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軍事講義第三回:赤外線ステルス

赤外線(infrared)とは、身近にありふれた電磁波である

例えば、遠赤外線ヒーター・近赤外線ヒーター等のこたつ、電気ストーブ。赤外線通信やリモコンと言ったところだろう

車になれば自動車のナイトビジョン・システム(赤外線カメラでとらえた映像をディスプレイに表示し、夜間の視界を拡大することで安全走行に寄与する夜間運転支援システム)というのもある

昨年の新型のインフルエンザ騒ぎで、感染の疑いのある人間を発見する為に空港に赤外線を用いたサーモグラフィーが使用された事もある

赤外線
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E5%A4%96%E7%B7%9A

地球放射の一部と太陽放射(0.8micron以下。幅が狭いため正確に表現できていない)のスペクトル。青い部分の上下幅が広いところが大気の窓。横軸(Wavelength)が波長、縦軸(Transmittance)が放射の透過率を表す。
http://blog-imgs-44.fc2.com/4/2/5/4253blog/Atmosfaerisk_spredning.gif

赤外線の特徴は「絶対零度の物体を除くすべての物体から発せられる」事だ

軍用機や、戦闘車両も例外ではない

軍事では電波よりも波長が短いので、届く範囲は短いものの、陸上や空中や海中の目標捜索に使用される

赤外線捜索装置の特徴は、極めて目視と似ている

メリットは電波とは異なり電磁波を照射しなくても探知は可能(かつての暗視装置では赤外線ライトを照射する必要があった)な為、能動的ではない事

旧式のアクティブ式赤外線暗視装置を持つ74式戦車

74tk02.jpg


現代の主流であるパッシヴ式暗視装置、自衛隊のJGVS-V8個人用暗視装置

800px-Jgvs-v8.jpg

つまり現代の最新の探知技術(1990年代になって冷却を必要としない二次元受光素子が開発され、初めて小銃のスコープに装着できる実用的なものが完成。つまり、これから解説する技術は比較的最近のモノになる)があれば、逆探知されにくいと言うステルスにはもってこいの捜索方式である

最大のデメリットは、目視同様に測距する事が出来ない事だ

つまり目標が「どこの方角に居る」のかは分かっても、「距離・移動速度・大きさ」は他の捜索手段に頼らなくては分からない(目標の大きささえ分かれば、計算する事は可能ではある)

さて、再度この図を見て貰いたい

http://blog-imgs-44.fc2.com/4/2/5/4253blog/Atmosfaerisk_spredning.gif

これは各波長の透過率を示すグラフで、青い部分の上下幅が広いところが透過率の高い波長域になる

つまり、青い部分は大気の影響を受けにくい波長域=より遠くまで届く波長域になる

波長はH2O(化学式で言う「水」、水は赤外線を吸収しやすい)による吸収領域を避けて、3-5μmのMiddle Wave帯(MW帯)と8-13μmのLong wave帯(LW帯)、日本語に直して「中波長赤外線」と「長波長赤外線」の二種類が良く探知に使われる

「中波長赤外線」は、「可視光」に近い特徴を持っている。つまり、高温の燃焼などで発する赤外線の捜索に向いている

ジェットエンジンやディーゼルエンジンの発する赤外線の捜索に向いていると言う事だ

かつての主流だった近距離の対空ミサイルではこの波長が主流ではあったのだが、冷却技術と小型化技術の進歩で「長波長赤外線」が主流となっている

「長波長赤外線」は比較的温度が低い物体でも発するので、より「電波」に近い波長である

つまり人間の体温や航空機の発する空気との摩擦熱程度も探知できる程透過性(物体をすり抜ける能力)に優れる。体の芯から暖まる電気ヒーターは、長波長赤外線だと言う事を覚えておこう

しかも長波長赤外線であっても中波長赤外線程度でも探知できるので汎用性が高い

なので現代の赤外線捜索装置の殆どは長波長赤外線なのだ

AIM-9Xのシーカー画像。QF-4ファントムⅡに直撃する直前
AIM-9X-FPA-seeker-300.png


さて、赤外線探知装置について簡単にふれたが、本題はここからである

※これでも初心者向け
・・・のつもり

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軍事講習第二回:狭義のステルスと、それを体現する兵器

狭義のステルス

即ち「電波のステルス」とは、レーダーから逃れる術である

レーダーの原理は、電波を照射し、物体に当たった時に跳ね返ってくる電波を受信する事で目標を探せる

レーダーの目から逃れるには、要は受信装置に電波を返さなければいい

と言っても、全部は事実上無理なのである程度は受信部分に帰ってしまう。その数値を「レーダー反射断面積RCS:Radar cross section」で表す。因みに、この数値は物体の大きさに依らない

ステルス性
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%B9%E6%80%A7

レーダー反射断面積の項より

RCS
A5ECA1BCA5C0A1BCCAFDC4F8BCB0.png
レーダーの方程式
48b785c7188676a9de103420a85ef55f.png
最低受信電力Prが判れば、RCSがσ である目標からの最大探知距離Rmaxが求められる
38ed41453425bdac6a5e9dffd6d2185d.png


そこで考案されたのが光の性質と同じレーダーの特性を利用した「電波を特定方向に反射させる」事で見つからないようにする事だ

この手案は、WW2末期での日本海軍が量産した潜水艦に取り入れられている(艦橋を斜めに設計する事で、哨戒機や艦艇のレーダー探知される距離を縮めようとした)

今となっては、戦闘機・爆撃機・艦船の設計では性能を落とさないようにしながらも、基本採用されている

F-16等のブレンデッドウィングボディBlended Wing Bodyがその典型になる。本格的なものになるとF-22やF-35と言ったモノになるだろう

そう遠くないうちに、戦闘車両にも採用されるだろう。何故なら、対地レーダーもミリ波レーダーの採用や、レーダーマッピング性能と処理能力の向上が著しいからだ

また、戦闘機のキャノピーに蒸着金薄膜かインジウムとスズの酸化物の薄幕を張るのは、コックピット内の機器やスイッチ類等に乱反射して電波が受信機器に跳ね返るのを防ぐ為だ

次は、素材の選定になる

電波を良く反射するのは、金属になる

レーダーが生まれたのは第二次世界大戦なのだが、意外にも当時からかなりのステルス性を備えた航空機があった

デ・ハビランド モスキート

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%93%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89_%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%88

殆どが木製のこの機体は、木製ゆえレーダーに察知されにくいと言う特性を持っていた

今や、航空機では木製は使えない。空気との摩擦熱が高い高速で飛行し、地球上の多種な環境ゆえに木製では耐えきれないからだ

艦船(主に掃海艇)でも同様である(木製では腐食が発生する上に、今や高価なものとなりつつある)

そこで注目されているのが、非金属でありながら腐食や多種多様な環境に適応できる炭素繊維・ボロン繊維などの強化プラスチック系列だ

繊維強化プラスチック
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%8A%E7%B6%AD%E5%BC%B7%E5%8C%96%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF

木製の様に電波を反射しにくい性格を持ち金属の様な耐久性を兼ね備えるコレは、技術の進歩により広く使用され安価・高品質になり兵器にも大量に採用される様になっている

チタンやアルミより軽量化が可能で、強度があるので航空機に採用しやすい

今や、FRP無しではステルスを語る事は出来ない

また、ガラス繊維や合繊繊維中に吸収する波長の2倍の長さのステンレス繊維を分散させた電波吸収材も忘れてはならない

これが「電波吸収素材:RAM(Radar absorbent material)」である。電波によって発生する電流を吸収するもの(導電性電波吸収材料)や分子の分極反応に起因する誘電損失(誘電性電波吸収材料)、磁性材料の磁気損失によって電波を吸収するもの(磁性電波吸収材料)等でRCSを減らしてステルス性能を極端に高める事が出来る

軍事講義第一回:ステルスの定義

Stealth-ステルス

一般人どころか、一部の軍事新参者にとっては魅力的な言葉であるステルス

しかし、物事を語ろうと考える上で重要なのは経験ではなく、正しい情報を集めて物事を正しく捉える事

そこで、今回は多くの情報をもとに物事を語っていく

今回は「ステルス」について、複数回に分けてお聞きいただきたい

 

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