃあないか≫
僚機が笑っている。後何回この様な風景が見られるか、刹那にとってちょっとした楽しみになった。

Fin

第8話:空戦

FCU信託統治領 アレンフォート空軍基地 12:45 
「!!敵機確認!大型機6!護衛機8!その後ろから友軍機5!」
レーダー員が司令官に報告を入れる。直ぐにアレンフォート基地はスクランブルが掛かった。
「良いか!此処より先には行かせるな!対空戦闘用意!」
対空砲も航空機も連日の敵襲で数は減っていた。新鋭機は優先的に狙われ、腕の良い奴は大概が戦死か負傷、又はノースポイントとサウスポイントで非常に厳しい訓練の為疲れが溜まっていて、数人が倒れたと言う報告すらある。
「冗談じゃない・・・・」
基地司令はそう呟いた。

作戦中域内 12:50
≪此方スカイアイ、貴部隊は我が機の指揮下に入った。これより作戦を開始する≫
AWACSの報告を受けて各機が増槽を落として加速して行く。
≪もう直ぐ6機の爆撃機が見える。全機叩き落してくれ。実を言うが今日は私の誕生日だ。誕生日プレゼントに勝利を頼む。≫
≪此方レイピア8、ラージャッ。≫
≪此方オメガ14ラジャー≫
≪此方バイパー11ラジャー≫
≪そいつは御めでたいな、メビウス1Engage。因みに私は負傷したメビウス1の代理パイロットだ。本人は後席にいる≫
刹那は軽く笑いながらAWACSに報告を入れた。
≪此方スカイアイ、了解メビウス1。所で、貴機の調子は?≫
≪此方メビウス1RIO良好です。Over≫
玲がそれに応答したため、周囲から冷やかしが来る。
≪お?メビウス1?もしかして婚約者でも乗せたのか?≫
≪良いねえ。若い奴は・・・・≫
≪え・・あ・・いや・・・その・・・≫

玲が応答に困っているのに軽く溜め息をつきながら、IRSTを見る。
(四発爆撃機・・・・これは・・・プロペラだな・・・この大きさは恐らくベアだろう・・・護衛機は小さな単発機が4・・同じく・・いやこれは双発か・・・これも4・・・舐めてるのか、航空機が足りないのか・・・もしくは囮か・・・)
色々考えている間に敵機を捉えた。
≪敵機確認。ベアが6機、護衛に小型戦闘機8。いずれも旧式だ。稼がせてもらう≫
直ぐにA/Bに叩き込んで加速する。その程度の数ならまったく問題は無い。
≪先に行かせるか!FOX1!≫
後続の各機がスパローを発射するが、いかんせん古いスパローなので何基かが稼動せずにそのまま落下した。
≪やれやれ・・・良いか?玲、ミサイル万能時代といってもなミサイルが作動しない場合が多い。ECMやその土地特有の電波障害なんかも良くあるんだ。砂漠の時なんて砂埃でIRシーカーが汚れて能力が下がった事だってある≫
刹那はそんな彼等に飽きれながら後席の正規のメビウス1に言った
≪は、はい!・・・キャ!≫
すると刹那は急に機体をハイレートクライムさせた。
≪この程度で驚くな。それでもメビウス隊隊員か?≫
高度35000フィートで反転、スパイラルパワーダウンに入る。高度計と速度計がぐんぐん回っていく。
≪わ!わ!わー!≫
玲は驚いた。今の機はベアの直上でそのまま突っ込めば確実に衝突する。
≪頂き・・・In The Gun Lenge・・・FOX3≫
ヴァアア!!!ヴォン!ガン!バン!ガキュン!バカッッ!!!!!!
刹那の機から放たれた20mm弾は正確にベアの燃量槽を撃ちぬいた。
≪敵襲だ!6時に敵機!≫
≪5番機がやられた。敵の歓迎委員会だ≫
≪護衛機!頼むぞ!≫

敵機がこっちのスパローを交わして迎撃に入ってきた。
≪刹那さん!後方に敵機3!≫
≪分かってる。あの動きなら十分落とせる。舐めきっているな≫
酸素マスクの中で刹那はニヤついている。さっさと済ませる為にある機動を行なう事にした。
≪玲、ブラックアウトしないように気をつけろ。≫
≪え?ど、どういう・・・≫
≪さっさと準備をしろ≫

敵機の動きをバックミラーで見ながら、敵機が一直線にならぶのを待つ。
(敵機が右旋回でほぼ一直線になった。行け!!)
グンと操縦を引き、エンジン出力を下げエアブレーキを最大限に作動させる。直角で失速状態になり機体が後ろにのぞけり出した。すると敵機と真正面に出た。戦闘機としてはあり得ない状態で正対したのだ。

 進行方向→    ↓自機(刹那)
→>→>→>   →<
 ↑  ↑ ↑
敵機(Mig‐21、F-5E)
 ↓  ↓ ↓       →∧
→>→>→>   →>/   \→<
             ↑刹那の単純な機動の図
≪!?な、何だこれは!≫
敵機の動きが鈍ったのでミサイルレンジを取っていたF-5とMig-21のパイロットは驚いた。だがそれでもガンレンジの状態だ。だが先に引金を引いたのは刹那だった。
≪落ちろ・・・≫
ヴァアアアアアアア!!!!
背面の状態でバルカンを掃射する。その弾丸はまず先頭にいるF-5に直撃し、次にその流れ弾を後ろにいたMig-21に当たった。
≪うあああ!!≫
≪ば、馬鹿なあ!!≫
≪グハッ!!≫
敵機三機は回避などできる筈も無く、全機が爆発四散した。刹那は機体を急降下の状態で速度を戻し機を立て直した。
≪びっくりした・・・・寿命が縮まりますよ≫
玲が急激な機動に身体を振り回されて、息が荒くなっていた。
≪いや・・・思いつきでやってみたんだが上手くいくもんだな≫
刹那は自身でも感心していた。
≪・・・・・へ?≫
目から鱗が落ちるとはこの事なのだろう。余りにも突然な告白で驚きを隠せなかった。
≪行くぞ、玲≫
機をまたベアに向けて上昇させた。僚機は敵機と格闘戦のようだ。それにアレンフォートの援軍が加わり一気に畳掛けに入った。

13:02ベア、護衛機全滅確認。被害は僚機の一機がベアの機銃で被弾、戦闘に支障は無かった程度で、市街地が爆撃されたが全市民は避難していた為怪我人、死者はいなかった。

14:52 空母[ウィスコンシン]飛行甲板
「驚きました・・・・。まさかあの状況であんな機動を行なうなんて・・・・」
機体から降りた玲は刹那に言った。
「・・・別に・・・あの機動はお前を看病してて暇だった時にちょっと浮かび上がった物だ。それより、ちゃんと機動の仕方や機動を始めるタイミングを盗めたか?」
刹那は玲にゆったりとした口調で言った。
「ええ・・・と言ってもほんの少しですが・・・」
刹那はそれを聞いてふむ、と少し考えた。
「・・・・では、今夜特別授業をしてやる。イメージと空力がつかめるように頭の中に叩き込むからな。それで良いか?良いなら黙ったまま頷け、嫌だったら黙ったまま首を振れ。」
玲は迷う事無く頷いた。
「そうか、了解した。今度の作戦でお前の上達度を見る。集合は19:00、私の部屋割りは413だからな」
そこまで刹那は言うとさっさと戻って行った。
「おい、メビウス1。ありゃお前さんの彼氏か?今のどう聞いてもお誘いにしか見えんのだが・・・グヘェ!!」
オメガ11が軽い気持ちで言うと玲はオメガ11のみぞおちに一発殴り込んだ。
「アホ!」
玲は顔を少し赤らめながらさっさと立ち去った。
「あーあ。オメガ11、お前それは言わない方が良かったのに・・・・」
整備員が笑いながら苦しそうにのた打ち回るオメガ11に言った。
「あの人はそんな卑猥な人じゃないよ。むしろ、他人には優しい人だ」
整備員の一人がまた言った。

fin

第七話:

9月17日 ノースポイント近海公海 ISAF海軍第一艦隊 空母[ウィスコンシン]医務室 1400
「・・・・いくら暇だからってこれは無いだろう」
刹那は一人の女性パイロットの看病を任された。昨日の戦闘で流れ弾を被弾して空母近くに不時着した奴で、不時着の時に頭をぶつけて脳震盪を起こして気を失ったらしい。それは一度刹那に会った事のある人物だ。甲板で野球ボールで壁当てを黙々とやっていたら、声が掛かったのだ。元々無口な性格だったのでそのパイロットを襲うような心配は無いと判断されたらしい。
「メビウス1、ね。たいしたコールサインだこと・・・ん?」
ドックタグやらそのパイロットの所持品をあさっていると一つの写真入れを見つけた。30人位の集合写真がある。
「ISAF空軍最強部隊と呼ばれた残りはこいつだけになったのか。」
ISAF空軍の中でもアグレッサーとして有名だったISAF空軍第118飛行隊メビウス中隊はストーンヘンジ攻撃時に護衛部隊として参加したが全滅したと聞いていた。
「・・・・・暇だ・・・・毎日が戦闘だったら飽きないんだが・・・・」
窓も無いため360度見渡しても似たような風景だ。
「これだったらJSOGの時の方が飽きなかったなあ・・・・」
JSOGに居た時は週一で戦場への出張があったし、人を殺すのに大した制約が無いから楽しかったのだが・・・今は傭兵として制約に雁字搦めになっている。戦場は刹那にとっては自らが死すべき場所と決めていたのだ。
「敵が来ないかなあ・・・・・」
不謹慎な事と判りながらもついつい呟いてしまう。
「ん・・・・」
どうやら気が付いたらしい。早速医務官を呼んで見てもらう。
「異常は無いみたいだね・・・後二時間ほど安静してなさい。君がもう暫く見てくれないかな?こっちはそうそう終わりそうにならないのでな」
医務官はそう言うとまた仕事に没頭した。どうやら船酔いする奴が多いらしく、その手当てで忙しいようだ。
「りょーかい・・・はあ・・・・」
溜め息を吐きながら軽く腰掛けてた椅子にさらに深く座る。
「此処は何所?」
「え?」
突然質問されて質問に即答できなかった。
「船の中なの?」
「あ、ああ」
ようやくそれに答えるても相手はさらに質問を続けた。
「あなたは誰?エルジア軍ではないみたいだけど」
「私か?私はただの傭兵だ。さっきの医務官に頼まれてここで君の看病をしているだけさ」
その娘の目は疑いの目だ。どっからどう見ても傭兵の様には見えない自分の姿を疑っているんだろう。何と言っても今の自分は整備員のツナギ(作業服)を着ているのだからだ。愛機の整備中に他の整備員のちょっとしたミスで油が多量に付いてしまった為に他人から借りたものだ。いまそのパイロット服は洗濯中だ。乾燥機にかけたら直ぐに着替えようと考えている。
「・・・ふーん」
「・・・女性は苦手だと言ったのに・・・・」
刹那はボソッと呟いた。此処に来て2度目の言葉だ。
「どうして此処に運ばれたかは知っているだろう?」
今度は刹那が彼女に聞いた。コクッと頷くのを確認するとさらに言い付けた。
「運が悪かっただけ。たまたま・・・でも死ぬ事はあるんだ。例えそれが流れ弾でもな。お前の場合は運が良かっただけだ。デブリーフィングで確認したけども君の動きは無駄が多い。しかも君はそれに気付いている・・・・何故飛び方を変えない?まるで無意識に死にたがっている様だった」
見ず知らずの傭兵に此処まで言われるのはショックだったらしい。顔を少しシーツにうずめて目をそらした。そして体を小さく身震いさせて何かを呟き始めた
「ジョンも・・・ハヤテも皆死んで・・・私だけ生き残ったって・・・・」
それを聞いて刹那はある情景を思い浮かべた。それは自らが犯した最初の殺人。実の父親と母親が殺され、怒りに身を任せて初めて人を殺したあの時を・・・。
(馬鹿馬鹿しい・・・・)
今の刹那にはそんな話はごく当たり前のように聞く。だが、慰めも必要だと思い頭を撫でながら言った
「お前が死のうが別に構いはせんが、それで死んだ奴が喜ぶと思うか?私だったら嘆くだろうな」
それを言われて相手は何も言わなくなった。医務官が仕事を終えて戻ってくるのを見るとその娘の頭を撫でるのをやめてこう言った
「もし、戦場で生き残りたいと少しでも思っていたら1610に駐機番号015まで来い。さもなくばお前が言っている事が現実になる。それに死んだ人間を思ったり感情的になる人間は戦場では足手纏いで構ってられんし、そんな人間に空戦は出来ない」
その娘・・・姫森 玲はコクと頷いて目を閉じて軽く眠りに入った

ノースポイント近海公海上 ISAF海軍第一艦隊 ニミッツ級原子力空母[ウィスコンシン]格納庫 1612
「すいません・・・遅れました」
軽く息が上がりながら彼女はやってきた。刹那はまだ損傷部分が直っていなくて海水で濡れているF-22に乗りって見ながら言った。
「二分の遅れだ。まあ、よかろう。玲、此処を見ろ」
コールサインでもタックネームでもなくいきなり本名で呼ばれて玲は驚いた。
「な、何故その名を?」
玲は刹那の本当の顔を見たことが無い。初めて会った時も、訓練の時も顔を極力見せなかったからだ。
「おや、この声を忘れたのかい?私は霧島 刹那"元"一等佐官ですよ。ここかな?ヨッ・・・良し取れた」
刹那は被弾した後から弾丸がつぶれた物を取った。
「判るか?これがお前を死に至らせるものだ。これが頭に直撃したらまず頭蓋骨を破壊し、脳をズタズタにして血を噴き出して死ぬ。体でもな、体が真っ二つになるか、体に大穴が開き、麻酔が打たれるか、死ぬまで延々と苦しむんだ。地面に叩きつけられたらショックと共に延髄が破壊されて息と心臓が止まるが一瞬だけ体がグシャグシャになってバラバラになる激痛を感じるんだ」
その弾丸だった物を突きつけながら言った。
「は・・い・・・」
その眼つきは人を殺す目よりも恐ろしい眼つきだった。
「お前はそれを受け取ろうとしている。そんなつまらん人生ならとっとと自殺した方がまだ人間らしく死ねるってもんだ」
苦笑しながら、玲のオーシア系の蒼い目をじっと見つめる。獣の目・・・いやまさしく蛇に睨まれた蛙状態。
「・・・・・」
ようやく目をそらすと刹那は愛機の方へと歩き出した。そこでようやく玲の頭に疑問が浮かんだ。何でこの人は此処に居るのだろう、と
「あ・・あの」
質問をぶつけようとしたその時に彼は立ち止まった。自分の愛機の前に着いたからである。
「何故此処にいるか?それを聞きたいんだろう?」
刹那は機体に触れながら言った。こっちの考える事を先読みしていたのだ。
「それはな、この機体の名前と同じだ。判るか?」
そう言うと機体の各所をチェックし始める。
「・・・ファントム(亡霊)・・・ですか?」
それに玲が答えると、刹那は主翼に飛び乗った。
「そう・・・亡霊だ。亡霊ってのはな、殺すに殺せない奴なんだ。こいつも私も9年前はスクラップのまま朽ちる筈だったが、そうはさせてくれないらしい」
ニヤッとしながらラダーやフラップを動かして様子を見る。物凄く良く稼動しているのに驚きを覚えた。
「例え、F-22だろうがSu-37だろうがEF-2000だろうがF-14だろうがな、相手がこんな屑鉄寸前の旧式でも零戦21型相手でもやられる時はやられるんだ。不死身な奴など、この世には存在しない。それが鬼神だろうが、エイセスコミューンの連中だろうが、世界一のエースだろうが、な」
チェックを済ませると、主翼から飛び降りた。
「私はこれからどうすれば・・・・」
玲が心配になって聞いてきた。
「今度の出撃の際、私の機体にIROとして乗ってもらう。"黒き死神"と呼ばれた私の空戦技から盗めるだけ盗め。いいな?チャンスは一回だけだ」
ククク・・・と微笑いながら言った。玲は本当の死神にも負けないくらい恐ろしい人間だと思った。

9月19日 ノースポイント 浜島"旧"レーダーサイト 11:00
「・・・・良し、仕掛けた」
工作員が爆薬を設置したのはレーダーサイトのレーダードーム内部だ。
「撤収しろ!急げ!」
他の工作員が警務の自衛官に注意を配りながら言った。
「良し・・・爆破・・・」
パン!ドシュウ!
「バズ!!」

突然その工作員は頭を撃ち抜かれた。自衛官に気付かれて発砲されたのだ。
「くっそおおおおお!!喰らいやがれええ!!」
ガチッ!ズガアアアン!!!

爆薬が炸裂してレーダードームが吹っ飛んだ。
「やった!・・・グアッ!」
その工作員は刃物を足に喰らってその場所に倒れ込んだ。
「ご苦労さん。保坂一曹」
その倒れた工作員を確保しながら自衛官はナイフ・・・・いやダマスカス銅を配合して強度が格段に上がり研ぎ澄まされた小刀を投げた自衛官に言った。
「いえ・・・しっかしこいつ等は馬鹿ですねえ・・・我々がISAF、エルジアに流した偽情報を信じて古くてしかも偽物のレーダーサイトに爆薬を仕掛けるなんて。」
工作員に小銃を突き付けながらその自衛官は言った。
「な、何だと!?じゃあ・・・この作戦は・・・・」
パン!ブシュウウ・・・・・

ノースポイント領海 浜島"旧"レーダーサイト近海深度10m キロ級原潜 11:05
「目標撃破確認!」
潜望鏡を覗き見ていた艦長はついつい叫んだ。艦内が歓声に包まれる。
「まだ仕事は終わっていない!通信用意!アンテナ露出せよ!暗号電波発信!」
直ぐにそれは復唱されて電波が発信された。
「よし・・・潜行ー!深度400!」
艦長の指示ですぐさま無音潜行に入った。後は予定時間に再浮上して工作員を確保し撤収するだけだった・・・のだが・・・・
「・・・・・・!?・・・・・!!!艦長!後方約800にスクリュー音4!深度600から高速で本艦に接近中!!速度50ノット!!」
「何だと!?機関始動!デコイ用意!」
「駄目です!!ま、間に合いません!!!!ひ、被弾します!!!!」
「原子炉スクラム!!予備電源にして衝撃に備えよ!!」
ズガアアアアン!!!!

キロ級潜水艦はあっと言う間もなく轟沈した。炸薬を増やした威力の高い有線魚雷での至近距離一撃必殺。交わせる訳も無く。魚雷発射管、ソナードーム、機関室、そして艦橋に直撃させたのだ。無論生存者はいない。それを沈めたのは最新鋭潜水艦カイリュウだった。まるで殺した相手を弔うように八の字に周り、深海へとまた没して行った。

ノースポイント近海公海 ISAF海軍第一艦隊 空母[ウィスコンシン]甲板 12:00
「敵戦爆連合が接近!全稼動機は即時発進せよ!」
スピーカーから緊迫した声が響く。待ってましたと言わんばかりに刹那は乗機に飛び乗る。玲もその後直ぐに刹那の機の後席に座った。
≪どうだ?あれ以来考えが変わったか?≫
刹那は後席の玲に聞いた。
≪はい≫
ヘルメットのバイザーから凛とした声が返ってきた。
≪そうか・・・では、行くぞ。ちゃんと目と身体で感じろよ≫
刹那は落ち着いた声で彼女に言った。
≪Mebus1、Cleared for TAKE OFF!≫
バン!ギュアアア
アアアアアアア!!!

fin

第六話:黒き死神の戦い方

ISAF海軍第一艦隊 9月16日 15:00
「敵襲だ!全機要撃用意!」
空母の飛行甲板にスピーカーの声が響く。急ぎパイロット達が機体に乗っていく。
「連日これか?こんなんじゃ肩がこるな!飽きないから良いが!」
愛機のF-4カスタムに乗り込む刹那。
「敵編隊ベクター0-7-0!高度25000!600ktで本艦隊に接近!!これは演習ではない!敵対艦ミサイル射程まで10分!」
スピーカーが正確に敵の位置を報告してくる。機銃弾のみを積んいる機体でキャノピーを閉めてカタパルトに向かう。周りを見てもF-14やF/A-18、ラファール、Su-33といった現役の筈の艦上戦闘機は少ない。機をカタパルトに載せて最終確認と離艦準備を済ませる
≪Brack-Death-Size Cleared for TAKE OFF!≫
射出指揮所の指示で出力を最大にまで上げる。まだ戦闘を体験させていないこのファントムの戦闘能力は未知数で、本物の亡霊だ。
≪行くぜ・・・相棒!!≫
バン!!ギュアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
A/Bオンの機体はカタパルトによって射出された。直ぐに70度のハイレートクライムに入る。
≪良し・・この感触だ・・・これなら、行ける≫
後続の傭兵や海軍の機体が続々と上がってきたが、長距離ミサイルを積んでいる様でのろのろとしている。
≪馬鹿な奴等だなあ・・・遠くから狙おうっても、そんなにとろかったら敵が攻撃する前に必中圏内に入れる訳無いだろう≫
X-00エンジンのA/Bは最大出力が178kNのF-135よりも高い190kNで、しかもそれを二基備えているこの機体はスーパークルーズなど余裕で出来る。垂直でもA/Bだと速度は落ちる事は無い。むしろ軽量化を徹底させたこの機体には垂直で音速を超えられる事すら容易なのだが、機体の耐用年数から大きなリミッターをかけられている。ノース・サウスポイントではこれをF-15改やSu-30MKIに搭載する予定だ。軽量だが生産・集中整備に難があることが唯一の弱点だ。高高度高速度(高度15000m以上、マッハ1.5以降、上空では空気が薄くなるので音速の速度が遅くなる)ではスクラムジェットエンジンが作動する様にこの試作型はなっている。その為、スクラムエンジン燃料である液体水素用のタンクを胴体と主翼に増設して大型化している。タンクは電気系統、稼動部分から離れているが、曳航弾が被弾したら即爆発する為にパイロットに超絶な負荷を掛けると言う理由で量産型では外される事になった。これは刹那自信の覚悟でもある。
≪速度980kt・・・・990kt・・・・高度36000≫
とてつもない速度で飛び続けるF-4カスタム、ミリタリー推力のままで飛んでいるのでそれほど大きな音もしない。
≪ターゲット確認!行くぞ!≫
複数の攻撃機を下方IRSTに捉える。護衛戦闘機も混じっているらしいが、200KM以上の距離を発進から僅か5分でやって来たのは意外すぎて護衛戦闘機が追って来れない様だ。護衛戦闘機のAMRAAMやR-33はことごとく外れた。1000ktで90度のスパイラル急降下に移る。
≪敵攻撃機の針路をずらす・・・一番機に一射撃!≫
ヴァアアアア!

バルカン射程外だが、海上に向けて直角で発射された20㎜弾は地球の重力に引かれて加速して行く。
≪二番機に一射撃!≫
ヴァアアア!!
≪三番機に一射撃!!≫
ヴァアアア!!

同じ様に微妙に機の角度を調節して放たれた20ミリ弾は正確に敵攻撃機・・TNDの主翼の付け根を撃ち抜き、そこにマッハ1.5の刹那のF-4戦闘機が編隊のど真ん中を通り過ぎ、主翼が根っこから綺麗に折れて3機ともバランスを失って搭乗員が脱出した。
≪ブルー1と4、12がやられた!≫
≪何だあれは!ISAFにあんな高速で尚且つ正確な射撃が出来る奴がいたなんて!≫
≪護衛戦闘機!優先して奴を狙え!敵のエースだ!≫
≪クソ!速過ぎて追えない!IRのミサイルロックすらさせてくれんのか!?≫
≪攻撃第二派はまだか!?≫

敵が混乱しているようだ。第二派と言うフレーズに舌打ちしながらも、下からの突き上げ体制に入った。敵はまだ任務を放棄しないらしい。もう直ぐバルカンの射程に入る時に――
≪諦めろ!散開するんだ!≫
パパッと敵機は対艦ミサイルを放棄して散開した。
≪優柔不断なやつらだな!だがそれが正しい!≫
スロットルを下げて、エアブレーキを最大にし、AOA(機体の角度による空気抵抗の大きさ、AOAが大きいと失速しやすい)を最大限利用して450ktまで下げて、再び出力を上げ、操縦桿を左手前に引いた。70度の突き上げから0度に戻して右旋回に入った。敵機と同高度に並んだのだ。比較的鋭い動きをする敵攻撃機Mig-25にA/Bで加速しながらロックした。
≪落とす!FOX3!≫
ヴァアアアアアア!ヴォン!ガン!バン!ギャウン!バキャ!

敵機の主翼に上手い事直撃させてその背後からマッハコーンを出しながらコックピットスレスレを飛んでいった。
≪ば・・・ば、ば化け物・・・・ッッ!!≫
その敵機のパイロットは恐怖にまみれながら反射的に射出レバーを引いた。死神の哂うエンブレムが見えたのだ。
≪撃墜!次!≫

この戦闘空域より西に130KM 15:20
≪何!?第一陣が!?≫
三枝 虚空はAWACS[ゼルダ02]の報告を受けてショックを受けた。
≪ああ、とてつもなく速い敵のエース単機が第一陣の中心を叩っ壊してくれて、現在混戦状態だ。空母からも多数敵機がやってきているし、ノースポイント本土からも5機程敵援軍が来ている。いずれもレーダーの反応の大きさからISAF機と思われる≫
三枝は舌打ちをしながら直ぐに下令した。
≪ワイバーンより全機へ!攻撃機は全て一時撤退!護衛戦闘機のみで第一陣を援護する!!≫
次々と了解が帰ってくると対艦ミサイルを抱いた攻撃機は全機撤収していく。
≪ノースポイントでもサウスポイントでもない、ISAF軍にそんなパイロットが!?≫
彩雲 朱義ことコールサイン、ツクヨミが驚きの声で言った。
≪判らん・・・友軍第三陣も同じ様にしてくるはずだ。思いっきり戦う。それだけだ≫
どんな敵のエースか、面を見てやると言う気持ちで機を巡航状態からさらに加速させた。

ノースポイント近海上の公海 戦闘空域 15:24
≪監視衛星より報告!敵機の第二陣、第三陣が接近中!警戒せよ!≫
刹那は敵機をまた一機落としながらそれを聞いた。
≪おもしれえ・・・・最後の一機までやってやる≫
後続の友軍機が長距離ミサイルを放ち、敵機に喰らい付く。必中圏内まで刹那の抜け駆けによって安全に接近出来た為、確実に一機ずつ落としていった。敵機第一陣は既に逃げの体制に入っていた
≪ありがとよ!新人!≫
≪その調子で頼むぞ≫
友軍機の声が無線に響く。それを刹那はもう聞いていなかった。
≪逃すかぁ!≫
戦闘スイッチの入った刹那にはもう敵は獲物にしか見えなかった。
≪た、助けてくれえ!≫
≪死神だ!死神が来る!助けてくれえ!!≫
敵の悲鳴に近い声を聞きながらも容赦なく一機一機落としていく。白旗を揚げなければ敵は敵としか見えない状態だ。
≪これ以上はさせん!FOX3!≫
そこにレーダーミサイル警報がなった。放った敵機は20KM西にいる
≪必中圏内からミサイルか・・・それでも俺にとっては脅威じゃない≫
A/Bで急上昇に移る。ミサイルもそれにあわせて上昇する。
≪新人!死ぬ気か!?≫
友軍機のパイロットが必死に叫ぶ。この場合チャフを大量に放って運動・位置エネルギーをいかに失わずに左右上下に急旋回し、敵ミサイルを惑わすかが問題なのだ。刹那のやり方は死に急ぐやり方と言った方がいい。
≪マッハ1.6・・・高度45000・・・作動しろ!≫
刹那は一つのレバーを引いた。と同時にコックを液体窒素タンクに切り替える。エンジン出力がグンと桁違いに上がり、機体がさらなる急上昇に転じた。
≪マッハ1.7・・・1.9・・・2.0≫
ミサイルが燃料切れになって追い付かなくなったのを確認すると機を急降下させて、レバーから手を離し燃料コックを戻した。そう、スクラムエンジンを作動させたのだ。
≪たいした上昇力だ。・・・・新型機なのか?≫
敵は関心と驚きの声をあげた。
≪その声は、三枝・・・か≫
擬似記憶に間違いなければこの声は三枝 虚空だ。機体を20度の緩降下を維持しながら、速度を1200ktで維持させる。
≪!?その声は・・刹那!ノースポイントで自衛官をやっていたんじゃないのか!?≫
三枝はまたも驚きの声を上げた。
≪・・・・立ち塞がるのなら、落とす!≫
エースブレイカー02が敵と認知した為、戦闘体勢に入る。
≪まさか、お前・・・待て!お前はそのAIに・・・クソッ!≫
三枝は機を傾けて刹那の第一撃を交わした。
≪戦場では機械と自分の直感を絶対信頼する事を俺は信じている≫
刹那は最大Gを掛けたインメルマンターンで速度を落とし最小半径で三枝のX-01に喰らい付いた。刹那は三枝の言いたい事は大体分かっていた。
≪三枝さん!!≫
その刹那に横から攻撃を仕掛けたのは彩雲 朱義のF-16XL改等が率いる編隊だった。
≪邪魔だ!≫
彩雲の攻撃を交わしてその編隊に攻撃を仕掛ける。コックピットのキャノピーを開けて13mm拳銃の銃口を少しだけ出して発砲した。
≪うわあ!≫
F-16Cの一機のエンジンに炸裂弾が直撃した。すぐに射出座席が射出される。
≪どうしてもやると言うのであればやるしかないな!≫
すると機首を空に向ける。
≪コブラか。いやクルビットだな≫
刹那は落ち着きながらその機動を見極めた。機体がオーバーシュートしたが落ち着いてある操作を行なった。
≪やったか!?ッッお!?≫
三枝は驚いた確かに敵機はオーバーシュートしたが、視界が白煙で何も見えなかったのだ。
≪何だこれは!?ぅあっ!≫
ガンガンガン!!!

機銃を喰らったようだ。ダメージを即刻確認する。
≪左主翼中破!?くそ!≫
機体を即座に基地に向ける。
≪逃がしたか・・・さっきの編隊は何所だ!?・・・・!・≫
刹那は此処で残弾数と燃料が危険なのに気が付いた。
≪ち・・補給の為に帰還する!≫

結局この後もISAF軍の強力な迎撃によりエルジア軍はISAF艦隊を撃滅できなかった。この戦闘での損害はエルジア側作戦機40機中25機が撃墜、大破。6機が中破、小破した。ISAF側が迎撃機15機中6機が被弾、本土から援軍で来たメビウス1が被弾し艦隊近くで不時着、機体と共に救助された。エルジア側の34名のパイロットが捕虜になった。

Fin

第五話:死の運び手

ノースポイント 9月15日 入間基地地下防空指揮所 16:00
「「「「自衛軍を退官するぅ!?」」」」」
その驚愕の言葉の原因は刹那が突然今日を持って辞任すると言い出した事からだった。
「すでに本省には辞職願いを出した。文句あるか?」
何の顔色も変えずに刹那はそれに答える。
「ンな無茶苦茶な・・・有事なんですよ!?」
「そうですよ!!今更・・・」

オペレータの一人が詰め寄ってくるが、何の顔色も表情も変えずに反論した。
「今更だから、有事だからこそ自由になるんだ。私には単身で戦場に行く方が慣れているし、何よりもISAF軍の最高司令官が頭を下げに来たんだ。此処で断る訳にはいかんだろう」
事情を簡単に説明する。それでも他のものは食い下がる。それらに刹那は一喝した
「さっさと持ち場に戻れ!国民を守る仕事を放棄する気か!!」
その一喝によってすごすごと戻る他は無かった。
「良し、それでこそ自衛官だ。すでに私は後任は決めてある。これまで通りの仕事をする事、これが私の最後の命令だ。河崎 亮子三佐と佐藤 涼ニ佐そして桂木 龍也三佐は19:00に私の部屋へ」
そこまで言うとくるりと踵を返して地上に通じるエレベーターに乗った。向かう先は第8ハンガー。愛機が保管されている場所。
「・・・・・やっとだ・・・やっと・・・戦場に立てる。お前が・・・・・・死を呼ぶ戦闘妖精とさげすまされていたお前が・・・・他人の役に立つ時が来たんだ」
整備員が刹那に気付いた。直ぐに整備員が駆け寄ると刹那は一つだけのオーダーを出した。
「こいつを20:00までに動かせるように・・・・頼むぞ」

エルジア サンサルバシオン 21:00
「・・・・・」
エーリッヒは夜空を見ながら何かの思いを募らせていた。
「隊長~?隊長~!」
イエロー4がそんな隊長・・・・イエロー13に声を掛けた。
「ああ、何だ?」
この場合・・・・ボーッとしていたといった方が正解だろう。
「何を思い浮かべているんですか?その様子じゃ、部隊編成とかを考えているのではないみたいですねえ」
図星を突かれたが大して気にしなかった。
「まあな。ちょっと幼馴染の事を思い浮かべてた・・・・」
そこまで言うとドサッと草原に転がった。
「幼馴染って・・・前に会った彼ですか?」
4はその隣に腰掛けながら聞いてみた。
「ああ・・・あいつは一番敵には回したくない・・・なんせ、私が最高のコンディションでもやられかねんし、何より敵の考えている事を百発百中させるからな。それにあの瞳の中には奈落が広がっている様で恐ろしいんだ」
エーリッヒは刹那(ラインハルト)の事をよく知っている。喩え相手が降伏の意思を見せても、参りましたと言わない限りいたぶる残虐な性格、相手の心理を利用し計算され尽くした行動、弱い者には手を差し伸べるが強い者にはこの上なく容赦無く攻撃すると言う信条、孤児になった後もどんな手段を使っても生き続ける執念、無駄な事は避け、障害があれば正面から徹底的に叩き潰す恐ろしさ、兵士として指揮官として最高の人物だが、人間としては最低の部類に入る。恐らく彼に世界を握らせたらシーザーやアドルフ・ヒトラーも驚きの事を何の表情を変えずにやってのけるだろう。
「あいつは・・・・人間としての心は悪魔に売っているんだろう。そんなのを敵に回しておいて、ただで済むとは思えん。今にエルジアは大打撃を喰らうさ」
エーリッヒは体を小さく身震いさせながら言った。
「・・・・・あ、隊長。前線からの報告を持ってきたんですが・・・」
4はエーリッヒに書類を渡した。エーリッヒはそれを読みながら、生きた心地がしなかった。
「レーションに・・・・コレラ菌・・だと!?明らかに人為的だ・・・・一体誰が・・・死者が25人!?」
そんな内容を読んでいたら刹那の嘲笑する顔が浮かんだ。ISAFにそんなのを出来る度胸を持った人間は居ないし、現地のコレラ菌は全滅していた筈だからからである。
「まさか・・・・あの男・・・ここまでやるか・・・・」

ノースポイント 入間基地地下防空指揮所 20:00
「さて、全員揃ったようだな」
防衛省からも防衛大臣や事務次官らが集まっている。大臣の隣に刹那は立っている。
「今、この有事とも言える状況で我が自衛軍の顔とも言え、自衛軍の練度を名実共に世界一にまでしてくれた刹那一佐が退官するのは非常に惜しい。だが、ISAF軍司令長官の直々の願い事を何の理由も無しに断る訳にもいかんし、向こうに恩を売っておく事も重要だ。」
刹那はその防衛大臣の言葉を内心嘲っていた。
(俗物が・・・・結局自身の保身を確保したいだけだろうに・・・)
刹那とこの防衛大臣とはかなり仲が悪い。現場の悲痛な声を聞いた振りをする上層部と下層部の隊員との中間管理職役で現場上がりの刹那にとって現場と上層部の立場を立たせる必要があったが、結局現場優先になり上層部とは仲が悪かった。
「そこでここに居る刹那一佐の強い推薦で一佐の仕事を三分割する事になった」
そんな事を知らない大臣は構わず続けた。
「河崎 亮子三佐、貴官には当基地基地司令を任命する」
「ハッ・・・光栄であります」
「桂木 龍也三佐、貴官には第零中隊、中隊長を命じる」
「は・・・有り難う御座います」
「佐藤 涼ニ佐、貴官にはJSOG総指揮官を命じる。以上!!」
「ハッ!!」
この三人は刹那が最も信頼を置く三人。亮子三佐は刹那を最も良く知る人間。桂木三佐は第零中隊で刹那の次に能力が高かった人間。佐藤ニ佐は海外での最も多くのPKO活動を経験しており他にも、JSOG[WAIR]の偵察分隊R・1の隊長で、実戦経験豊富な指揮官である。三人とも刹那の良き理解者で良くサポートしながらも、自らの職を疎かにせずにやっているという事で選び出した精鋭中の精鋭だ。
「では諸君の健闘を祈る!以上解散!!」
大臣の言葉で全員が刹那に敬礼したのち、退出した。
「・・・・良し、行くぞ」
全員が出た後に一人目立たない場所である非常階段から地上に向け一気に駆け上がった。実質上有事なので隊員に刹那を出迎える余裕はもうなくなっていた
「・・・・許可は既に貰ってるから大丈夫だろうが・・・・邪魔をしてきたら・・・・」
そこまで考えて、考えるのをやめた。
「・・・・私は・・・相棒と一緒で、戦う為に生まれたんだ・・・・邪魔をするなら片付けるまでだ」
地上にたどり着いて息が上がった体を第8ハンガーに向ける。
「あ、刹那一佐。準備の方は終わりました。今すぐ飛びたてます!」
整備員が明かりを持って誘導してくれた。
「一佐はもう止めろ。私はただの傭兵になったんだ」
整備員の口がポカンと開いている。その内その意味が分かったらしく、何も言わずに誘導し始めた。コックピット内には既にパイロットスーツと耐Gスーツそして航空機用ヘルメットが準備されていた。
「では・・・刹那さん。御達者で・・・」
整備員が無線を顔に付ける。肘をコックピットの両脇に乗せて両手を挙げ、装備を確認する。それと同時にエンジンが始動する。合図と共にエンジン出力を上げながら計器をチェックする。
「発動機出力系・・・速度計・・・水平計・・・G計・・・油圧系・・・射出座席・・・燃料チェック・・・武器管制・・・GPS・・・ALL Grean・・・ローレライ起動・・・良し・・・エースブレイカー01起動・・・良し・・・キャノピー閉め」
独り言の様に全てをチェックする。キャノピーが閉まるのと同時に整備員に敬礼を送る。整備員は直ぐに敬礼を返してきた。
「最古参の新兵・・・か」
内心自嘲しながらもタキシングを始める。自身もそんじょそこらの傭兵や軍人よりも実戦を経験している。自衛軍の任務で敵に包囲されながらも補給が届かない状況で最後の最後まで踏ん張ったり、同じ任務に就いていた傭兵・軍人を全員犠牲にしても同じ自衛官のみで帰還したりと色々と10年間の間にあり過ぎたのだ。でも自分は傭兵として初めて新兵となる。それを自嘲したのだ。酸素マスクを顔に引っ付けて離陸準備に入る。
≪Brack-Death-Size Cleared for TAKE OFF≫
≪This is Brack-Death-Size.Cleared for TAKE OFF Roger≫
管制塔から離陸許可を貰い、機体をA/Bで加速させる。
≪・・・V1・・VR・・V2!!≫
純白に染められた機体の余りにも急な加速に舌を噛みそうになるがどうにかそれは避けた。急速左上昇旋回させてもまったく速度は落ちない。
(何つー加速だ・・・と言うより・・このままだと宇宙まで行けそうな気もする。)
そんな苦笑をしながらも機を南東、新たな任地であるISAF海軍第一艦隊に向けた。

fin

第四話:戦闘準備

2004年 8月6日 ノースポイント 統合自衛軍入間基地 地上第5ハンガー 08:13
「あ~もう、何て練度を持ってんだ奴等は!!」
ブルフィンチは連日の訓練で疲れきっていたが、それよりも恐ろしいのはノースポイント航空自衛隊の戦闘機部隊の練度である。模擬戦20戦中、19敗1引き分けと言う感じなのだから仕方ない。しかも15連敗中だ
「本当にどうかしてるでございますです・・・」
地上攻撃の訓練を重点的にやっていたニーダヴェリールも溜め息を漏らした。嵐の中での海上低空飛行でノースポイントの対艦対地攻撃隊は3mの大時化の中で10.5フィートで機体をマッハ0.95で飛ばすと言う神業的な所業をやってのけた。さらに山間部の攻撃でも地上追従レーダーを使わずに編隊飛行しながら目標までレーダーに引っ掛からずに接近して見せた。その上、ダムの放水口に飛び込んだり、誰も立ち入れない様な峡谷にも無線を使わずに突っ込むほどだ。どうかしてるとしか言い様が無い。しかも地上の迎撃部隊も何時敵が襲ってくるか否かの状態を95時間耐えて最高の状態で迎撃してきた。だが、そんな部隊でも刹那一佐はまだ未熟者と言い続ける。0.1秒目標のタイムを下回っただけで鉄拳が飛んでくるのだ。何故其処までするのかと言う問いには防衛関係費がGDP1%に抑えられているからこそもっと練度が必要である事を強調した。そんなんでは専守防衛は出来ない、と教えているのだ。地上部隊の訓練の仕方も物凄い、腕立て1000回やれと言ったら「1!2!3!・・・・・・・545!546!今何分だっけ・・・12分か。13!14!」と何度もカウントをリセットしているし、戦闘訓練では一個中隊が警戒態勢から戦闘体勢に移行が完了するまで10秒をきるかどうかのレベルにまで行っている。さらに山の中で1週間何も飲まず食わずで生き抜かせたり、隊員一人が目隠しをして、10人位の隊員が囲んでナイフに似せた小さな木刀を強烈な殺意を持って投げて、それを何本交わせるかと言う遊び半分訓練半分でやっている。中堅・ベテランの隊員だとほぼ全て避けるが、その他はまったく交わせない。自分達も思いっきり投げてみたが投げた瞬間に相手の回避運動が始まってしまい、必ず外れる。中には目隠しをして完全装備になった隊員が室内でねずみを走らせて、一歩も動かずにねずみを傷つけずに捕らえるという芸をやれる奴も居る。スコープも付けずにただの小銃で500m先の標的の頭を狙撃できる奴すら居る。どうやったらそんな芸当が出来るのかを聞いてみたら、自然とやってる内に何だか周りの動きが分かると言った。他の陸軍では基本的に人対人の訓練が多いがこの自衛軍では人対自然という変わった訓練を多くやっているのが特徴的だ。
「一体どうやったらあんなことが出来るのやら・・・・ん?」
つい最近来たばかりのセレスティアは管制塔の前に整列する人の集団を見つけた。管制塔の前にはノースポイント国旗が半旗が掲げられている。時計を見るとAM8:15だった。何だったかを考えていたら突然スピーカーが起動した。
≪全世界のNBC兵器被害者に対し、黙祷≫
放送が流れ、集まった人間の全員が敬礼をする。
「な、なんだあ?ありゃ・・・・何かの新興宗教か?」
セレスティアと同じく来たばかりのザハール・F・アフマドは呆然とその姿を見ていた。
「あれ?知らないんですか?今日はヒロシマ原爆の日ですから休日ですよ?彼等に休みは無いですがね」
ウレイ・ナシナが呆然としている彼等に説明した。
「へ~・・・・って事は毎年やってるのか?確かこの国は二回核を落とされたんだよな?一年に二回もあるのかよ」
あきれた感じでアフマドはそれを見た。集まっていた彼等も1分後にはそれぞれの職に戻った。
「確か、この後にも模擬戦があるんじゃなかった?いつもならお呼び出しがかかるはずだけど」
ミハエル・レオーネは機体のチェックを終わらせて。暇をもてあます彼等の元に集まった。
「今日は無いみたいでございますです。何か色々忙しいみたいでございますです」
ニーダヴェリールはいつもの口調で事情を説明する。この基地の地下では今も厳戒態勢が取られている。何時またエルジア軍機が給油機を使って此処まで来るか判らないからだ。地上ではそれとは別に忙しい。噂では新型機のロールアウトが終わってテストを済ませてやって来るそうだ。それももう直ぐに。
「新型機か・・・・ISAFはそんな余裕も無いってのに・・・・」
ISAF軍パイロットの誰かが呟いた。
≪業務連絡、機龍の新型が降りてくる。地上整備員は準備をしろ≫
スピーカーが連絡を入れてくる。どうやら到着の様だ。
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
機影は二機、やはり心神がベース機体の様だ。だが、これまでのと妙に機体のアスペクト比がおかしい。段々その形もはっきりしてくる。その形はまるで―――
「・・・・X-01・・?とSu-47・・・か・・・・?」
一機は主翼はSu-47のような前進翼だが、よく見ると速度域にあわせて後退している。さらによく見ると二機とも水平尾翼と重なっていた垂直尾翼も速度が遅くなって行くとどんどん垂直に近くなっていて、コックピット直下の1本ずつの小型ミサイルが格納できるウエポンベイ2基の間に地面に接触しないほどの大きさのが一本、さらに二つのエアインテーク後部ウエポンベイに突き刺さるようになっている補助稼動翼。もう一機はこれまでの機龍と同様の主翼だが、此方も速度域に合わせて広がっていく。ランデイングギアが地上についた瞬間に特徴的なエンジン排熱口のパドル4枚中2枚が重なるように排気口を塞ぎ、逆噴射をした。これまでの機体とは一線を越えた機体だ。見た限り明らかに高いステルス性と高い機動性をかねた機体だ。駐機場に止まった機体はまるでXF/A-27にそっくりの機体と、エルジアが開発していたのX-01の瓜二つ的な機体。F-15に匹敵するほどの大きな機体だ。
「驚いたか?あれが私がここに居る間に書き上げた設計図を元に製作した機体だ。後2週間後には量産機10機が出来上がり、退役し、そちらに譲与するF-4改とF-15の無改造機全95機と引き換えに年間10機のペースで2007年まで生産を続ける物だ」
突然後ろから声を掛けられて全員がビビッた。
「刹那一佐!?何時の間に!?」
ナシナが振り向いて驚きの声を上げると音も立てずにブルフィンチのYF-23に寄りかかっている。
「そっちの誰かが[新興宗教か]と言った時には居たが?にしても貴様等は気が抜けてるな。足音を出さずに近づいてみたら誰一人気付かないとは。」
漆黒の制服に制帽の刹那は表情を変えずに答える。
「ってことは・・・あれはあんたが設計したのか?」
セレスティアが刹那に聞いた。如何見ても量産に適しているとは思えないのだ。
「まあな、ああ見えても部品の4/5は機龍と同じ規格、しかも主翼とレーザーはモジュール式で簡単にドライバーとスパナで交換できる。こいつ専用の細いF-14の様な主翼の後退角は-20度から78度。つまり前進翼と後退翼が両立できる。可変翼は速度域に合わせた最新の軽量スーパーコンピューター制御と人間が操作する半自動可変翼のままだ。整備は機龍同様専用のノートパソコン一つで出来るし、コストパフォーマンスを考慮して機体のエルロンなどの稼動は油圧式でやっているが、それらの指示を出すのは最新型のローレライⅡ型と連動する完全自立型のAIだ」
体をYF-23から離してさらに続けた。
「我々の切り札の一つと言った方が良い。我々は君達を受け入れてはいるが建前上は中立国だからな。例え、霞ヶ関の君等のGHQが精密爆撃されても独立部隊である第零中隊が交戦するか、それともその上が交戦を許可しない限り我々は交戦できない。エルジアがこっちに宣戦布告すれば話は違うが」
その口ぶりはまるで戦争を望む様な口ぶりに聞こえた。
「兵器としての幸せ、我々としての幸せは一生国民の陰として平穏に生きたいが、君等の対応が生温いせいでそうも行かなくなった。それにあんた等が勝手に起こした戦争にこっちを巻き込んだのはあんた等だ。我々を敵に回す覚悟があるんだろうな?」
刹那の威圧的な目が彼等にかかってくる。
「・・・・・」
誰一人としてそれに答えられない。
「慈悲深い国だから助けてくれるだろうなどと考えるなよ。貴様等が死ぬ時は我々は関与しないし、援助は基地と弾薬の一部だけしかやらん。」
そこまで言うと刹那は新型機の方に歩き出した。
「待てよ」
誰かが刹那を呼び止めた。
「あんたは目の前で苦しんでいる人間が居るのに何もせずに立ち去る男か!?」
その声はブルフィンチが出したものだった。刹那は振り向かずに答えた。
「もし、その人間が助かるなら助けよう。だが助からないなら殺すまでだ。それとも貴様等は助からなくても助けようとするのか?これだから人間は駄目なんだ」
吐き捨てるように言った刹那は、その後は何も言わずに陽炎でゆらゆらする地面の向こう側へと歩いていく。
「ッッ・・・・おい!!」
ギリッと歯軋りをしたブルフィンチは刹那の肩を掴んだ。
「何だ?私はこれからエルジアとの戦争準備で忙しいんだ。鉄火を持って闘争を挑むイカレタ連中を教育する為のな。鉄火を持って闘争を挑む奴には人間も非人間もあるまい。どれだけリスクがあるのかを教えてやる為に教えてやらんとな」
その口元は酷く歪んでいた。
―――笑ってやがる

ユージア大陸 8月15日 最前線 19:00
「オイ飯はまだか?流石に腹が減ったぞ!」
最前線のエルジア前線基地の兵士はむすっとしながら言った。
「今もってく!待ってろ!!」
物資保管所からレーションが運ばれてくる。
「ほらよ。腹が減っては何とやらって奴だ。さっさと食え」
他の兵士が自分の分を貪りながら届けてくれた。
「ありがとよ。ISAFも、もう終わりかぁ。クリスマスまでには戻れるだろうよ」
他の兵士も笑いながらレーションを食う。
――――二時間後
「ちょっとトイレ・・・」
一人の兵士が30分前からよくトイレに行っている。何だろうと思いながらも警戒を続けた。すると・・・・
「お、おれも・・・・」
「なんだあ?急に腹の具合が・・・・」
急に多くの兵士がトイレに行きだした。
「どうなってんだ?一体・・・・うっ!」
その兵士も直ぐにトイレに走り出した。すでにトイレには行列が出来ている。出てきた奴はさらに顔色が悪い。一人の兵士が急に倒れた。
「ま、まさk・・・」
また一人倒れる。ざわっと騒ぎ出した頃にはもう遅かった。
感染症・・・しかも、即効性が高くするために人為的に作ったコレラ菌によるものだ。一週間で最前線の兵士達が2000人戦闘不能になってしまった。しかも死に至る可能性がある。ノースポイントの特殊部隊が密かにレーションに混ぜ込みばら撒いたものだ。しかも、民間人にはちゃんとワクチンを渡してある。そのことを知らないエルジア軍は進撃を中止せざるおえなかった。此処から刹那の謀略が始まる。すでにこの戦争は彼の手の中で踊らされ始めていた。

Fin

第四話:戦争

2004年 ノースポイント 入間統合自衛軍司令部 7月20日 15:00
「騒がしくなってきましたね・・・この基地も」
完全武装の自衛官が漆黒の統合自衛軍の第一種制服と制帽を着ている刹那と話し合っていた。
「まあ、な。ISAFの連中も連戦連敗だから、藁にでもしがみ付きたいんだろ」
刹那は落ち着いた口調でノースポイント機と訓練に向かうISAF軍機を見る。明らかに練度不足による被弾が多いと最前線に居るR・1から報告があった。まるでベルカ戦争を思い浮かべる光景だ。連戦連敗をきしたISAFはノース・サウスポイントに基地と弾薬の提供を要求、見返りにもしもこの戦争に勝利したら戦勝利益の半数を謙譲すると言う事だ。
「この国の役人は目の前しか見ていない。武器弾薬燃料は是が非でもやるなと言ったのに、石頭共は何も分かってない。政治とは50年、100年先を見て、群集の味方としてあるべきなのに、な。こんな事ならクーデターでも起こした方が良いかも知れん・・・さもなければ国を滅ぼすだけで何の徳も無い」
ギリッと歯軋りをしていつもは無表情な顔が怒りに満ちている。
「では・・・」
自衛官は真剣な表情で刹那を見た。刹那の政治的カリスマ性が自衛官等を本気にさせているのだ。
「だが、民主国家でそんな事が許されるはずも無い。何しろ国民が許さないからな」
表情が少し柔らかくなり、クルッと踵を返して基地地下への通路に歩いていった。
「勿体無いお人だ。時世が時世なら総理大臣にも成れる方なのに・・・」
その自衛官は肩をすくめて自身の仕事、基地の警備に集中した。

ノースポイント 入間統合自衛軍司令部地下本営 16:00
日ごとに小さくなるISAFの国境を出しているスクリーンのみの光が室内を照らす。
「・・・・」
誰一人喋らない。1ヶ月前に臨戦態勢に入ってからずっと緊迫した空気になっている。
プシュウ・・・・ゴン
誰かが扉を開けて中に入ってきた。
「刹那一佐、今日は何の御用で?」
レーダー員が少しレーダーから目をそらして入ってきた人、刹那を見た。
「ISAF軍の戦績と模擬戦結果を頼む」
刹那がオペレーターに声を掛けた。
「ハ・・・」
小さなスクリーンにデータがズラッと並ぶ。
「酷い負けっぷりだな・・・。大半がSTNか・・・。だが、STN射程圏外に出ても損害率が高い。さらに言えば、うち等との模擬戦で勝った部隊陸海空全ていない・・・・練度が低すぎる。」
ぼそぼそと独り言のように敗因までも詳しく分析する。
「これでは、ユージア大陸の雄とも言えるエルジアには勝てん。よくもまあこんな軍隊を持っていたもんだ。」
溜め息が大きく出た。この程度の軍隊ではエルジア所か、ノースポイント一国にすら敵わない。
≪業務連絡、霧島 刹那一佐、第8ハンガーで河崎 亮子三佐がお呼びです。至急第8ハンガーまで≫
館内放送で呼び出しをくらって急いで地上へのエレベーターに向かう。
(やっと出来たのか?)
ちょっとした希望が出てきた。地上に着くと早速駐機場端っこのハンガーに向かう。
「遅いわよ。一佐・・・まったくこれの為に整備員を使うなんて、工場に回せば良いじゃない」
ハンガーの前で一人の女性佐官がぶしつけで言ってきた。
「工場に回せない理由があったんだ。開けてくれ」
ゴオオオオン・・・・ガアン
ハンガーの扉の向こうには纏められた戦闘機の残骸と一機のF-4ファントムがあった。
「久しぶりだな・・・・相棒。お前も俺もこんなに変わっちまったんだな」
あちこちオリジナルとは違う感じになっている。カナード、三次元ノズル、大型化された主翼とエレベータ、さらにレーダーを全廃した変わりにIRSTの死角が無くなり、M61A2と言う新たな短刀と長くなった機首。機種転換を急ぐ為に戦闘機の死神と呼ばれた刹那があくまで廃棄するのを拒んだ唯一の機体。エンジンも最新型になっている。さらに機体のあちこちも補強されて後6~7年は使えそうだ。
「一応・・・仕様通りではありますが・・・・」
整備員がおずおずと刹那に言った。
「良くやってくれた。暫く休んで良いぞ」
刹那は満面の笑みで答えた。すると敬礼をして整備員は自分の宿舎へと歩いて行った。
「何故・・・それにこだわるの?」
亮子三佐が後ろから声を掛けた。
「亡霊には亡霊が一番だろ?」
苦笑しながら機体に触る。
「・・・・・付き合いきれないわ。本当に」
そう言うと彼女はそそくさととハンガーから立ち去る。
「他の何に変えても、愛機は愛機だ・・・・例え、肉体が違っていようが、な」
1995年時に刹那は確かに死んでいた。ならばこの刹那は誰なのか?その疑問に答えられるのは本人しか居ない。
「オリジナルでも、こんな感傷に浸ってたのかな・・・」
そう、彼はクローン、本当の刹那が死ぬ事を想定して作り出した、クローン人間。いや正確に言えばクローンVer.1と言った所だ。刹那のクローンは一人ではないのだ。とは言えども同時に何処かの漫画のように多数の刹那は存在する事は出来ない。実はヒトゲノムを初めて解析しようとしたのはノースポイント人だったが、学会は認める所か、異端として芽を潰した。それ等の科学者を父親と母親が残した多大な報酬で買った広大な土地の地下の刹那自身が手がけたクローン研究施設に匿い、そして擬似記憶を埋め込んだ今の刹那が生まれた、被検体一号と言う所だ。死にに逝く前にノースポイントによったのは機体の入手ではなく、これが目的だった。しかも、特に外見のDNAを他人のに変えている為、どんなに照合しても30%以上は違う。
「・・・・・まだ仕事は残ってるからな急がないと」

ノースポイント 入間統合自衛軍司令部 19:00
「なんつーか・・・平和だな」
ガフェイン・ブルフィンチは部隊を引き連れて反抗作戦の為に作られた貯蔵部隊(予備部隊)に配属された。早速、報告をする為に司令室に向かおうと思ったら、結構二番機がはしゃいでいる。
「ハイドラ!何やってんだ!置いて行くぞ!」
ハイドラことウレイ・ナシナは突然地下から飛び出した戦闘機に驚いていたようだ。
「隊長・・・あれ・・」
ナシナの目線の先には二機の戦闘機が80度のハイレートクライムで上昇する姿があった。
「キリュウ・・・?」
機体のシルエットは分かりづらかったが、かろうじて判明した。この国ではF-15に取って代わっての英雄の機体として注目される機体だ。何と言っても、ユリシリーズを迎撃した唯一の機体で世界に驚きを与えた機体だからだ。
「機龍が配属されてるって事は此処の基地の部隊の練度は高いって事ですよ。あー模擬戦が楽しみだ!」
戦争をしてんだと言う事を忘れないでくれよ・・・とブルフィンチは厭きれていた。
≪業務連絡、滑走路を直ぐに開けろ。被弾機が来るぞ≫
突然消防車がサイレンを回して突っ走っていく。どうやら同時刻に到着するダルモエード隊とメビウス中隊の生き残りの様らしいが、不穏な空気だ。
≪スクランブルしたコブラ隊とエルジア軍機が接触、戦闘に入った。総員第二種戦闘配置≫
「!?何故第二種戦闘配備なんだ!?エルジア軍が怖くないのか!?」
ブルフィンチは余りにも対応がぬるいので驚いた。だが実際はその真逆だった。

ノースポイント防空識別圏内 19:10
≪!?ノースポイント方面に敵影、真っ直ぐ突っ込んで来る!≫
ISAF軍機と交戦中のSu-37黄色中隊機に乗っていたイエロー14は僚機に注意を促した。既に視認圏にその機影は入っており、明るい航空用ライトを照らして突っ込んで来た。
≪隊長、指示を≫
イエロー4がイエロー13に指示を求める。
≪迎撃だ。警戒しろ。こいつ等の動きは異様に早い!ISAFの連中ではないぞ≫
イエロー13は今まで追っていた蒼いリボンの機体の追撃を諦め、新たな敵機の迎撃に向かった。
≪敵機確認、迎撃に入る≫
イエロー14は目標にR-73をロックしようとするが、まったく赤外線シーカーの反応が無い。どうやら先にこっちの赤外線シーカーを何らかの方法で惑わせているようだ。即座にGUNに切り替えた。Gsh-301の残弾数は150発中75発、十分戦える。すると、無線に雑音が響く。さらに上手なエルジア語とFCU語で何かを言ってきた。
≪警告する!警告する!此方、NASDF第零中隊機、其処のISAF、エルジア軍機に告ぐ。直ちに戦闘を中止し、此方の指示する針路を取れ。さもなくば直ちに強制着陸させる!≫
有無を言わさない強い声と鼓膜が破れるほどの声に驚きながらも、直ぐに言い返した。
≪何言ってんだ!このトーヘンボク!俺達は天下の黄色中隊だ!!さっさと家に帰って母ちゃんのおっぱいでも吸ってな!!≫
相手はこの挑発にはまったく乗らずに、何かを喋っている。そしてそれが終わると同時に閃光が走った。
ドヒュウン・・・・・
≪な!?何だ!今のは!?≫

突然の閃光に首を竦めながら周囲を見た。敵も味方も全機確認出来た。
≪エルジア軍機に告ぐ。今のは威嚇射撃だ。司令部からの交戦命令を受諾したため、最後勧告を行なう。直ちに発進基地まで撤退しろ。さもなくばレーザーが君等の機体のコックピットを貫くぞ。既に君達の機体は誤差30センチ未満で我々と地上、海上から狙っているんだからな≫
どうやら本気らしい、このまま戦っても全滅するだけだ。イエロー13は直ぐに決断した。
≪クソ・・・全機退くぞ、戦ってもやられるだけだ。≫
5機のSu-37は機を翻して西へと飛び去った。
≪さて、生き残りはあの三機か。其処のISAF軍機に告ぐ、此方の指示する針路を取れ、最短コースで入間まで案内する≫
≪助勢有り難うでございますです・・・。≫
≪此方メビウス1、メビウス2が負傷しています。最優先でお願いします!≫
応答したのは二名のA-10とF-22のパイロットだけだ。あと一人のF-14Bは単座のようだが、そのパイロットはかなり苦しそうだ。
≪ラジャー。おい、コブラ2、ワイヤーであの機を連れて行け≫
NASDF機二機のうちの一機が傷ついたF-14の前に来て、機体の尾部からナイロン製の内視鏡のようにくねくね動くワイヤーのような物を数本流した、するとそれは正確にF-14の上部エアインテークや前縁フラップに絡みついた。
≪此方コブラ2、目標を固定した。最速でRTBする≫
そのワイヤーらしき物を引っ付けた機影はスーパークルーズによってどんどん加速して行く。
≪此方コブラ1、ダルモエード3、メビウス1、我に続け≫
命令に従いながらそれの機体に蒼いリボンのF-22とA-10が続いていく。

ノースポイント 入間統合自衛軍司令部 22:10
「メビウス1、2、ダルモエード3、シグマ1、2、3の着任を認める。」
刹那はISAFから届いた書類に目を通しながらもテキパキと言った。
「私はこの基地の司令であり、統合自衛軍航空自衛隊の最精鋭隊第零中隊隊長であり統合自衛軍唯一の特殊部隊JSOGの総指揮官だ。欲しい情報があれば直ぐに開示する準備があるが・・・何か質問はあるか?」
愛想も何もなく、さっさと言うその言葉には感情がこもっていない、指揮官として無用なものは捨ててきたような口の聞き方だ。
「あの・・・メビウス2の容態は?」
メビウス1こと姫森 玲は恐る恐る聞いた。
「良好だ。ただ、足に食い込んでいた弾片が足の神経を圧迫していててな、暫く足に麻痺が残ると医療官から報告があった。戦闘機乗りとしては暫く休業になる」
それを聞いて玲は少しほっとした。
「あんたの名前はまだ聞いてなかったが?」
ミハエルが刹那に聞いた。
「一番言いたくない事だが、霧島 刹那一等佐官だ。一応有名にはなってるからな」
口を少しゆがめながらも即答する。
「話には聞いた事はあったでございますです」
「もしかして・・・・シューティング・スター(本当の意味は流星だが、ここでは星を撃つ者の意味)と言われたあの刹那一佐!?」
ざわざわと騒ぐのを見て、ああ・・・やっぱりか、溜め息を吐く。
「頼むからそれは言わないで欲しい。今の私はただの一戦闘員で、ただの走狗だ。それを誤解しないで貰いたい。では解散。部屋への案内は表にいる自衛官に頼んでもらいたい。此処の基地の人間は全員が君等の部屋割りを知っているから安心しろ。機体は第5ハンガーに纏めておく」
ぞろぞろと皆が移動を開始する。誰も居なくなった司令室を刹那も一旦出る。向かう先は小銃武器庫だ。
「・・・・」
何も言わずに64式小銃を取り出す。そして戦闘服に着替えて向かったのは訓練区画のキルハウス(CQB訓練用の小施設、大体一戸建ての住宅に似せて作る)。CQC訓練中の隊員達が敬礼して止まる
「始めてくれ」
刹那はモニターを見ている隊員に頼んだ。
「了解、では・・・はしごを上ってロープの前まで」
言われた通りにしてロープの前に立った。丁度二階建てのキルハウスが見下ろせる
「地上についてからタイムアタックを始めます。最速はSATの西山ニ曹の10.4秒です」
隊員が言い終わるのと同時にロープに捕まり降下した。地上についた瞬間にテロリストを似せて書かれた標的が窓の向こうに現れる。
ドン!ドン!ドン!!ビビビビビビビビ!!
「Tango DAWN!!NEXT!」
全力疾走で二階に駆け上がる
「フラッシュバン!」
ドカンドカン!!ドン!ドン!ドン!ドン!!ビビビビビビビ!!
「クリア!NEXT!」
今度は一階の廊下に複数の敵が現れるそれをナイフと拳銃とで上手く倒していく。
「オールクリア・・・すげえ・・・9秒42・・・・最速タイム更新です。重い64式小銃でどうやったらそんなに早くできるんですか・・・」
軽く息が上がりながらも刹那は全ての武器を他の自衛官に預けた。すると今度は20mm対装甲車用ライフルを持ち出して狙撃訓練場に向かう。1ヶ月前から狙撃とCQC、さらに模擬空戦をやっていたのだ。
「ようこそ一佐、ゼロイン(狙撃スコープの調整、これが出来ないと命中するのは難しい)は大丈夫ですか?」
自衛官が狙撃銃のほうを見ながら言った。
「当然だ。ターゲットは3000m先で頼む。風力は2~4、風向きはランダムで頼む」
直ぐに射撃位置に伏せる。
「了解、3km先にターゲットを出します。」
だだっ広い射撃場にたった一人の人間がポツリと居るようにしか見えない。
(ターゲットロック・・・湿度62%、風速3.45、風向きは南からか・・・・ならば修正角は・・・・よし・・・)
目標を定めると息を止めて狙いを定めた。相手は約4km/hで動いている。それも修正に入れる。
ドガン!!!・・・・・・・
「ほー・・・命中ですか・・・素晴らしいですねえ」
自衛官が賞賛の言葉を言う、スコープを覗き見ると確かに目標に当たりはしたが、急所は外してしまったようだ。
「まだまだだよ。これではまだ戦場では生き残れない。もっと力を蓄えなければ、な」

fin

第三話:開戦

2003年 8月20日 入間統合自衛軍地上ハンガー 16:00
「どうだ?私のファントムは?」
刹那は今、かつての愛機の残骸だったものをベルカから持ち帰り、それを復元させようとしている。偶然墜落した所が積雪の上で敵機との体当たりの時に失ったノーズと右エアインテーク以外は無傷に近かった。そして刹那自身はエンジン部分の交換作業をしていた。最新型のエンジンXー00。この性能は計り知れず、出力だけなら成層圏のギリギリまで飛んでいける。設計からファンをエアインテーク上部に収納してスクラムジェットエンジンとターボファンエンジンを切り換えられるという利点がある
「うーん・・色々壊れてて・・・・他の物で補強しても足りないと思います」
整備員が答える。
「そうか・・・だが・・・私には感じられるんだ。こいつはまだ飛びたがっているのを」
そう言うとまだ修復が半分程度のファントムを見る。
「・・・・あと一年待ってください。絶対に戦闘が出来るようにします。それまでは機龍で慣らしといたほうが」
「ああ分かった。頼むぞ・・・ああ、倒れないでくれよ。ただでさえ暑いんだ」
「ラージャッ」
整備員とのやり取りを終え、ハンガーの外に出てみた刹那。管制塔の方から亮子三佐が走ってきた。
「一佐!!大変です!!」
よっぽど急用らしい、こっちを見つけ次第全力で走ってくる。
「どうした?首都に核でも落ちたか?」
落ち着いてそれに答える
「違います!エルジアがSTNを奪取しました!!さらにサンサルバシオンに侵攻作戦を開始しました!!それに対抗してFCUはFCU中心のISAF軍を編成しました!!」
ピクッと刹那はそれに反応した。
「ほう・・・。あの国がとうとう始めたか。忙しくなるぞ。三佐」
ニヤッとしながら答えた。
「ハッ!直ぐにコンディションレッド(臨戦態勢)を発動します!」
亮子三佐が敬礼して走り出そうとするのを刹那はちょっと待ったと言う具合に手を出した。
「いいや、まだだ。まだデフコン(戦闘レベル)2のままだ。いいな?」
「で、ですが・・・」
反論しようとする三佐にすかさず言った。
「エルジアの力を見極めてからでも遅くは無い・・・ちょっと今日は久々に空を飛んでみたくなった。9人連れて付き合ってくれ。久々に"あれ"も使いたい」
「!!・・・あれを使うのですか・・・・・了解しました」

ノースポイント 入間統合自衛軍地下ハンガー 18:00
「こいつ暫く飛んでなかったから拗ねて埃だらけにしてねえよな?ん?」
コンコンと機体をたたいてチェックを済ませる。機龍の漆黒の機体はまったくをもって良好だ。
「さて、行きますか」
キュウン・・・キュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!
機体のエンジンがスタートし始める。と同時に機体のキャノピーを閉める。その他にも同じ音が数度にわたり響く。その音は約30機。刹那の機体にはパイロットに多大な負担がかかるシステムが搭載されている。地下駐車場のような場所を誘導灯を元に進んでいく。そしてその空間の行き止まりに到達した。すると機体はゆっくりと斜め前にあるハッチに向けられる。そしてハッチが開かれた。
≪圧力良し、射出角安定、一~五番射出用意良し・・・・5、4、3、2、1射出!≫
バシュンバシュンバシュンバシュンバシュン!!!!!

≪上空12000で編隊を組めレイザー隊はα、ランサー隊はβに別れろ。≫
≪ウィルコ。レイザー1よりレイザー各機、方位0-2-0高度12000で牙突隊形を組め≫
≪ランサー1、ラジャー。ジャベリン隊各機方位3-4-5、高度12000でジャベリン隊型を組みなさい。≫

計9機の機龍が高速で別れていく。地上から次々と無人機が射出される。UF-4と呼ばれるT‐2CCV改の無人機だが、機動データには鬼神や各空軍のトップエース達のデータが詰まっている。機動性だけなら世界中の第4.5、5世代戦闘機にも劣らない。機龍とて例外ではない。
≪各機ぬかるなよ。撃墜数の多い者が勝者だが落ちたら負けだぞ≫
刹那が交戦命令をだした。
≪ラジャー、アタックランサー!≫
≪ランサー隊に遅れるなよ!レイザー各機遅れるな!≫
≪さてと・・・行くぞ。システムオン!クッッ・・・・クゥゥゥ・・・!≫

頭に締め付けられるような痛みが走るのと同時に周りの状況が簡単にイメージできるようになった。これがノースポイントが開発した新システム、コードネーム[ローレライ]。ありとあらゆる機外センサーの情報が搭乗者のイメージとして脳内に映し出される。副作用として酷い頭痛に悩まされるが、F/A-27に試験的に搭載され各国で開発中のコフィンシステムでは得られない敵の位置、速度、機体の状態が瞬時に脳内に映し出される。技術的に言えば、機外センサーから得られた情報を電気信号に変えて、ヘルメット内にある特殊な超音波により頭部につけたセンサーが反応し、それを直接弱い電気信号・・・つまり人間の神経と同じ働きをする訳だ。だが体は当然拒否反応を起こすため、現在副作用を抑える為の研究がされている。
(敵機下2時方向・・・この機動は姉さんだな!)
刹那の姉はサイファーの事だ。勿論このUF-4に搭載されるAIは常に学習しているため、9年前のサイファーよりも強いのだ。
≪捉える!!≫
520ktの機体がスパイラルダイブでそのUF-4を追い始める。
(右か・・左か・・姉さんなら下に逃げて地上ギリギリで対処してくる筈だ)
刹那は操縦桿をそのまま握り続けエアブレーキを最大にして追う。すると刹那の読み通りに敵機は急降下した。
(それを待っていた!)
ガンッとA/Bにスロットルを叩き込み、エアブレーキを閉じた。チキンレースを挑むつもりなのだ。2機が並んだ瞬間にA/Bをカット、速度を合わせて降下していく。この時速度840kt、高度8500だ。舵の効き難い超音速。何所まで降下するのかはどちらも分かっていた。
(6000・・・5000・・4000・・まだ)
すると敵機は高度3000で降下を諦めた。最大Gをかけて上昇に転じる。
(貰った!!ッッ!?)
刹那は驚いた。地表に近すぎたのだ。咄嗟にGリミッターを解除し、機体が空中分解するギリギリの13Gまでかけた。
(昇れぇぇ!!)
息すら吐けず、内臓が押し潰されそうになるほどのGと真っ暗の視界、さらに力が抜けるのを必死に耐えた。そして機が水平方向になった時に直ぐに右旋回に転じた。
(やってくれる!)
酸素マスクの中の顔は酷く歪んでいた。空戦はこうで無いとな、と喜んでいるのだ。直ぐに索敵をしてその位置にも驚いた。
(真上!)
あの状態で大した物だと感心しながらA/B点火、急上昇。空戦エネルギーはこっちが劣るが、エンジンの差なら勝てると判断したのだ。
≪12o'clock!GUNFire!!!FOX3!!!≫
ヴァアアアアアアアアアアア!!!!

機体をロールしながら、バルカン砲を撃った。敵も同じ様に撃ってくる。
ギュワアアアアアアアアアアアア!!!
ほんの一瞬ですれ違い、コックピットを揺るがした。
≪Enemy kill!!次!≫
撃墜判定を確認し、勝利を確信する。被弾、被撃墜判定なし。だが戦闘が終わったわけではない。
≪レイザー2FOX2!・・・・スプラッシュ!≫
≪ランサー4FOX3!!・・・チッ外した!≫
≪ランサー2ケツに付かれてるわよ!≫
≪分かってる!オラァッ!!≫

一機の機龍が敵機を木の葉落としでオーバーシュートさせる。即座にGUNで落とそうとしたときもう一機のUF-4がその機龍に喰らいついた。
≪させん!!ブラックデスサイズ、FOX2!≫
ピー・・・・・ピピッ
撃墜判定を確認して、次の標的に向かう。
≪一佐、助かりましたよ≫
≪この未熟者!実戦なら死んでるぞ!!≫
≪ハッ!すみません≫

まだ若いらしい声が無線機から聞こえる。ヨロヨロと飛んでいる敵機を3時方向に確認しそっちに向かう。
(こいつは・・トラップだな。こいつはUF-4改だった筈だ。確かポストール機動が出来るタイプ・・・・)
そう考えて速度を落とす。やはりゆっくりとした機動をしている。出来る限り機体を近づけ、一撃必殺で仕留めようとする。だが、予想通りポストール機動[コブラ]を使ってきた。
(タイミング、速度もベスト・・・普通ならこっちが落とされるがな・・・・だが!!)
突然全てのFBW(全自動機体制御装置)を切ってマニュアルに切り替える。主翼とカナードを最大まで展開し、Gリミッターを解除してミリタリーパワーで直角で急上昇した。
(行けッ)
そのまま操縦桿を引き続けると、失速を引き起こした。すると機体はその場で直角から250度回転した。すると照準器にはコブラを続ける敵機の背中があった。すかさずバルカン砲で仕留める
≪トラッキングキル!どうだ!切れ味抜群のツバメ返しは!≫
絶妙な操縦桿の扱い方と速度、湿度、エンジン出力に至るまで計算された業物[ツバメ返し]、並大抵のパイロットには出来ないアンチ・ポストールマニューバ・マニューバと言う新たな空戦技、サウス・ノースポイントに刹那を含め15人しか出来ないほど難しい機動だ。
≪Red Team(敵軍)全機撃墜確認、Blue Team(自軍)全機生存確認、良くやった。AIのレベルを上げなければな≫
管制塔から笑いの声が聞こえる。だが、一年後には緊迫した空気に変わっている事に刹那を除き分からなかった。

fin

第二章の人員募集開始!

20080115224821
この章での皆さんの参加を募集します。ISAF軍、エルジア軍そしてコミューン(どちらかの陣営につくかも記入の上で)下記の物をお願いします。
・氏名
・年齢
・性別
・乗機
・趣味、嗜好品、口癖、戦術、陣営etc
・刹那を知っているかどうか
全員は無理かもしれませんが出来る限り多く出演させようと思います。
記入はこの記事か、円卓広場にてお願いします

 

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